アンケートへのご協力ありがとうございました。
翌日からようやく普通の学校生活が始まり、授業も開始した。
教えてくれる教師はプロヒーロー。教えてくれる内容は至って普通。
そんな慣れるまでは変な感じになり続けるであろう午前の授業を終えて、午後からはいよいよオールマイトのヒーロー基礎学だ。
「わーたーしーがー!! 普通にドアから来た!!」
笑いながら普通に現れたオールマイト。そんなNo1の姿に沸き立つ生徒たち。
「オールマイトだ……!」
「画風違いすぎて鳥肌が……」
興奮冷めやらぬ俺たちへ、いきなりオールマイトは話し出す。
相澤先生だったら、静かになるまで待って「静かになるまで◯秒かかりました」とか言うんだろうな。
「ヒーロー基礎学! 早速だが今日はコレ! 戦闘訓練!!」
「戦闘……訓練……!」
この単語を聞いて好戦的な笑みを浮かべる者や、不安そうな顔をする者がいるが、俺はどちらかと言えば後者だ。
いきなり戦闘は怪我人がでるだろ。
「そしてこちら! 入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた、
壁が動き、コスチュームの入ったケースが現れる。
今度は不安そうな顔をしていた者も、思わず笑みをこぼした。自分専用の戦闘服。これにワクワクしないヒーロー志望者はいない。
「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!」
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「さすがにテンション上がるなぁ」
着替えて指示されたグラウンド・βで全員が揃うのを待つ。
各々の個性に合ったコスチュームで、みんなヒーローっぽいじゃん。
「気拉って、コスチューム案外普通なんだな」
「そうか? まあコスチュームでどうこうできるような個性でもないしな。そう言うお前は……切島って感じだな」
「どういうことだよ」
硬化の個性を最大限魅せる、露出度多めのコスチュームは切島って感じっていう表現であってるんじゃないの?
「普通といえば普通だけどよ、そのゴーグルは何だ? 相澤先生のオマージュか?」
「違えよ。オーラ見える個性なのに光やら砂やらで目がやられたらダメだろ」
「なるほどなー」
一見普通のゴーグルのように見えるが、衝撃に強く、強烈な光をカットしてくれる。目に優しい設計だ。
コスチュームの見せ合いなんかをやっているうちに、全員が揃った。
「始めようか有精卵共!! 戦闘訓練のお時間だ!!」
授業内容は屋内での対人戦闘。何やら、凶悪敵の出現率は屋内の方が高いらしい。
設定は「敵組」と「ヒーロー組」の二対二。時間内に敵の持つ核兵器(ハリボテ)を回収するか、敵を捕まえればヒーローの勝利。核兵器を守るかヒーローを捕まえれば敵な勝利だ。なんともアメリカンな設定だな!
くじによって決まった俺の相方は心操人使。個性把握テストではワースト3位だったかな。
「よろしくな、心操。頑張ろうぜ」
「ああ」
顔合わせの済んだ班から随時作戦会議をしているようだ。
その間もオールマイトはくじを引き、訓練の組み合わせを決めている。
「最初の対戦相手は、Aコンビが『ヒーロー』! Dコンビが『敵』だ! 他の皆はモニターで観察するぞ!」
(いきなり緑谷か。もう一度見せてもらうぞ、お前のオーラ)
爆豪と緑谷。彼らの間には何かあるようだが、部外者である俺たちが突っ込むことではない。ここは静かに見守るべきか。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
建物を壊しながら行われたこの対戦カードの軍配は、緑谷・麗日ペアに上がった。
爆豪の攻撃をうまく使った緑谷の機転には驚かされたが、自分が大怪我を負う諸刃の剣の策では考えものだ。
まあヒーローチームの勝ちとはいえ、ハリボテを核兵器として扱っていなかった反則のような勝利だと八百万は指摘していたが。
(緑谷のあの個性……。コントロールして怪我さえしないようになれば、オールマイトと……)
俺は考えを払いのけるように頭を振った。
(これ以上は考えても仕方ねぇか。気のせいかもしれねぇし……)
「おい、気拉。もう俺たちの番だ」
肩を叩かれ、振り向くと心操が立っていた。
「悪い、考え事してた。で、相手は?」
「B班。轟・障子ペア。一戦目が一方的すぎたから二回目で俺らに当てられた」
「そっか。じゃあ作戦会議しようぜ」
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
轟、障子がビルの中に入って5分後、俺たちもビルの中に入り訓練がスタートした。
轟はヒーローチームの時にはビルを凍らせて勝ったらしいが、ビルの中に味方もいる以上、部屋を一室凍らせるくらいの威力でしか個性を発動できないだろう。
