復讐虫のヒーローアカデミア   作:アリガートル

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第十八話:キラー・ビー

 エンデヴァーの事務所に戻ると、先程とは打って変わって皆が忙しそうにしていた。その中心にいるのは、やはりエンデヴァーであり、きめ細やかな指示を出してこの事務所を指揮していた。やはりNo.2に上り詰めただけあって、その纏う雰囲気は並々ならぬものであった。

 

「親父」

「焦凍、夜蜘、話はついたか?」

 

 声をかけると、ヒーローの顔から父親の顔へと変わる。雰囲気も何処となく和らいだ気もした。

 

「ええ。正式に付き合うことになったから、報告しておくわ」

「そうか。焦凍、夜蜘を大切にしてやれよ」

 

 顔は熱くなってくるのを感じるが、そんな事を気にする程でもないと虚勢を張る。

 

「言われなくても。それで、何かあったのか」

「ああ。予てより保須市でヒーロー殺しと思われる事件が多い。過去の事例と重ねても、奴はまだ保須にいる」

「ヒーロー殺しを追う訳ね」

「そうだ。準備しろ、すぐに出る」

 

 準備をしつつ、周りに耳を澄ませていると、敵連合の影も保須に伸びているようだ。よって、予定を繰り上げて保須に向かうことになったという。

 

「しかし何故、アイツらまで」

「ヒーロー殺しに接触するのかしらね。アイツらが手を組んだら厄介極まりないと思うのだけど」

「有り得ない話ではないな。先の事件で雄英を襲撃した敵連合が戦力確保の為にヒーロー殺しと接触……か。焦凍、夜蜘準備は?」

「出来てる」

「出来てるわ」

「うむ。行こう」

 

▼▽▼

 

 保須に着く直前、エンデヴァーに連絡が入った。内容は、保須が襲撃を受けているというもの。加えて、爆発音も聞こえてきている。どうやら並大抵の襲撃ではないようだ。しかし、そんな時にメールの受信を知らせる音が響いた。

 

「焦凍、これって……」

「位置情報?それも一括送信のか」

 

 暫く画面を見ていた焦凍が、途端に顔を上げる。その表情から、緊急事態、それも恐らくはヒーロー殺しとの接触があったと推測できる。

 

「緑谷からの救助要請だ、これは」

「救助要請?」

「ああ。アイツは無意味にこんなことをする奴じゃない。恐らくはヒーロー殺しと接触したんだ」

「だから位置情報を送ったと……」

「行かせてくれ親父!一番近いのは俺達だ!」

 

 エンデヴァーを見ると、思案中のようだ。3人の襲撃犯か、ヒーロー殺しか。

 

「エンデヴァー、私と焦凍で時間稼ぎするから必ず来てくれるかしら」

「……出来るか、二人共」

「ああ」

「当然」

「死ぬ事は許さん。怪我もだ。無事に戻ってこい、こっちは俺が終わらせる」

「ありがとうエンデヴァー。焦凍、手を」

「ああ。行ってくる」

 

 トンボを発現させ、焦凍を吊り下げて位置情報の位置までナビを頼んで飛ぶ。黒煙が渦巻き、被害の大きさを物語るそれに、これが本当に3人で出来る事なのか、出来たとしてどんな"個性"でどんな人間性なのかわからなかった。

 

「……着地は任せるわ!」

 

 焦凍の手を蜘蛛糸で繋いで出来るだけ目的地に近付くように放り投げる。刹那、何かに横から襲撃を受ける。私の名を叫ぶ焦凍に構う余裕も無く、急速に高度が落ちてビルの上に転がる。

 

「痛いわね……やってくれるじゃない」

「……。」

 

 視認して初めて気付いた。コイツ、蜂だ。しかも働き蜂の匂い、蜂の個性で働き蜂の役割を打ち込まれた奴か、それとも複製された奴か。ともかく、コイツは4本の腕と羽、凶悪そうな顎と針を持つ、何処までも蜂らしい奴だ。

 

「ともあれ、か。アンタ、誰よ」

 

 答える事も無く、相手は針を振りかざした。それに対して迷うことなくシオヤアブを発現させて手を貫く。即座に残った腕が私を抱き締める様に拘束するべく伸びたのを見て、全身を蜘蛛糸で拘束する。

 

