Fate/Unlimited Engel's cofficient 作:空想病
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一方。
柳洞寺の山門にて。
もはや三桁を軽く超える刃の交錯を終えて、二人の英霊は同時に距離をとった。
「はん。結構やるじゃねぇか!」
赤い騎士は白銀の邪剣を肩に担いで呼吸を整える。
アサシン・佐々木小次郎と戦闘を繰り広げる騎士・モードレッドは、兜のうちにある表情を快活の色に染める。
「こんなド辺境、極東の田舎剣士なんざ、俺たちの
「フ。貴様こそ、だ」
小次郎は、断ち切られた着物の裾に視線を落とす。
傷こそ負いはしなかったが、モードレッドの剣技の質と量が、徐々に佐々木小次郎のそれを上回りつつある証左と言える。
それに加え──小次郎は柳洞寺一帯を包む結界を一瞬だけ見遣った。
(女狐の奴。かなり苦戦しているな?)
あれほど濃密かつ重厚な山の結界に、揺らぎが生じている。
さらに言えば、マスターから佐々木小次郎に流れる魔力についても
キャスターは山門を易々と突破したガウェインとの戦闘により、これまでに用意できた魔力を
(まぁ無理もない。あのガウェインとやら、かなりの手練れだ。魔術師程度には荷が勝ちすぎるというもの)
それでも、キャスターは神代の魔女であり、佐々木小次郎を召喚し使役するマスターに他ならない。
加勢に来いと命じられれば馳せ参じるのもやむなしだが、目の前の赤い騎士・モードレッドを自由にするだけである以上、戦略的にはどうしようもない。
今になって「なるほど」と得心を得る。
モードレッドとガウェインの会話を思い出した。
──「わぁってるよ! 足止めしてりゃいいんだろ! ったく、とっとと行きやがれ!」──
(いずれにせよ。この身は、与えられた務めをまっとうするより他になし)
万が一、彼女が敗北し消滅するに至ったとしても、別段悔いはない。
彼が望むのは、己が認める最高の剣士と交わす剣戟──モードレッドとの剣花の
(欲を言えば、先日夜偵に現れた槍兵の娘や、あのガウェインとやら──他の英霊たちとも、あいまみえたいところであったが……)
内心で結論と決断をくだした侍は、臆面もなく微笑んだ。
「確か、モオドレッドと呼ばれていたか……おぬしこそ、当初の猛牛がごとき突撃をやめてからは、随分と剣の冴えが増したようだ。ただ感情のまま暴れ狂うだけの獣でないことが知れて、私も嬉しいぞ」
「は! たりめぇだろ! 俺はまぎれもなくセイバーだぜ?
それは恐ろしいなと肩をすくめるアサシン。
「ふむ──しかし、そうなると妙ではないか?」
「は? 何がだよ?」
「さきほど、ここを通られた貴公の仲間、ガウエイン殿、かの騎士もセイバーではないのか?」
「おう。──それが?」
「私は寡聞にして……さらには特殊な召喚をされた影響とやらで、聖杯戦争のことはあまりよく理解はできておらんが、それでも、同じ
「は。なんだ、そんなことが気になったのか? くだらねぇな!」
モードレッドは剣を石段に突き立て、天気の話でもするような軽口で語った。
「俺たち円卓の陣営には、俺とガウェイン、あと
「ほう?
「そうさ。何せ俺たちは、別におまえらのように、『冬木の大聖杯』とやらから“召喚されたわけじゃあねぇんだ”。
俺たち、円卓の騎士を召喚し、この地に現界させたるは我が父上……“水着獅子王”にして“
騎士の告げた説明を聞いて、侍は一言。
「ふむ? ──よくわからんということだけは、わかった」
そのような返答がされるとは思っていなかったモードレッドは、軽く前のめりに転げそうになる。
「ったく……おまえ本気で状況が分かってねぇのかよ……まぁいい。どちらにせよ、これから起こる結果は、変わるわきゃねぇ」
言って、赤い騎士は初めて「兜」を外した。
宝具としての機能が解除され、兜が鎧に格納された後に顕れたのは、金髪碧眼に勝気な笑みを刻んだ、華奢で可憐にすぎる少女の面貌。
そのような外見を目にした佐々木小次郎は、少しばかり意表を突かれた様子で眉を寄せた。
「……
「チッ! ──テメェ、俺を女扱いしようもんなら、容赦なくブチ殺すぞ?」
「む──そうか。相済まぬ。これほどの剣の使い手に対して、男か女かなどと、
「おう! わかりゃいいんだよ、わかりゃあ!」
暴力的に微笑むモードレッド。
彼女の手中で、
「“向こう”も、いよいよ大詰めって感じだ──こっちも全開でいかせてもらうぜ?」
振り返るまでもなく、まるで地上に太陽でも発生したかのような光輝が、柳洞寺の境内から立ち上がっていた。
異様な事態であることは火を見るよりも明らかだが、小次郎の意中にあるのは、目の前の敵との
「たのしかったぜ、冬木のアサシン!」
必殺必滅の暁光を振り下ろすモードレッド。
英霊の宝具の開帳に対抗するには、やはり宝具をおいて他になし。
「こちらもだ、モードレッドとやら──」
宝具の発動は、ほぼ同時。
雷光で山林を焦がす王剣に対し、小次郎は長刀“物干し竿”を静かに構える。
彼の宝具は、神域にまで錬磨され研鑽された「秘剣」──必殺必中を誇る太刀筋は、空を飛ぶ燕を斬るとも称される。故にその名は──
「“
「“
激発寸前だった両者の間に、疾風迅雷のごとき朱槍の嵐が割って入った。
「──お楽しみなところ申し訳ねぇが、ちょっとばかし、邪魔させてもらうぜ?」
戦地にあっても勇猛果敢な戦士の布告。
突如、山門の戦いに参陣した存在に対し、騎士と侍は刃を向けた。
「ちっ────ナニモンだ、てめぇ!」
「……我等の勝負を邪魔立てするか?」
モードレッドと小次郎の苛烈な視線を受けて、“
「俺個人としても、文字通り横槍なんてあんまりしたくはなかったが、一応、俺んとこのマスターの指示でな。止めに入らせてもらった……」
青い装束に蒼い頭髪。
血のように赤い瞳に、誇り高き武人として、戦場における好敵手を探し求める色を宿した魔槍の持ち主。
冬木のランサー、クー・フーリン──参陣。
そして、
「はいはい。ちょっとそこ通らせてもらうわよ──」
漆黒のファー付きコートを着流し、ポケットに両手を突っ込んだ銀髪の美女が、石階段を一段一段のぼり進む。
モードレッドと小次郎が、怪訝そうに顔を
「邪魔する奴は、
現れたサーヴァント、彼女の名は────