Fate/Unlimited Engel's cofficient 作:空想病
アルトリアたちの召喚セリフに関しては、FGOマテリアルを参考にしました。
第一話 七騎のアルトリア・ペンドラゴン
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その夜、少年は運命と出会う。
あまりにも数多い“運命”と──
月光に照らされた魔法陣の上で、その人物たちはまっすぐに少年を見下ろしていた。
清廉な騎士が問う。
「問おう。貴方が私のマスターか?」
漆黒の騎士が訊ねた。
「……召喚に応じ参上した。貴様が私のマスターというヤツか?」
白馬に騎乗した騎士が現れた。
「応えよう。私は貴方のサーヴァント、ランサー。最果ての槍を以て、貴方の力となる者です」
黒馬に騎乗した騎士が参じた。
「ランサー、アルトリア。召喚に応じ参上した。我が愛馬が雷雲を飲むように、我が槍はあらゆる城壁を打ち破る。あなたの道行きを阻むもの、すべてを打ち砕こう」
幼く純真無垢な剣士が微笑んだ。
「はじめましてマスター。まだ半人前の剣士なので、セイバー・リリィとお呼びください。これから、末永くよろしくお願いします」
冬なのに水着の騎士(?)が告げた。
「お、おはようございます! アーチャー、アルトリア、召喚に応じ参上いたしましたっ。慣れないクラスなのでお役に立てるかわかりませんが、よろしくお願いしますね!」
メイド姿の黒い騎士(?)が宣告した。
「サーヴァント、ライダー、アルトリア・ペンドラゴンだ。この私が来た以上、理想の生活を覚悟してもらおう。二度寝も運動不足も許さん。掃除・洗濯は徹底的にやる。りょ、料理も……できる範囲で、やってみせよう」
「「「「「「「 ────────んん? 」」」」」」」
衛宮邸、土蔵の内部に集ったのは、いずれも見目麗しい、金髪の乙女たち。
その数、実に七人。
まったく状況が呑み込めていない穂群原学園高校二年の少年──衛宮士郎。
「…………えと、これはどういう?」
それ以上に状況が理解できていない、七騎の女騎士たち。
「い、いったい、これは?」
「どういう状況だ?」
「ふむ、つまりこれは」
「まったくもって、わからん」
「私と同じ方が、ろ、……六人?」
「わ、我等サーヴァントが、七騎同時に召喚されたと?」
「ありえん、と言いたいところだが、何にせよ
各々で感じ取れる疑問と情報を手探りしていく騎士たち。
七人の乙女を代表するべく、華奢な体躯を包む古風な青いドレスに金髪が月光の下で燦然と映える少女──セイバーが、少年を助け起こす。
「異常な事態ではありますが、我等との契約は確かに成立しました。マスター、指示を」
「け、契約? 指示をって? ますたー?」
手を取って立たされた士郎は、状況も分からず言葉を繰り返すしかない。
「……
「いや、しかし、
「想定外も想定外。我等サーヴァントが一人のマスターに召喚されるなど」
「ありえない。だが、実際に起こっていることは、まぎれもない現実だ」
黒いセイバーと、黒いセイバーが成長したように見える黒馬の騎士が結論する。
「──あの、ところで」
「マスターを襲っていた、敵は?」
幼いセイバーと、水着姿のセイバー……否、アーチャーのアルトリアが土蔵の外を振り返る。
そこには、何者の気配もない。
セイバーたちと士郎は庭に出て、辺りを見渡す。
「に、逃げた?」
「さすがに、七騎のサーヴァントを同時に相手取れるとは考えられなかったようです。撤退は正しい判断かと」
ほっと胸を撫で下ろすセイバー。
そんな少女の様子を、黒いセイバーが酷評する。
「ふ。なんだ私よ。戦わずに済んで安堵したか? 存外に臆病風に吹かれていたようだな?」
「なんだと私? 臆病だと? いくら同じ私とは言え、そのように侮辱される謂れはない!」
「ほう? 吠えるではないか、騎士王? ならばその証を示せるのか? ──いま、ここで」
一触即発という空気の鋭利さ。
セイバーが不可視の剣を下段に構え、黒いセイバーが漆黒にまみれた剣を正眼に構える。
「ちょ、ちょっと待て二人とも!」
周りの同じ顔をした者たちよりも先んじて、士郎が制止の手をのばそうとした、まさにその時だった。
ぐぅぅぅ
剣撃と剣撃が交わるかと思われた夜の底で、あまりにもそぐわない音色が響く。
「──ええと?」
士郎が見つめる先で、セイバーが顔を真っ赤にしてそっぽを向いていた。
「セイバー、今の音って」
さらに、
ぐぅぅぅ
その対面にいた黒いセイバーも、同様におなかを鳴らしていた。
黒いドレスの騎士は、興が削がれたという風に黒剣を下ろす。
そして言った。
「──マスター。腹が減った。美味なる食事をもて」
「も、申し訳ありません、マスター……私も、その」
「えええ……」
「なんでさ」と呆気にとられる士郎。
少年は他の五人を振り返ってみる。
「腹が減っては何とやら、というところか」
「七騎同時召喚のせいで、魔力が足りていないようだ」
馬から降りた槍の騎士王二人が、同時に告げた。
「す、すいません、マスター。出来ればで良いのですが──」
「あの、私たちにもその──」
「馳走になるぞ!」
リリィもアーチャーもライダーも、おなかがすいたと言わんばかりに士郎を取り囲んだ。
実際、彼女らのおさえる腹からも、小さな音色が奏でられ始める。
ふと、セイバーたちが夜の一角を見据える。
しかし、戦意も剣気も感じ取れない。
「ええと……こ、こんばんわ、衛宮くん?」
衛宮邸の玄関ではなく、塀の屋根瓦に着地した赤い少女と男……弓兵の姿。
士郎は、弓兵に伴われた少女の名を知っていた。
「と、遠坂?
え……な、なんで?」
「ええと……ちょっっっと、お話があるのだけど……いい、かしら?」
「は、話? ええと、?」
きゅぅうう
きううぅう
くぅぅぅぅ
くぎゅうううううううううううううううう
ぐぎぅうううううううううううううううう
「……」
「……」
少年と少女は無言だった。
鳴りやむことなく夜闇に響く、七騎の乙女の腹の声。
笑顔をひきつらせる遠坂凛、頭を振る弓兵。
混迷を深めていく事態、ブチ壊しの緊張感。
申し訳なさそうにお腹をかかえるセイバー。
すがすがしいくらい堂々とした黒セイバー。
士郎はとりあえずセイバーたちと遠坂凛を引き連れて、夜食を用意すべくリビングを目指した。
「まだ!」 (????X)
「私たちも──」 (????Xオルタ)
「スタンバってます!」 (????XX)
「楽しみに待っていてくださいね、士郎」 (バニーガールのルーラー)