復讐虫のヒーローアカデミア   作:アリガートル

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第四話:虫の知らせ

「焦凍、マスコミだわ」

「オールマイト目当てだろ」

「ならあそこで捕まってる1-Aの生徒は何?」

「……裏門とかねぇのか」

「んー……そうね、手を」

「何すんだ?」

「そうね、口は閉じておいた方がいいかも」

 

 しっかりと抱き寄せて、跳躍する。人集りと門を悠々と飛び越えて着地し、焦凍を下ろす。が、そこで厄介者にみつかった。

 

「そんなことに個性を使うな」

「ごめんなさい先生。彼、ああいうの苦手で」

「……ハァ、今回だけだぞ」

「ありがとうございます」

 

 自分のせいにされた焦凍は、不服そうな目でこちらを見てきたが、敢えて無視する。その程度じゃ私は怯えないわよ。

 

 因みに、このあとあった委員長決めでは、票を自分に入れておいた。焦凍は自分以外の誰かにいれていたようだが、詮索する事でもないだろう。

 

「また蕎麦?いい加減に飽きないのかしら」

「ここの蕎麦は美味しいぞ」

「そう?次に食べてみようかしら」

 

 カウンターで隣合い、またいつも通りに他愛の無い話をしている。あら、ここのカツ丼結構美味しいのね。私も焦凍も食べ終わったので、教室に戻ろうかと思った時だった。

 

 耳が痛くなる程にけたたましく鳴り響く警報と、慌てて避難を始める上級生と、それに感化されてパニックに陥る下級生。人波みに呑み込まれ、焦凍とはぐれる。

 

「ちょっ……ああ、もう!」

 

 バッタの脚力で上へと飛び上がり、天井から人の少ない二階へ移る。上から、もみくちゃにされてる赤と白のツートンカラーを見つけ出して、クモの糸で引っ張り上げる。

 

「わりぃ、助かった」

「どういたしまして。で、このパニックをどうする?」

「……凍らせるか」

「出来るかもしれないけど止めた方が良いわね、動きを急に止めるとかえってパニックになるかもだわ」

「じゃあ……そこに飯田達だ。何か考え付くかもしれん」

「引き上げてみるわ」

 

 糸を飛ばして飯田、緑谷、麗日な三人を回収する。

 

「助かった!ありがとう夜蜘くん!」

「潰されるところやった……」

「あ、ありがとう……」

「お礼はいらないわ。このパニックを沈める方法を思い付かない?」

「……俺に考えがある。麗日くん、俺を浮かしてくれ。夜蜘くん、俺を出入り口の上まで投げてくれ」

 

 麗日がその肉球で触れ、私が糸を巻き付けて放り投げる。すると、彼は非常口みたいな体勢で壁に張り付き、声を張り上げた。

 

「皆さん!大丈夫!」

 

 侵入してきたのはマスコミだと叫び、そのパニックを終息させる。

 

「非常口やん」

「非常口だわ」

「非常口だな」

「仲良いんだね」

 

 下を見れば、赤い髪や黄色髪もパニックを治めようとしていたようだ。たった二人でよく頑張るわね。その後、委員長に当選した緑谷は、それを辞退し飯田へ委員長の座を明け渡した。どうやら、彼の中で、飯田の行動に思うところがあったみたい。ま、私には関係なかったのだけれど。

 

▼▽▼

 

 マスコミ侵入事件から数日。余りに広すぎる雄英の敷地を徒歩で移動するわけには行かず、バスに乗ることになった。委員長の座に着いた飯田は、その責務を果たすべくして統率しようとしていたが、空回りに終わっている。

 

「窓側が良いか?」

「大丈夫よ。ほら、詰めなさい」

 

 前に爆豪がいるので、余りいい気分はしないが、仕方ない。この前の事はまだ根に持つ事にしたので、彼にはいつか謝ってもらうわ。……ま、焦凍が隣にいるからいいわ。

 

 ……にしても、この胸騒ぎは何かしら。朝からずっと嫌な感じがするのよね。

 

「ねぇ、夜蜘さん、轟とはどんな関係なの?」

「どうって……この前言ったでしょう」

「だって、そんな隣に座るんだもん。気になるよね」

「あのね、葉隠。私はコイツの事をそんな風には見てないの」

「そうなのか?」

「え?」

「え?」

 

 ……え?

 

「俺は文香の事を大事な人だと思ってるんだが……」

「…………ヴァッ……」

「きゃぁぁぁぁぁぁ!と、轟が!夜蜘に!」

「と、轟さんが、夜蜘さんに!」

「「コクった!!」」

 

 顔が熱い、俯いて、顔を覆う。ああ!もう!

 

「だ、大事な人って……」

「幼馴染みは大事な人だろ?」

 

 ……ほら。

 

「ほら!これだからそんな風には見れないのよ!」

「イケメンの天然は罪だねぇ~!」

「応援しますわ、夜蜘さん!」

「おい……いい加減にしろよ」

 

 鷹の如き眼光で、最前列からこちらを睨み付ける担任の存在もあり、私達は顔を見合わせて静かにすることにした。ただ、まだ心臓はバックバクだし、顔は真っ赤だと思う。

 

「暑いのか?冷やすぞ?」

「いらないわ」

 

▼▽▼

 

「デケェとは思ってたが、近くで見るとよりデケェな」

「ドームの中に建物とか、見たこと無い!」

「USJみてーだ」

「テーマパークに来たみたいだぜ、テンション上がるな~」

「その通り、ようこそ、1-A諸君」

 

 聞き覚えの無い声が響く。声のした方へ顔を向ければ、宇宙飛行士が着ているようなコスチュームが飛び込んでくる。

 

「ここは雄英でも最大規模の災害救助訓練施設、その名も嘘の(U)災害や(S)事故ルーム(J)へ!」

「「「USJじゃねーか!!!」」」

 

 ……思いの外USJね。こんなドーム作るなんて、雄英も凄い資金力ね。どっから持ってきたのかしら。

 

「コホン、えーでは、私の方から伝えたいことが一つ……いや、二つ……三つ?」

 

「1-Aの皆さん。君たちは、雄英の狭き門を潜り抜けて無事にヒーロー科へ入学しました。その努力は誉められるべきで、私達は君達の入学を大いに歓迎します」

 

「しかし、入試の時に既に気付いているかもしれませんが、僕や君達の個性は使い方を誤れば、これを人に向ければ簡単にその命を奪ってしまうことができます。僕の個性はブラックホール、全てを塵にしてしまうような個性です」

 

「君達の中にも、強力な個性を持つ人もいるでしょう。ここで学んでほしいのは、その力を人を救ける事に使う事と、その力を背負う事の重さ。この二つを、どうかここで学んでいってください。どうも、ご清聴ありがとうございました!」

 

 その言葉に、1-Aから歓声と拍手が沸き起こる。そんなこと、百も承知よ。と思いながらもその言葉の重みを考える。人に向ければ簡単に命を奪う、か。そうね、個性なんて大体そんなものよ。あいつらだって、今は忘れてるかもしれないけど、個性を私へ向けた時は軽く死を覚悟したわね。

 

「んじゃ、まずはグループに別れて……」

 

 嫌な予感、今朝感じていた、虫の知らせ。ああ、こういう事だったのね。

 

「先生、あれを!」

 

 ドーム中央の広場には、黒い霧が広がっている。明確な敵意と悪意を満たしたそれは、次々と人を吐き出している。

 

「な、なんだあれ、もう始まってるパターンか?」

「……いや、そうじゃねぇみてぇだ」

「一塊になって動くな!あれは敵だ!」

 

 長い一日になりそうだ。

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