復讐虫のヒーローアカデミア   作:アリガートル

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第九話:落陽を呼ぶ

「篩に掛けさせてもらうぞ」

「篩は何も一つだけではないのよ」

 

 焦凍が冷気を出した瞬間に天井に跳び、間髪入れずに蜘蛛の糸で巣を作る。自分は羽根を生やすと早々に見切りを着けて逆走し、観客席を越えてスタートゲートの前までやって来た。

 

「失礼、そこで暫く止まっていてくださる?」

『夜蜘文香、後続の妨害がエゲツねー!コイツはシヴィーーー!!』

 

 外から駄目押しに補強して走り出す。4kmも全速力で走る自信はないが、それでも体力には自信しかない。コースのそこらに蜘蛛糸を張り巡らせて足止めする。

 

「何が篩だ、半分野郎!てか待ちやがれ虫女ぁ!」

「悪いけど止まる訳にはいかないんだよ!」

「言われたまま止まるはずありませんわ!」

 

 破砕し、爆破し、切断し、引きちぎる。多種多様な攻略方法で蜘蛛の巣を突破し、続く蜘蛛糸を同様に攻略するクラスメイト達を尻目に、差を広げるべく前へ前へと進んでいく。すると、目前に巨大な影が見えた。

 

『さぁ!最初の障害だ!ヒーロー科なら見たことあるだろ!?乗り越えた奴だって居るだろぉ!?』

 

『ロボ・インフェルノ!!』

 

「入試の仮想敵……もっと映えるモノが欲しかったわね」

 

 近くにいた奴が殺意を撒き散らしながら突っ込んでくる。それをモンハナシャコの個性で粉砕する。ボクサー気分で2、3と粉砕していき、仕上げにバッタで跳んで巨大なロボの一つを砕く。

 景気づけに再度バッタで跳んで、カミキリムシの顎で腕を切り落とし、最後にカブトムシの角で片足を持ち上げてひっくり返す。避けても良かったが、折角の障害なら越えて然るべしだわ。

 

 後ろで氷漬けのロボが倒れるのを見た。ここで飛んでも良いが、それでは味気ない。

 

『ロボ程度じゃ相手にならねぇ、チョロいってか!?じゃあこれはどうだ!』

 

『進むは勇気か蛮勇か!落ちればアウト、嫌なら這いずり回れ!』

 

『ザ・フォーーーーール!!』

 

 奈落を前に、立ち止まる。恐怖ではなく、呆気ないとすら感じるからだ。簡単じゃない、こんなもの。まるで依怙贔屓されてる気分だわ。

 

「道は作ってあげる。でも、舗装はしないわよ。茨の道を進みなさいな」

 

 トンッ、と奈落へダイブする。

 

「夜蜘さん!?」

「夜蜘くん!?」

 

 ビッグ・スパイダー・ウェブ。

 

 奈落から聳え立つ柱に細かく糸を張った蜘蛛の巣を張り巡らせる。バランスを崩して倒れた時の保険だが、落ち所が悪ければ……横糸に落ちれば要回収になるわね。

 

 蜘蛛の巣を張りつつ、どこぞの蜘蛛男と同じ要領でターザンしつながらトラップにロープをカミキリムシの顎で何ヵ所か切り落としておく。立ち往生でもしてなさいな。

 

『先頭は一足早めに攻略して独走中!上位何名が通過は公表してねぇから、自分の順位に安心すること無く着き進めぇ!』

 

『おっと!?先頭は早くも最終関門!』

 

『飛べば撃ち落とされる一面地雷原』

 

『怒りのアフガン!!」

 

『地雷の場所はよく見りゃ分かるから、目と脚酷使して進んで行けぇ!!』

 

 ああ。何てことかしら。

 

「本当、このレースは簡単すぎるわ」

 

 迷うこと無く全速力で駆け出す。ただの砂場であるかのように進む。この程度、お遊びにすらならないわ。

 

「第六感か、羨ましいな」

「ご名答。私の後に続くと良いわ」

 

 踊るように、跳ねるように。焦凍達を置いてただひた走る。すると、爆発音と同時に殺気を感じて体を捻る。そこには鬼の形相で飛んでくる爆豪と持ち前の集中力でルートを決めて走ってきた焦凍がいた。

