新品の制服に袖を通す。それはどんな社会でも心躍るイベントのようで、俺は今度は雄英生としてこの門をくぐる。
広い雄英の敷地内を資料片手に歩き回り、やっとの思いで1-Aの教室まで辿り着いた。
「ドアでかっ」
いろんな個性の生徒に配慮した巨大なドアを開けると、難関試験を通ってきた生徒の面々がそこにはいた。
「俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
教室に入ってすぐに近づいてきたのは、眼鏡の少年。確か入試の時に質問してた人だったような。
「よろしく。俺は気拉奥弥。聡明っていえば、けっこうなエリート学校じゃん」
見た目通りの真っ直ぐなオーラな飯田と握手を交わし、俺は自分の席を探して荷物を置いた。
「そういえば、拳藤と峰田は合格してんのかなーっと」
「気拉ぁ! よかった一緒だぁ!!」
見慣れた紫ボールが近づいてくる。
「拳藤はいないのか?」
「オイラはまだ見てない。B組なんじゃねぇの」
「それならまた後で見に行って——」
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」
急に寝袋で現れたのは小汚い男。男はおもむろにゼリー飲料を取り出すと一気にヂュッ! と飲み干した。ウ◯ダーなのか? ウイ◯ーなんですか?
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね。担任の相澤消太だ。よろしくね」
『担任!?』
なんとなくだけどクラス全員の心の声が揃った気がした。
そんな俺たちの前で、相澤先生はゴソゴソと寝袋の中から体操服を取り出す。
「早速だが
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「「個性把握……テストォ!?」」
「入学式とか無いのかよ……」
ヒーロー科ってどこもこんな感じなのか? それとも雄英が特殊すぎるの?
「雄英は『自由』な校風が売り文句。そしてそれは『先生側』もまた然り」
へぇー。自由な学校は入学式ないんだ。
「中学の頃からやってるだろ? 個性禁止の体力テスト。首席の気拉にやって貰おうかと思ったが、お前の個性はわかりづらい」
「……」
そりゃあんたらはオーラ見えないからね! 俺は見えてるよ、はっきりと色鮮やかに!
「爆豪。中学の時、ソフトボール投げ何mだった?」
「67m」
「じゃあ個性を使ってやってみろ。思いっきりな」
俺たちが見守る中、軽い柔軟を行った後ソフトボールを片手に振りかぶって——
「んじゃまぁ……死ねえ!!」
爆発とソフトボール投げで放たれるはずのない音声と共に、ボールは飛んでいく。
これだけ派手なデモンストレーションにするのが目的なら、間違いなく俺には向いてない。良い判断でした、相澤先生。
「なんだこれ!! すげー
「……面白そう、か……。ヒーローになる為の三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」
この気配はやばいぞ。誰だよ相澤先生の地雷踏み抜いたバカは。
「よし。トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
「「はあああ!?」」
ほらな! 思った通りめんどくせぇことになっだろ!
「なあ気拉! どうしよう!! オイラ個性使ってもダントツ最下位候補になっちまうよ!!」
「お前なぁ……。自分の個性だろ。ちゃんと把握すれば対策くらい取れるだろ」
「そんなん言っても、おめえほど頭も良くないし、運動できねえし……」
「はあ、仕方ねぇな。ヒントだけ教えてやるよ。『よく弾む』。後は自分で考えろよ。人に頼ってるだけじゃ、ここは乗り切れても除籍になるかもしれねぇからな」
そう、これはあえて突き放すのだ。人には自分自身の力で乗り越えないといけない時だってある。
「かという俺も、周りの実力わかんねぇから順位の予想つかねぇしな……。オーラ全開でいかなきゃな」
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「やべぇ。バケモン揃いじゃねぇか。全然一位取れそうな種目ねぇ」
オーラでいくら身体能力を強化しても、上位に入れるくらいでトップを狙えない。そういう個性だって理解しているが、やっぱり悔しいものは悔しいさ。
「えっと、次は何だ?」
「ソフトボール投げがまだじゃないの、気拉ちゃん」
「うおっ! あ、ありがとう……えっとーあ、あー」
「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」
クラスメイトの名前くらい早めに覚えないとな。あと個性も。脳内シミュレーションするのに必要だからな。
「ありがとう、梅雨ちゃん!」
ソフトボールを持ち、ストレッチをしているとあることに気づいた。めっちゃ見られてる。特に爆豪。
「これは首席の意地でも見せないとな」
