復讐虫のヒーローアカデミア   作:アリガートル

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第十話:崩落する決意

 私を見ないで。

 

「虫女」

「気持ち悪い」

「虫が苦手なの、近付かないで」

 

 辞めて、そんなこと言わないで。私が、私が何をしたって言うの。

 

「うわっ、虫女がこっちきた!」

「寄生されるぞー!」

「うわー!!」

 

 違う、そんな事しない、本当よ。信じてよ。

 

「醜い子ね。うちの園の評判が下がるから他に行けばいいのに」

「異形の個性の子と遊んじゃ駄目よ。何するかわかったもんじゃないんだから」

 

 嫌、聞きたくない!もうやめて!

 

「虫の(ヴィラン)が来た!」

「俺達がヒーローだ!」

「やっつけろ!」

 

 やめて、来ないで、私は、私は敵じゃない……敵なんかじゃ……!

 

「あんな個性の子は将来きっと(ヴィラン)になるんだわ」

「お前(ヴィラン)だろ」

(ヴィラン)みたいな個性だな」

(ヴィラン)だ!倒せ!」

(ヴィラン)みたいな見た目してるわ」

 

 うるさい。

 

(ヴィラン)」「(ヴィラン)」「(ヴィラン)

 

 うるさい、うるさい。

 

 お前は(ヴィラン)だ、(ヴィラン)だろ、(ヴィラン)っぽいよね、(ヴィラン)みたいだ

 

「……れ……だま……れ……黙れ……!」

 

 お前達を、私は許しはしない

 

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!」

 

 意識が覚醒する。この憎悪に満ちた咆哮が自分の喉から放たれていることを知覚する。溢れ出した感情に涙が出ていることを認識し、崩れ落ちそうな騎馬を気にすること無く涙を拭った。

 

 周りがこちらに注意を向けるのを察知して、自分の感情が急速に冷えていくのを感じる。そう、今は騎馬戦で、私は一位にならなきゃいけないの。こんなとこで、こんなことをしてる暇は無い。

 

「自力で解いた……!?」

 

 騎手であるコイツを振り向くと、驚愕に目を見開いていたがそんなことはどうでも良い。ポイントを確認するとハチマキは何一つとして着けていない。0Pなのを確認した。

 

「アンタが私に何したかは知らないけど、今は気にしないわ。ポイント獲りに行くわよ!」

 

 後ろ蹴りで尾白ともう一人を叩き起こして、指示を出す。

 

「この時間から上は狙えないわ、下から獲っていって3位4位に入るわよ!」

「あ、ああ!」

「わ、わかった!」

「騎手、しっかり獲りなさいよ!」

 

 125Pを探し当てて、体当たりするが如くに強襲する。蜘蛛糸で騎手の手と体を固定して抵抗出来ないようにして騎手が掠めとる。しかし、鱗を生成した相手が蜘蛛糸を切断して追って来る。

 

「まず125P!次……!」

「520P、拳藤さんのチーム、あれだ!」

 

 時間が惜しい。追撃に構う暇は無いが、足止め程度に糸で絡めとり、

 

「尾白、B組、騎手、個性使うわ、掴まりなさい!」

「掴まるって、うわぁ!?」

 

 アリ+サソリ+クモ。高速で近付き、ひったくろうと騎手が手を伸ばす。

 

「甘い!」

 

 しかし、騎手の手が巨大化し、逆に獲られそうになって騎手が体を仰け反る。それを尾で支えつつすれ違い、再度睨み合う。

 

「尾白、B組、反転するわ。騎手を支えなさい」

「……本当無茶苦茶するなぁ、いいけど」

「え?何するのかわかるのかい?」

「要は落ちなきゃいいのさ」

 

 トンボの羽を発現して飛び、拳藤チームの騎馬が反転するより速く回り込んで上下反転。騎手を二人が支えつつ、その巨大化した手の内側へ潜り込み、そのハチマキを奪い取った。ついでに騎馬の脚や騎手の腕を糸で巻いておく。

 

「次!」

「鉄哲、あっちにいる!」

「あれね、やってやるわ!」

「……いや俺に任せてくれ」

「え?」

 

 チーム全員の聞いてから騎馬を少し近付けて、騎手が叫ぶ。

 

「おい鉄哲!」

「なんだ……ぁ……!」

 

 鉄哲と呼ばれた彼は動くことは無くなった。異変を察知した騎馬が全力で守りに入る。地面が軟弱地と化し、脚が沈み込む。

 

「飛ぶわ、デカくなるから足場にでもしなさい!バグタンク……ヴェスパ・マンダリニア!」

 

 下半身から巨大なオオスズメバチと化して、迫る茨を脚で千切りながら接近する。しかし、尾白やB組も体に掴まりながら茨を迎撃してくれている。

 

「騎手、吊り下げるから獲るのよ!」

「ああ!」

 

 尾白の協力で騎手を脚で掴み、急接近する。時間は残り20秒かそこら。ここでこれを掴むか、否かだ。

 