「アンタ、名乗りもしないし……やっぱり働き蜂かしら」

 

 ジタバタと動くそれに対して、触覚を生やして調べてみる。蜂の匂い、何処かで嗅いだ事がある。一体何処で?意識はあるようで……。

 

「上書きしてあげる。喜びなさいな」

 

 オオスズメバチとエメラルドゴキブリバチを発現、まず抵抗を止めるために麻痺させ、次いで集合フェロモンを応用した働き蜂としての役割を打ち込む。元より、コイツはこうなってしまっては終生の指示待ち人間だ。麻痺が治まるのを待って、私は聞いてみる事にした。

 

「アナタ、何者?」

「はい、女王様。私は宮本 真奈です」

「目的と、経緯を教えてちょうだい」

 

 目的は、私を襲うこと。仕事の帰り、何かを刺されたと思ったら、貴女を襲えと命令されたという。同じ様な"個性"の持ち主かしら。それとも、蜂だけの?ともあれ……。

 

「今度は何者かしら」

 

 サソリらしき下半身、しかしその身体に鋏は無く、尾の先にはヘラクレスとギラファみたいな4本の角。甲虫が如き鎧を纏った上半身に、顔の半分を覆う程の複眼。腕は無く、その代わりに背中からクロスジヒトリ(検索注意)の様な触手が4本伸びている。それがビルの壁を登ってきていた。

 

「悪趣味な造形ね。私でももう少し外見に気を使えるわよ」

 

 そいつが触手を伸ばしてきたので、文字通りに飛んで逃げる。逃げ遅れた働き蜂を、奴は尻尾の角で掴んだ。

 

 グシャリ。

 

 呆気ない音と共に働き蜂が潰れ死ぬ。悲鳴を上げる間もなく圧死した働き蜂を血の雨を降らせながら投げ捨てて、ソイツは咆哮してビルの上を渡って来る。その光景に、人の死を見た恐怖と群れを殺された怒りが湧いてくる。

 

「見た目通りに馬鹿ね!人の命を軽々しく奪うものじゃないわ!」

 

 容赦は無く、伸びてきた触手を全てシオヤアブで貫く。痛覚があるのか無いのか、何度貫かれても触手で攻撃してくる。キリが無いとオオスズメバチの顎を発現して向かって来た触手を断ち切る。ビチビチと眼下で動くそれを見て見ぬふりをして、接近して倒すことにする。

 

 オオスズメバチ、モンハナシャコ、クロカタゾウムシ。

 

「アンタみたいなイカレ野郎はね」

 

 短くなって取り回しが良くなった触手が凄まじい速さで振り回されるが、それを全て殴る。相対速度は凄まじく、ぶつかった触手は無惨にも弾け飛ぶようにして消える。

 

「お生憎様、この社会じゃやっていけないわ」

 

 4本の角を持つ尻尾が正面から掴もうと向かってくるのを、正面から迎撃する。私が殴る方が強いようで、余りにも綺麗に壊れていく尻尾を横目に、本体に取り付いて腕を絞る。

 

「だから、ぶん殴ってやる」

 

 凄まじい音と衝撃で全身全霊の一撃が決まる。鎧は砕け散り、口と思わしき部分から血を吐いたソイツは、ピクリとも動かなくなり、代わりに呻き声を上げるようになった。

 

「……シテ……ろ……ころ……して……」

「あらビックリ。アナタ喋れたの」

「たす……けて……い……たい……」

「私にはどうしてあげることも出来ないわ。何があってそんな姿に?」

「くる……しい……おまえ……が……こうした……」

「私?私が?」

「虫……の……女……おまえ……が……」

 

 刹那、ソイツの腹が上半身が萎縮する。不味いと思ってビルの屋上から飛び降りると、考えが的中したようで爆発音。次いでビシャリと水が撒かれたかのような音。恐らくはジバクアリで死ぬ前に私ごと巻き込もうとしたのだろう。だとして、誰がそこまで考えるのか。敵連合にしては、やり方が弱い。陰湿なのは分かるが。

 何故、ここで二人も死なねばならなかったのか。私がやったとはどういうことだ?一体何が起きているのか、何故狙われたのかも分からない。だとして、相手は一体誰なのだろう。

 

 いえ、今はここで考えていても答えは出ないわ。焦凍の所へ行かないと。

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