Fate/Unlimited Engel's cofficient   作:空想病

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ほぼ十か月ぶりの更新ですが、お楽しみいただければ幸いです。


第二十三話 事後処理神父

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 冬木教会の執務室で、言峰綺礼は聖堂教会の工作員らからあがってくる報告──さらには、女帝セミラミスの鳩らによる目の監視網を駆使し、冬木市の異変に対処していた。

 その内容と対処方針は以下のようなものである。

 

「間桐邸付近で爆発のような閃光と轟音…………ふむ…………ガスだな」

 

 光と音の正体は、いうまでもなく宝具同士のぶつかり合いであろう。

 備考として、間桐陣営とアイリスフィール陣営の共闘が確認されたという。

 剣の英霊・ランスロットの退却とともに、両陣営は衛宮邸へと向かった、とのこと。

 次の書類を手に取る。

 

「柳洞寺で住職ら数十名が集団昏倒…………うむ…………ガスだな」

 

 住職らを昏倒させたるは、寺に巣くっていたキャスターの仕業に違いない。

 もっとも、そうしなければ寺の住人が、英霊同士の戦いに巻き込まれた公算大である。

 剣の英霊二体は、マクレミッツ陣営とジャンヌオルタの横槍により撤退を選択、キャスターらは辛くも生存。

 ちなみに、ジャンヌオルタは戦闘後すぐ寺を後にし、街へと降りて行った旨がつけくわえられている。

 次の書類を手に取る。

 

「解体予定の廃ビルで爆発事故…………これも、……ガスだな」

 

 凛と弓兵が、赤髪の弓兵との戦闘を繰り広げる中、その助勢に参じた衛宮陣営による突撃の結果だ。

 というか。あんな勢いで廃ビルに突っ込んで、爆発程度で済んだのは僥倖というべきか。

 もっとも、あの槍の英霊二騎・ランサーアルトリアたちが手加減を誤れば、ビルが完全崩壊する……どころか、一帯が焦土と化していたであろうから、如何ともしがたい。

 その後、凛と衛宮陣営は無事に戦場を離れ、どうやら買い出しのため共に行動しているとのこと。

 

「ふー……」

 

 次々と報告書類を決裁していく言峰は、硬直しきった表情筋、とくに眉根あたりに疼痛を覚え、軽くもみほぐす。

 冬木市のガス会社に対する世間の風当たりは冷たくなるだろうが、まぁ、致し方ない。

 書類の束を机上に投げ出し、背もたれに全身を預け、一人途方に暮れる。

 

「こんな珍事件の数、ガス以外にどう説明をつけろという?」

 

 珍しくぼやく言峰は、小さな子供がむくれるような調子で天を仰いだ。

 そうしてボソっと呟く。

 

「あ~あ~……事後処理めんどくさっ」

 

 もうあれだ。

 いっそのことクイズ大会形式で聖杯を懸けて戦ってくれないものか……《チキチキ☆聖杯戦争!》とか誰か企画してくれないかと思わずにはいられないが、そんなことを連中が認めるはずもなし。

 益体(やくたい)もないことに脳細胞を浪費するのにも疲れつつ、業務に戻る言峰。

 その耳にドアをノックする音と共に、義兄の声が入室の許可を求める。

 

「どうぞお入りを、兄上」

 

 拒否する権限も意思もない言峰は快く応じた。

 現れた人物は二人──共に円卓陣営との戦いに邁進する天草四郎とセミラミス。俗にいう彼シャツ姿の女帝が入り口付近で立ち止まったのに対し、天草の方は義弟の薄笑いを心から慰労するべく歩み寄ってくる。

 

「随分と難儀しているようですね、綺礼」

「いえいえ。この程度のことで聖杯戦争の監督役が()をあげるわけにもいきません」

「しかしながら、たまには休息も必要ですよ? あなたは表面に出さないというより、出すことを拒む傾向がありますからね」

「心遣い痛み入ります。ところで、ギルガメッシュ王はどちらに?」

「彼もまた此度の戦争に参じるべく、用意すべきことがあると言って市井に向かいました……もっとも、前回と同様に、ただ子供らと戯れに行った可能性もなくはありませんが」

 

 なるほどと言って綺礼は笑みを深めた。

 ウルクの賢王は、口調や態度は傲岸不遜の極みのごとき王の中の王であるが、その実、なかなかに面倒見が良い一面を垣間見せる。

 あの豪放磊落でありつつ、老成老熟した王を召喚した我が師──遠坂凛の父──時臣も、いろいろと苦労が絶えなかった姿を思い出す。

 

「それで。兄上らは何故こちらに? ただねぎらうために訪れるほど、悠長なことはしないはず」

「そうですね。本題に入りましょう」

 

 言って、天草はセミラミスが鳩を使って監視している此度の戦争のルーラーの動向を話す。

 

「ほう。彼女も市街に?」

 

 綺麗が眉を顰めるのを天草は見逃さなかった。

 

「も、というと?」

「いえ。ギルガメッシュ王の従える復讐者(アベンジャー)は、務めを終えて自由行動をしているのですが、書類によると復讐者ジャンヌオルタも市街に向かっていると」

「ああ、ひょっとするとカチ合う可能性もありますか……困りましたね。今から彼女に連絡をとってみましょうか?」

「いえ。さすがのジャンヌオルタも、市街地で(みだ)りに戦うことはしないでしょう」

 

 たぶん。きっと。

 そう願う綺礼であるが、あの癇癪玉(かんしゃくだま)のような黒き聖女・復讐者(アベンジャー)を統制することは難しい以上に不可能なのだ。

 何しろ契約を結んでいるギルガメッシュ自身がほぼほぼ放任しているため、彼を通じでもしない限り、こちらからの求めに応じる可能性はごく僅かである。

 

「まぁ、新市街も広い。ルーラー本人から接触を試みようと思われない限り、大事にはいたらないでしょう」

 

 綺礼の言説に天草もおおむね同意の首肯をおとした。

 第四次聖杯大戦の元ルーラーである彼にしても、サーヴァントがいる方向や数などは把握できる。彼ら(ルーラー)の索敵能力は、ことサーヴァントに限っては最強だ。気配遮断を行えるアサシンさえをも、実質の上では丸裸にできるとされる。

 しかし、

 

「ルーラーはあくまで、聖杯戦争で重篤な違反者への注意喚起、ペナルティの執行、聖杯戦争の不成立を忌避するための立場にある存在です。どちらか一方に与するということは考えにくいですし、その性質上、自ら進んで交戦する可能性も極めて低い……まぁ、今の私が言っても説得力は皆無でしょうが」

 

 天草の冗談めかした笑顔に綺礼は微笑んだ。

 と同時に。

 

「──んん?」

 

 何か気にかかることが脳内に閃く。

 そういえばという風に書類の一枚を拾い眺め、新市街に向かっている勢力──後見人として幼少より面倒を見ている少女と、四騎の英霊を従える少年の行方を思い起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




コロナのせいでズタボロな一年でしたが、また更新していければと思っております……
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