「鉄哲!起きろって!来るぞ!」

「ハチマキを俺に渡せ!」

 

 鉄哲が自分の首からハチマキを取り、そのまま差し出す。しかし、茨が幾重にも連なりそれを覆い隠す。そのまま茨は切り離されて鉄哲の腕を覆ったままである。

 

「塩崎、そのまま防御!」

「俺が茨を溶接する、少し耐えてくれ!」

「骨抜くんだ!骨抜くんの個性なら茨を柔らかく出来る!」

「分かった……けど……!この状況じゃ返事を貰えない!」

「……彼は負けず嫌いだ、そこを利用しよう!」

「あなた達の個性じゃ私に対抗なんてできない、させないわ!」

「言ってろ、後15秒で俺達の勝ちだ!」

「それで負けたら、お前のせいだな!」

「何をっ……!?」

 

 行ける、骨抜が掛かった!

 

「骨抜!茨を柔らかくしろ!」

「塩崎、止めてくれ!」

「はい!」

「尾白、B組、突っ込みなさい!」

『そろそろ時間だ!カウント行くぜエビバディセイヘイ!』

『10!』

 

 骨抜を止めようと延びる茨を尾白が迎撃し、骨抜が茨に触れる。そこでB組が両の拳を叩き込む。しかし、まだ足りない。まだ、茨は破れない。尾白を蜘蛛糸で回収し、B組は体勢を崩している、無理かもしれないが叫ばずにはいられなかった。

 

『9!』

「B組!もう一発!」

「僕の個性は、ツインインパクト。打撃した箇所にもう一度打撃を発生させられる!」

『8!』

「……!鉄哲、ハチマキを俺に投げろ!!」

「ツインインパクト、解放(ファイア)!!」

「届いて……!」

『7!』

 

 茨が砕け散り、鉄哲がハチマキを投げる。無数の茨が延びてきて、同時に騎手が手を伸ばす。脚で茨を迎撃するが、討ち漏らしが出た。B組を蜘蛛糸で吊るして回収する。

 

『6!』

 

「不味い……!」

「夜蜘さん、僕だ!僕が出る!」

 

『5!』

 

「行きなさい!」

「俺じゃ……俺じゃ届かない!」

「尾白、獲りなさい!」

「させません!」

 

 茨を迎撃し、ハチマキを尾白が掴む。だが、同時に尾白ごと茨がハチマキを掴んだ。

 

『4!』

 

「B組、騎手を頼むわ!」

「頼まれた!」

『3!』

 

 バグタンクを解除、身軽になって蟷螂の斧を振りかざす。尾白がそれを見て身を捻り、茨をピンと張る。B組が騎手を背負い、着地したのを見届けて迷い無く叩き込む。

 

『2!』

 

「ぶった斬る……!」

「やれ!」

「夜蜘さん!!」

 

『1!』

 

「はああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 その茨を叩き斬った。

 

『TIME UP!』

 

 着地し、尾白がそのハチマキを誇らしげに持って帰ってくる。同時にB組と騎手と合流する。

 

『早速上位4チームを見てみよか!』

 

『1位、轟チーム!!』

 

『2位、爆ご……アレェ!?し、心操チーム!?とんでもない逆転劇してんなぁ!?』

 

「……ハハッ、ご苦労様」

「お礼なんて言わないけど、良い働きぶりだったわ」

 

『3位、爆豪チーム!!』

 

『4位、緑谷チーム!!』

 

 顔を見合わせ、それぞれの健闘を称えるがどうにも尾白とB組の顔色が優れない。まるで、この勝利が自分達のものではないかのように。

 同時に、嫌な夢か記憶が蘇ったせいか、落ち着きかけていた呼吸が加速してくる。胸が張り裂けそうな不安と強迫観念に近い考えが頭を支配してくる。この体育祭で、始まる以前から無理矢理に押さえ付けていた感情が、見ないようにしていた衝動が、今濁流の様に押し寄せてきている。

 

「夜蜘さん?大丈夫?」

 

 フラフラと壁に寄りかかり、自分を抱く。

 虫女がまた泣いてるよ

 呼吸が浅い。

 

違う……」

「夜蜘さん?顔色が……!?」

「尾白くん、済まないが任せた、先生を呼んでくる!」

「……待って……」

 

 尾白が覗き込んでくる。

 せんせー、虫女がまた泣いてまーす

 息が、出来ない。

 

「む?尾白くん、どうかし……夜蜘くん、夜蜘くん!?」

 

 周りが私の異変に気付く。

 一々泣くなよ、面倒なんだよ、虫敵が

 嫌だ、見ないで。私は、違うの。

 二度と顔を見せないで

 輪郭がぼやけてきた。

 

やめて違うの私はわたしは

「文香!文香しっかりしろ!こっちを見ろ文香!」

 

 焦凍の声がする。

 誰もお前を友達とは思ってねぇよ

 最早視界は無い。

 

いや、嫌あぁ!」

 

 お前なんて産まれなかったら良かったのに。

 

嫌あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

文香!おい!文香、俺を見ろ!文香!

 

 

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