 

「俺の、事を!忘れてんじゃあ無えぇぇ!」

「チッ……来やがったわね」

『ここで先頭、三つ巴の戦いだぁぁああ!!』

 

 三つ巴。それぞれが地雷を踏まないように警戒しながら、それぞれを妨害する。爆破、氷結、蜘蛛糸。三者三様に妨害と進行を続ける。このまま誰が最後に出し抜くか、それで勝負は決まるはずだった。

 

 大爆発。そう形容する他無い音と衝撃に振り返る。最初の巨大ロボの装甲に乗った緑谷が、文字通りに飛んでくる。

 

『緑谷、先頭集団を抜いたぁぁぁぁぁ!』

「デクぁ!俺の前を、行くんじゃあねぇ!!」

「後ろ気にしてる場合じゃねぇか……!」

「やってくれるじゃない!」

 

 妨害を止めて緑谷を猛追する。緑谷が失速し、このまま終わるかとも思ったが、嫌な予感がする。緑谷が体勢を立て直し、装甲を振るう。やることを理解した瞬間に甲殻を展開して衝撃に備える。

 

「くうっ……!?」

『緑谷、間髪入れずに進路妨害!!地雷原をあっという間にクリア!』

 

 たたらを踏みながら衝撃に耐えて直ぐ様走り出す。自分の愚策を呪いながらも、他の二人に対する優位を確立している。モロに喰らったらしく未だ走れない。まだ、追い付ける……!

 

「お願い、力を貸して……サハラ・シルバーアント!」

 

 全速力、しかし、それでもあと一歩、追い付けなかった。

 

『今、一位でこのスタジアムへ戻ってきた男の存在を、誰が予見したか!?怒涛の猛追、波瀾の最終関門、ただ一人、ダークホースとして戻ってきた!』

 

『緑谷出久の存在を!!』

 

 その直後に、私がゴールする。言い訳のしようもないまでの二位。それでも、焦凍に勝って……でも緑谷に負けて。ああ、もう!

 

 続々とゴールする面々を横目に、気持ちを抑える。落ち着きなさい、まだ予選よ。ここから巻き返せる。私にはそれだけの実力と、意志があるわ。

 

「予選通過は上位42名、落ちた人にもまだ見せ場はあるわ!」

 

「さぁ、ここから本選に入っていくわ!取材陣も選手たちもキバリなさい!」

 

 告げられた第2種目は騎馬戦。不利のような、有利のような。隣にいた轟と顔を見合わせて、お互いにその気が無かったようで別々の方へ歩く。

 

 とは言いながら、だ。私はどちらかと言えば騎手より騎馬に向いてる個性だと思うのよ。もちろん騎手でも活躍できるのだけど、圧倒的に騎馬が足りないわね。

 

「……。」

 

 焦凍はナシ。爆豪も殺す。緑谷はさっき抜かれたから嫌。なら……他で騎手が出来そうな奴は……。いえ、ここは直感よ。私の虫の知らせは的中率120%なのよ。

 

 ……そう、体育で誰も組んでくれないトラウマは置いておくのよ。今気にすることでも無いのだから……!静まりなさいよ、私の心臓!

 

「あ、あなっ、あなた!」

「ん……?俺?」

 

 隈の濃い、アンニュイな雰囲気を纏った彼に決めた。

 

「そうよ、あなたよ。私の上に来なさい、問答無用で一位に引き上げてあげるわ」

「君が騎馬だってのに、そんなこと」

「関係ないわ。騎手が取れるようにサポートするのが騎馬なのよ。なにより、あなたヒーロー科じゃ無いのでしょう?なら、ここにいる時点で私達と同格ってことよ」

 

 その言葉に彼は少し驚いたような表情をして、溜め息を一つついて向き直った。

 

「はぁ……女子の上に乗るのは気が引けるけど、そこまで言うのなら乗るよ。その言葉」

「話が早くて助かるわ」

「じゃ、この二人と一緒に騎馬になってよ」

 

 彼が指差したのは心ここにあらずと言った様子の尾白とB組の人。

 

「いいけど、なに……これ……ぇ?」

 

 何で、意識が、どうして……。

 

「悪いけど、利用させてもらうよ。ヒーロー科」

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