トゥルーフォームの目撃者   作:瀬戸 暁斗

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ドキドキワクワク入学試験

 オールマイトの真の姿を見てから、俺は街歩きをやめた。空いた時間は体を鍛えたり、猛勉強をして自分を追い込んだ。

 全ては雄英高校のヒーロー科に入るため、そしてヒーローとしてオールマイトに会うためだ。

 今までヒーローになると友人達には冗談ぽく言ってきた。俺もそれほど真剣に目指してた訳じゃなかったし、それを真面目に信じていたやつもいなかった。

 だが、今は違う。生まれて初めてと言っても過言ではないほどの努力を重ねて10ヶ月。ついに雄英の入試日がやってきた。

 

「じゃあ、行ってくるよ。父さん」

 

「いってらっしゃい。気をつけてな。受験頑張れよ、奥弥(おくや)

 

 家から自転車、地下鉄に乗ってたどり着いた雄英高校。流石最高峰の学校なだけあって受験生の数が半端じゃない。

 その中でも一際目立っていたのは、こけそうになって宙に浮く天然パーマだった。

 

「あいつはあの時の弱オーラ……。あんなやつがここ受験しても通らないだろ」

 

 まぁ、俺の予想は終わってみないとわからないし、今は自分のことだけに集中っと。

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 プレゼント・マイクのテンション爆上げ試験概要が終わり、やってきたのは演習会場。ジャージに着替えて周りを見ると、見知った顔は1人もいない。

 

「爆発ヘドロも弱オーラも別会場かよ。面白くねぇな」

 

 ただ、何人かいいオーラを持っているのがわかる。これはこれでアリかなとか考えてながら歩いていると、軽い衝撃を足に感じた。

 見ると、受験生とは思えないほど小さな少年が俺を見上げて立っていた。

 

「何すんだよ!」

 

「悪い。見えなかった」

 

 こういう時は正直に謝っておくのが吉とみた。

 もはや癖となったオーラの分析をすると、オーラ自体はそれほど大きくない事がわかる。頭に付いているボールみたいなのが個性に関係あるのだろう。

 

「マジでごめんな。お互い試験頑張——」

 

『ハイ、スタートー!!』

 

「あ?」

 

 突然のスタートコールで場が一瞬固まった。

 

『実戦じゃカウントなんざねえんだよ!! 賽は投げられてんぞ!?』

 

 これを聞いて一斉に走り出す受験生達。もちろん俺もその流れに乗ってスタートダッシュを決める。

 

「いきなりかよって、これがヒーローになる前提での試験なら当たり前か」

 

 そう、これは決して理不尽なんかじゃない。将来を見据えての合理的な判断だ。

 走りながら目を凝らす。人とは異なる仮想敵のオーラを確認し、全力で突っ込む。

 

「ここだぁぁ!!」

 

 人でも物でも、オーラを見ればどこが弱点か見定める事ができる。後は、そこにオーラで強化した拳なり武器なりを叩き込めばいいだけだ。

 俺の蹴りはうまく仮想敵に入り、その機能を停止させた。

 

「よし、これで1ポイントだ」

 

 この調子で俺はポイントを1ポイントずつ、たまに2ポイント獲得してどんどんスコアを伸ばしていった。

 試験開始からどれだけの時間が経っただろうか。突如会場全体から地響きが聞こえてきた。

 

「やっと出てきたかよ、0ポイント」

 

 ひと目その姿を見てみようと音源の方へ向かって行くと、そこには立ち向かうのもバカバカしくなるほどに巨大なロボットがそびえ立っていた。

 

「おいおい、ちょっと待てって! デカすぎじゃねぇか!」

 

 呆気にとられた俺の横を、次々と受験生達が逃げていく。俺も逃げるべきかどうかと迷ってていると、逃げる受験生を誘導しているサイドテールの少女が視界に入ってきた。

 

「おーい。あんたは逃げないのか?」

 

「私はもうポイント稼いだからね。他の子を逃してあげないと」

 

「すごいヒーローらしい心がけじゃん。って、あいつは……」

 

 すぐ近くで倒れていたのは、スタート前にぶつかったボール頭。腰が抜けたようで、動けないでいるようだ。

 

「大丈夫かよ、お前。さっさと逃げるぞ」

 

 彼を担ぎ上げ、他に逃げ遅れた受験生がいないか確認してからこの場を離れるべく少女と共に走った。

 しかし、走り出してすぐに担がれている少年が何か叫び出した。

 

「待て待てこっちじゃない!」

 

「何がだよ!」

 

「オイラさっきまでこの辺にいたから知ってるんだ。この先、行き止まりだぁ!」

 