ボールに俺のオーラを少し流し込む。これで準備は完了だ。投げる前に体中のオーラを右腕に集約させる。そうすることで、一瞬だけならなかなかのパワーが出るはずだ。
長い息を吐き、集中する。俺にしか見えないんだろうが、今俺の腕オーラでとんでもなく光ってるんだぜ。
「っらぁぁ!!」
思い切り振り抜いて放たれたボールは、勢いよく飛んでいく。弾道、速度共に爆豪の記録と並ぶ勢いだ。
「こっからが面白いんだって」
今度は指先にオーラを集める。そして、銃で撃つようなイメージでオーラを放った。
周りからすれば急に変なポーズをとりだした変態に見えるだろうが、空中のボールには着実に不可視の弾丸が近づいているのだ。バカにするんじゃない。
俺の放ったオーラはボールよりも速い。一気に追いつきぶつかることで再びボールに勢いを与える。
ボールに込めた俺のオーラを追うように放ったのだから、確実に当たる。そのための準備だ。準備周到な気拉さんだぞ。
結果、俺はソフトボール投げで現時点ではクラストップの709mの記録を叩き出した。
「セイ!!」
【麗日お茶子 記録 ♾】
三日天下。あっさりと抜かれましたよ。何? 無限って。インフィニティお茶子。
「次は誰がやるんだ? また無限とかはやめてくれよ」
「緑谷くんだ」
「誰? ってあいつは!」
飯田に教えてもらい次の挑戦者を見ると、そこにいたのはあの天パ弱オーラだった。
「何であいつがこの学校に受かってるんだよ……。雄英だぞ、ここ」
「彼が入試時に何を成したのか知らないのかい!?」
あいつ、そんなすごい個性を持っているのか? でもそれならなぜ使っていないんだ? 最下位になりそうなのに。
俺たちが注目する中、緑谷の投げた一球目の記録は46m。個性を使わずとも出せるような記録だ。
既に総合記録で上位にいるならまだ知らず、緑谷は最下位争い中だ。これでは自ら除籍にならにいっているようなものだ。
しかし、緑谷は困惑の表情を浮かべている。起こったことがわからないといった様子だ。
「抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!!」
相澤先生に何かを言われた後、緑谷の叫んだ名前には俺にも聞き覚えがあった。
メディアへの露出が極端に少ないアングラ系ヒーロー、イレイザーヘッド。まさか相澤先生がイレイザーだったとは。
相澤先生が緑谷を首の布で引き寄せて話しているが、距離と声の大きさから俺のいる場所までは聞こえない。
「あいつ、個性の制御ができないんじゃないか?」
俺がそう呟いた隣で飯田、麗日が心配そうに見ている。
「個性に頼れないんなら、あいつはもう——」
「SMASH!!」
緑谷から放たれた二球目はさっきとは比べものにならない威力で飛んでいく。驚きに目を丸くし、声を漏らす周りの生徒たち。しかし、俺は彼らとは別の驚きを感じていた。
「おいおい……。何でだよ。何であいつ今、オールマイトと同じオーラになってんだよ!」
家族なら、似たオーラになることがある。しかし、オールマイトと今の緑谷のオーラは多少雰囲気の差があるにしても、ほぼ同じだ。似ているなんてレベルじゃない。
今すぐにでも飛び出して行って、緑谷を問い詰めたい。しかし、まさに今飛び出した爆豪が相澤先生に捕縛された。
「チッ。今は無理か」
おそらく、この中で気づいているのはオーラの見える俺一人。騒ぎを起こすつもりはないし、オールマイトと緑谷にそれぞれ個別で会いに行く必要があるな。
考え事をしながらも、種目ごとに好記録を出し続けてようやく全てが終了した。
相澤先生に生徒全員が集められ、除籍のかかった結果発表が始まる。
「トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので、一括開示する。ちなみに除籍はウソな」
さらりと言ってのける相澤先生。
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「「はぁ──!?」」
ほぼ全員が絶叫し、緑谷なんかは輪郭すら怪しくなるほどのリアクションをとっている。
「あんなのウソに決まってるじゃない……。ちょっと考えればわかりますわ……」
周りの反応をよそに、呆れた表情でそういう八百万。
だが八百万。本当にそうか? 俺にはあの時、相澤先生がウソをついているようなオーラの揺らぎは見えなかったがな。
いきなり波乱の個性把握テストに見舞われたが、無事に乗り切ることができた。
そんなことよりまずは緑谷だ。話を聞こうと見回したが、彼はもう保健室へ行った後で、ここにはいなかった。
そのまま聞く機会も作れず、入学初日が終わった。
個性把握テストの順位ですが、主人公が6位です。ワースト5が耳郎、峰田、心操、葉隠、緑谷の順になります。
心操君をA組に入れるかどうか
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入れる
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入れない