Fate/Unlimited Engel's cofficient   作:空想病

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※この二次創作は、ギャグ成分を大いに含んでおります


第四話 エハングウェンにて

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 冬木市、上空。

 

「とんだ失態だったな、槍兵(ランサー)──敵を前にして、尻尾を巻いて逃げるなど」

「申し訳ありません、お兄──いえ、アグラヴェイン卿」

「そうだ。けっして誤るな」

「はい、お兄様!」

 

 金髪に黒い髪房の混じる少女は、己の失態に頬を染める。

 

「も、申し訳ありません」

「くれぐれも注意せよ。いいな?」

 

 アグラヴェインと呼ばれた騎士は、肉親の失態を許すほど寛容な男ではない──が、今は状況が状況である。

 貞淑と厳格、苦悩と不屈、忠節と忠義によって固められた鉄の表情で、彼は王の騎士にして同胞たる乙女を導く。

 

「急げ、我等の王が、お待ちだ」

「は──はい!」 

 

 兄の背を追って、少女は巨大な槍をかついで、“船”の奥へと突き進む。

 宮殿を思わせる長い廊下を抜け、煌びやかな内装に目をくれることもなく、一直線に。

 少女は思う。

 厳しい叱責があるだろう。

 与えられた任務をまっとうできず、目撃者を仕留めることも叶わず。

 あまつさえ、あの少年が召喚した敵サーヴァントの姿と数に恐慌し、一太刀も交えずに撤退を選んだのだ。

 それが最善の判断だと信じた。

 あのような事態に直面して、己一人でどうにかできるなどという目算など、ひとかけらも存在しなかった。

 

(あの少年)

 

 ただ運の悪い目撃者だと思った。

 どういう奇跡でか息を吹き返し、殺し損ねてしまったことに気づいて後を追った。

 そして、今度こそ確実な死を──だが、住居である日本家屋に帰りついた少年は魔術を行使し、槍兵と交戦する構えを見せ、挙句の果てには七騎のサーヴァントを召喚してみせた。

 

(私ひとりで、あの方たちを倒せるはずがない)

 

 思い出しただけで臓腑が凍え砕ける。

 生前、親友を守る戦いにて、槍一本で名だたる騎士たちを幾人も打ち倒した武勲を誇る少女騎士だが、あれだけは、あの方たちが相手ではどうしようもないと思った。

 きっと、他の円卓の騎士たちでも。

 

(あるいはランスロット卿なら……いいえ、それは不敬が過ぎる)

 

 少女は兄と連れ立って、王たちの待つ広間に。

 

 

 

「よくぞ戻った、槍兵(ランサー)

 

 

 

 空間を震撼させるが如き、玲瓏な調べ。

 翡翠の瞳に宿るのは、慈愛と礼節のたおやかな色彩。

 

「敵情視察の任務、大儀であった(・・・・・・)

 

 言われた少女騎士は、白亜の大広間に帰還するなり、玉座に座る主に(ぬか)づいた。

 (ひざまず)き、心と魂の限り謝罪する。

 

「申し訳ありません、陛下!」

 

 魔術礼装じみた大ぶりの馬上槍(ランス)を、さながら許しを請うがごとく、両の(かいな)で掲げ持つ。

 

「せっかく頂いた任務(つとめ)を、私は十全に果たせぬまま、今ここに帰陣いたしました! どうか厳しい」

「よい」

「処、罰、を────は?」

「よいと言ったのだ、我が円卓の騎士“猛り狂う狼”よ」

 

 槍兵のサーヴァント・ガレスは、恐る恐る面を上げた。

 広間に並び立つ騎士たち──サーヴァントの姿。

 

 ガレスの敬愛する「湖の騎士」──ランスロット。

 ガレスの兄である「太陽の騎士」──ガウェイン。

 ガレスの異父妹にあたる「叛逆の騎士」──モードレッド。

 妖弦フェイルノートの使い手「哀しみの子」──トリスタン。

 

「貴公は務めを果たした。重大な任務をやり遂げたのだ。にもかかわらず、そのようにして己を卑下する必要などありはしない」

「い、いえ、そのようなことは!」

 

 ガレスは己の失態を自覚していた。自覚せねばいけなかった。

 学校と呼ばれる施設で行き会った、一人の赤い弓兵(アーチャー)。彼との戦闘中に、戦いを第三者かに見られていた事実に気づき、情報隠蔽のためだけに、罪のない人間を追い、殺した──なのに、“猛り狂う狼”という異名まで送られた騎士が、殺害の対象と見定めた子供を(あや)めきれず、追撃を余儀なくされ──そして、今に至る。

 だが、玉座の王は柔らかい口調で、ガレスの総身を抱擁するがごとく、告げた。

 

「貴公に与えた任務は、敵情視察の小手調べ。無事に帰参を果たし、調べた結果を報せてこそ、その真価を発揮する。さぁ、聞かせておくれ我が騎士よ。貴公が刃を交わした、此度の戦争の相手──己の眼で見定めた敵の姿を」

 

 ガレスは、己が仔犬のように小さくなる心地を味わいながら、王から賜った任務を果たす。

 冬木の地に集った数多の英霊、彼らとの戦い。

 その果てに相見(あいまみ)えた、自分自身でも信じがたい、ありえない、あっていいはずがない英霊の、しかも七体同時召喚による──サーヴァントの現界。

 

 

 

 円卓の騎士たちが拠点としているのは、王の飛行宝具たる宮殿──上空にありながらも、宮廷魔術師の幻術によって高度な隠蔽処理が成された浮遊する城。

 

 ── 高機動型大広間・エハングウェン ──

 

 その操縦席──もとい王の玉座に座すのは、うさぎの扮装に身を包むキャメロットの君主。

 

 自らを“水着獅子王”と名乗る裁定者(ルーラー)、アルトリア・ペンドラゴンその人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女によって召喚された円卓の騎士たち──アグラヴェイン、ランスロット、ガウェイン、トリスタン、ガレスは、常々思っていた。

 

 

 

 

「「「「「 前から思ってるけど、なんでこのひと水着(バニー)なんだろう──? 」」」」」 と……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみにモードレッドは、

 

「そういう父上もあるのか────水着か────俺も真似してみよっかな?」

 

 などと前向きに検討していることは、あまり知られていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




冬木勢
衛宮勢
円卓勢←NEW!!
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