復讐虫のヒーローアカデミア   作:アリガートル

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第十四話:蟷螂の斧

 観客席のチビ達からの観戦に手を振って返答する。

 二回戦、常闇踏陰。相手の弱点は知らない。知る気もない。ただ正面から叩き潰す。

 

「よろしくお願いするわ、常闇」

「こちらこそ。お手柔らかに頼む」

「無理な相談だわ。だって……」

START(スタート)!!!」

 

「これで決めるつもりだもの」

 

 ギガントインセクトパーツ。

 

「テノデラ・アリディフォリア!」

 

 巨大な蟷螂の斧を振り下ろし、一撃で倒さんと欲す。

 

 だが、それも突然に止まった。止められた。

 

「陽光から隠してくれるとは、有難いな」

 

 日光から遮られた斧の下。片手で止めるのは闇そのもの。常闇を影に入れてはいけない。そう直感して斧を解くと同時に蜘蛛糸を複数射出して、常闇本体の拘束を目論むが、全て影に切られてしまった。

 

「奇襲が失敗したなら、次は正々堂々とやろうかしら」

 

 複眼を形成、クモとクワガタを発現。短いながら触覚を生やす事で対応力は海千山千の"個性"を上回る。クワガタの甲殻に包まれ、クモの素早さとしなやかさを兼ね備えた私にとって、文字通りに死角はない。

 

 顎を発現した両腕を振る度、常闇の反応速度を超えて黒影による防御が発動する。また、それどころか黒影は蜘蛛糸による拘束を容易く引きちぎり、切断する。今までは燃やすなり何なりで攻略されたが、ここまで正面から五分に対抗する相手は始めてで、少々攻めあぐねる。

 

「こっの!」

「黒影!」

「アイヨ!」

「ずるいわねそれ!」

「どうだかな!」

 

 駆け出し、両の顎で芦戸にやった様に挟み込むと黒影が現れて顎を止める。その隙に常闇は射程外に抜け出し、私もクモの走力に任せたヒットアンドアウェイに移行する。

 

 勝ち筋が見えない今、相手の弱点を探るしかない。その為に今、走り回っているのだから。数度の攻撃の後に、射程に入った瞬間に跳躍してクワガタの顎をカマキリの鎌に変えて常闇を捉えようとするが、黒影を使い無理矢理に避けたのを見てギンヤンマの羽根を発現して追撃する。

 

「黒影!」

「ああ!もう!それ邪魔なのよ!」

 

 後方に跳躍しつつ、的確に鎌と糸を避けつつ隙があれば即座に黒影による攻撃が挟まれる。やりにくいったらありゃしないわ。

 

 黒影の振るう腕を跳ねて避け、追撃の影を両顎で弾き、蜘蛛糸を常闇に向けて放つが、それを黒影が片手間に空中で切断し、再びこちらに向けて放つ。既の所で身を捻り、お互いに距離が空く。

 

「いいわ、スマートに行きましょう」

「スマート?」

 

 膂力、腕力、その他諸々筋肉が増強されていく。甲虫、幼虫、飛行昆虫。腕も背中も歪な形に歪んで形成された腕は五指の変わりにヘラクレスオオカブトが右手を、パラワンオオヒラタクワガタが左手になっている。

 

 オオスズメバチの羽根、サソリの下半身、複眼を形成してヒトの形から逸脱して相対する。

 

「どこがスマートだ」

「一撃で倒せる所じゃないかしら」

 

 左手の挟み込みを、黒影が初めて避けた。続いて踏み込んでヘラクレスの大角が常闇本人を狙い穿たれるが、黒影が角を掴んでそれを阻止する。続くサソリの尾が常闇を上方から打撃し、体勢が崩れた所を飛んで上から黒影を左手で押さえつける。

 

「くっ……!」

「降参なさいな!勝ち目は無くなったんじゃないかしら!」

 

 この戦いで、この黒影はリーチは長いし攻防も申し分無い。ただ、黒影に頼りがちで常闇本人の動きに甘さが見える。そして何より懐に入れば対処が若干遅れる。であればやれることは常闇本人を狙いつつ懐に飛び込む事を狙うことだ。

 

 しかし、今相手の主力である黒影を押さえ付けているから、こちらが有利ではある。ここで油断はしない。常闇を糸で縛り上げ、場外に放り出そうと尾に引っ掛けた所で黒影が動いた。

 

 押さえ付けていた筈の黒影はその身を細く長く変えて拘束から抜け出して、投げられた常闇を受け止めていた。相手は場外寸前、黒影も常闇も受け止めた体勢で踏ん張りが効かない、ならここで決めるしかない。

 

「ギガインセクトパーツ!」

 

 全ての虫を解除し、右手に私の"個性"を集約する。この斧は蛮勇の証。この斧であるならば、どんなものだって止めて見せる。それどころか打ち砕いてすら見せよう。だから、もう一度、力を貸して。

 

「テノデラ……」

「黒影!来るぞ!」

「アリディフォリアァァァァ!!」

 

 横薙ぎに放たれた、蟷螂の斧。最速、最重量、最長射程。両の手で受け止めた黒影と常闇が地を削りながら堪える。

 

 土煙が会場を覆い、蟷螂の斧が止まる。

 

 鎌を掴む感覚から、常闇が未だ健在であると知る。晴れ始めた土煙の中、お互いに視線が交錯する。思わぬ強敵に内心喜びを感じつつ、最終手段であるモンハナシャコを発現する。

 

 ところが、再びの激突は起こらなかった。

 

「常闇くん場外、夜蜘さんの勝ちよ!」

 

 その言葉を一瞬呑み込めず、走り出しそうな体勢で転けそうになった。よく見てみれば、削られ割られ分かりにくいが場外に一歩分だけ出ていた。

 

 ふと、緊張を解く。

 

「楽しかったわ」

「強かった、だが同じ気持ちだ」

 

 三回戦への出場を決め、ようやく見え始めた決勝に手を伸ばす。

 

 観客席にいるチビ達に手を振り、会場を去る。次の相手はどっちになるのかしら。ま、恐らく切島は爆豪には勝てないわね。恐らく何かしらの策か正面突破で上がってくると思うから……次の相手はあのボンバーマン……。

 

 丁度良いわ。アイツには幾つか借りがあるもの。叩きのめしてあげるわ。

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