 彼の言う通り、壁に囲まれた袋小路に迷い込んだ。前には壁、後ろからは超巨大ロボット。絶体絶命とはこのことか。

 

「今俺達が取れる策は壁を打ち破るか、あの敵をぶっ壊すか。でも、ヒーローを目指す上で建造物の過剰な破壊はやめとくべきだよな」

 

「じゃあもうあれにやられるしかないじゃんかよぉ!!」

 

「策なら今から考える! だから、お前らの名前と個性を教えろ」

 

 速やかな状況判断と作戦の立案。頭を使って戦うのは俺の得意分野だ。

 ただ、この2人がそれを実行できるかにかかっている。

 名前を聞いたのは指示を出しやすくするため、個性を聞いたのは作戦の幅を広げるためだ。

 

「私は拳藤一佳。個性で手が大きくできる」

 

「よし、それで力とかは上がったりするのか?」

 

「大きくなった手を振り回さないといけないから、人よりはパワーはあると思うよ」

 

「OK、十分だ。次はお前な」

 

「オイラは峰田実。個性は……超くっつく」

 

 頭のボールをもぎり、壁にくっつけてそう言った。

 

「モギったそばから生えてくるけど、モギりすぎると血が出る。オイラ自身にはくっつかずにプニプニ跳ねる」

 

「「……」」

 

「オイラの個性はバリバリ戦闘に不向きなんだよぉおお!!」

 

「じゃあどうやって仮想敵倒してきたんだよ?」

 

「行動不能にだけすりゃあいいから、地面にひっつくトラップ作ったり、敵同士をくっつけた」

 

「それをしたらいいんじゃねぇか。あのデカブツにも」

 

 何とか活路が見えてきた。こいつらとなら、あの敵にも勝てるぞ。

 

「さて、策を伝える」

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

「うわぁあああ!! 無茶すぎるだろ!! オイラが何でこんな目に合わなきゃいけないんだよぉお!!」

 

 峰田は巨大なロボットの足元を走り回っていた。頭をモギりながら。

 彼の役目はロボットの足を止めること。ロボットの動きさえ止まれば、俺にとってはこの敵もサイズが違うだけで弱点もろ見えで倒せる余地はある。

 

「さあ拳藤。俺を投げ飛ばしてくれ」

 

「本当にそんなことできるの?」

 

「できるさ。いつもよりパワーは上がってるはずだぜ」

 

 俺が拳藤に施した処置は、オーラの活性化。峰田が動いている間に充分俺を投げられるだけの力が出るように、一時的だが能力を解放させた。

 

「いくよ。ハァァァァ!!」

 

 人を包めるほど大きくなった拳藤の手で投げられた俺は、風圧に耐えながら敵の頭までたどり着いた。

 

「よっと。スクラップにしにきたぞ、デカブツ。大人しくぶっ壊されとけや!」

 

 俺は地上から持ってきた鉄パイプにオーラを纏わせ、敵の首辺りにあった弱点に突き刺した。

 電気系統が壊れたロボットは、首を垂れて体勢を崩していった。

 

「わっ! やばいって! 落ちる!」

 

 流石にこの高さから落ちれば、いくらオーラで強化しても無傷では済まないだろう。やったことないからわからないけど。

 

「頼む! 峰田!」

 

 峰田に頼んでいた役目はもう一つ。俺が生還するための策だ。

 彼の個性「もぎもぎ」で作れる粘着力のあるボールには、結構な弾力性もあった。それをクッションがわりにすれば良いっていう寸法なのだが……。

 

「あれ? 落ちる位置ちょっと危なくない?」

 

 俺の体が落ちていく先にはもぎもぎボールがあるにはあるが、全身入るかは微妙な感じだ。運が悪ければ足だけひっついて、頭を打って大怪我だ。さて、その運命やいかに——

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

「——っぶねぇ──!!」

 

 ギリギリだった。あと体ひとつ分ずれていれば全身大怪我の病院送りになっていただろう。

 

「ヒヤヒヤしたー。いつぶりだよこんなの」

 

「それよりよかったの? あれ0ポイントだったけど」

 

「いいだろ。合格圏内入ってるよ。どうする? まだポイント稼ぎに行くか?」

 

 敵を倒してホッとしたのも束の間、

 

『終了ー!!』

 

 終了の合図が鳴り響いた。

 俺はボールにくっついたジャージを脱ぎ、Tシャツ姿で立ち上がる。

 

「お互い合格してたらいいな」

 

「そういえば、あんたの名前は?」

 

「まだ言ってなかったっけ」

 

 そうか、策を考えるのに頭を回しすぎて自分の名前すら言ってなかったんだな。

 

「俺は気拉(きら)奥弥。最高のヒーローになる男だ!」




オーラは、漢字で「奥拉」って書くみたいですよ。

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