「だから、堂々と入ってやるよ」
心操と共にビルを登る。障子の個性で俺たちがどこにいるかわかっているのだろうが、こちらだってオーラの動きがよく見える。核兵器の持ち逃げなんてさせないぞ。
見ていると、1人分のオーラが俺たちの方に向かってくる。オーラの感じからして、障子だ。
彼の大きな体と複製腕の個性はとても強力だ。俺たちが2人がかりで飛びついても押さえつけられるほとパワーの差がある。
なら、頭使って戦うしかないよな。
「障子ぃぃ──!! タイマンで戦おうぜぇぇ──!!」
大声を張り上げ、俺は向かってきた障子と一対一の場を作り上げた。
「心操はどうした」
「あいつなら、もう先に行かせたぞ」
確認しようと触手から耳を複製する障子だが、作り出した瞬間その耳を押さえてのけぞった。
「気拉……一体何をした……」
「いやぁ、こっちとしても心操を探されると不都合があるんでね。耳にちょっとしたマジックを」
そのタネは簡単だ。放っておいたオーラを耳にぶつけただけ。オーラはエネルギーのようなもの。耳に直接衝撃を与えてやれば、キーンとなって索敵能力は損なうというものだ。
「それより、俺にばっかり気を取られてていいのか? 足見てみろよ」
「何!? 確保テープ!?」
障子の左足には巻きつけられた確保テープと巻きつけた心操の姿があった。
なぜ障子が心操に気づかなかったのか。それはただ耳にダメージを受けたからだけではない。心操のオーラを極限まで薄めていたからだ。オーラを薄めることで、その存在感は極端に低くなる。声を上げなければ気づかれないほどに。
「あとは轟だけだな。勝つぞ、心操」
残る轟と核兵器の待つ部屋に入ると、そこは一面氷漬け。核兵器に至っては、氷の中に入れられて一種のオブジェのようになっている。
「良い個性だな。派手で強い。俺とは大違いだ」
「……」
心操の発する言葉に轟は答えない。心操の個性、洗脳の発動条件を知っているのだろうか。
「まっ、簡単にかかってくれないよな。心操、第二プランでいくぞ!」
心操に指示を出し、俺は轟に突っ込んで行く。もちろんオーラで強化し、飛んでくる氷片を避けながらその距離を詰める。
「ふんっ!」
轟へと殴りかかったが、その拳は厚い氷の壁に阻まれる。そして、阻まれた拳からオーラを放ったが、氷に深めのヒビが入っただけで轟にダメージを与えることは出来なかった。
「いろんなオーラ見てきたけどよ、お前のオーラって結構面白いんだぜ」
攻撃手段がなくなった俺は、轟に話しかける。俺に気を向かせることで、さっき障子に対して使った手ができるかもしれない。
「なかなかいないんだよ、二色のオーラ。氷と炎の個性ゆえってことなのかもな」
まだ動かない。だが第二プランは順調に進んでいる。だがこれが失敗すれば、もう俺たちの勝利はないだろう。
「今まで氷の個性しか使ってないよな。なぜ全力を出さない?」
「……」
轟は未だ反応を見せない。個性を最大限使わない理由もわからないが、それはこの際どうだっていい。
「……エンデヴァーか——」
「その名を……!」
目を見開き、立ったまま固まる轟。この場で何が起こったのか。
「さあ、轟。氷を溶かせ」
「ナイス。よくやったよ、心操」
ああ。きっと今、俺は最高に悪い顔をしているんだろうな。轟という強敵を出し抜いて勝つ。これほど嬉しく、楽しいものはない。
「俺たちの勝ちだ」
俺たちは、ハリボテの核兵器と勝利を手にした。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「今戦のベストは気拉少年だ! 何故だかわかる人!?」
このオールマイトの質問に手を挙げたのは、またしても八百万。
「ペアと自分の個性をうまく使った作戦の提案と実行。そして、それが上手くいくような自身の行動ですね。轟さんに心操さんの個性を見破られながらも、作戦通りの結果が得られた戦略的勝利ですわ」
「その通りさ! では、気拉少年! 最後の轟少年へどういったことを行ったか教えてくれないか」
「わかりました。心操のオーラを薄めて存在感を無くしたのは、障子に対してした事と同じですが、そこから直接確保テープを轟に巻きつけるのは困難だと判断しました」
クラス全員が俺の方を見てる。緊張するなぁ。
「なので、心操の個性と『
本当に運が良かった。ペアが心操でなければ、轟が洗脳にかからなければ勝つことは出来なかった。
だから正直に心操を褒めたのに、周りが俺を見る目が変だ。俺だって人を褒めるし。爆豪じゃないし。
「今回の授業はこれにて終了だ、お疲れさん! 緑谷少年以外は大きな怪我もなし! 初めての訓練にしちゃ、皆上出来だったぜ!」
全ての組が終わり、ヒーロー基礎学の授業も終了となった。
このあとは着替えて、今日は終わりだ。
だが、俺はあの場所に行かなければならない。緑谷とオールマイトのいる保健室に。
心操の装備はペルソナコードのみで、捕縛布はまだ使えません。