大災害から七日目の朝霧が立ちこむ早朝。アキバの街の北口には3台の帆付き馬車がある。第三者から見れば、最初はアキバから出る商隊だと思うが馬車に繋がれているのが馬ではなく、モンスターであると見れば、違うとわかる。
モンスターは3種類いる。一匹は血の気の失せた青白い肌で肌と同じ青白い焔を身にまとっている巨馬と言えるほど大きさを持つ馬〈
この三匹は幽々子が〈従者召喚〉で召喚したモンスターで〈召喚術師〉の召喚生物の中では強い分類に入るモンスターだ。
「しかし、改めて見ると怖いし、不気味だぜ。アンデットは」
「だな。コイツで引く馬車に乗るのはチョットな・・・」
魔理沙がそう言うと小町も同意する。他の奴らも怖がる人がそれなりにいる。それを見た三匹は不機嫌そうに足を踏み鳴らす。それなら、普通なら馬でもいいのだが馬車に乗せてる物を守るためにわざわざ、普通の馬より強い召喚生物に馬車を轢かせる理由がある。
馬車の荷台にあるのは木箱や魔法の鞄が大量にあり、中身はアキバ駐在メンバー全員が銀行に預けていた財産と商業ギルドから買った商品などが収められている。もし、PKや悪意あるギルドに強奪されれば、かなりの損失になる。私達〈幻想郷〉に喧嘩を売るギルドやPKなどは居ないと思うが念には念を入れて行くつもりだ。
「それじゃ出発するわよ。昨日言った通り。1台に4人乗って、左右前後を警戒。何かあったら、直ぐに大声で言って。一応、周囲には〈方術召喚・白布お化け〉で警戒させてるから気を抜かないように」
『了解!!!』
全員が幽々子の指示で動き出し、3分後に準備が完了して、アキバの街を出発した。
出発してから5分くらい経ち、〈ウエノ盗賊城址〉が見えてきた。現実では上野公園だったがゲームでは大地人の盗賊と亜人系モンスターが徘徊するフィールドエリアになっている。
「うぉ、あれが上野かよ。現実世界と違いありすぎだろ」
「何言ってんのよ。魔理沙。ここは〈エルダーテイル〉の世界なのよ。なにかも全部、違うんだから」
魔理沙の驚きの声に霊夢が冷静に言う。魔法の双眼鏡で見張りをしてたレンコがなにかを見つけ、大声で叫ぶ。
「右方向に敵。PK。所属ギルド〈たいだるくらん〉。数は6」
レンコの報告に馬車を止めて、全員が馬車から降りて、半数が敵の方向に向き、戦闘態勢を取る。残りが馬車のそばに付き、別方向での奇襲などに警戒する。戦闘態勢を取るのは霊夢・魔理沙・魂魄妖夢・雷鼓・宇佐レンコ・ヤマメの6人である。
「で、どうすんだよ。霊夢」
「まず、最初に出てきた奴を〈アストラルバインド〉で拘束して、妖夢以外、全員で魔法や遠距離攻撃で滅多打ち。生き残りがいたら、妖夢が挑発使って引き寄せ。後は撃破。電撃作戦で行くわよ」
「「「「「了解!」」」」」
さっそく、霊夢が指示を出し、他の5人がその指示に動く。レンコが〈アストラルバインド〉の詠唱、霊夢・魔理沙・雷鼓も攻撃魔法の準備、ヤマメは愛刀の三日月刀から弓に変える。妖夢は待機。数分くらいすると、ガサガサと鳴る茂みの音と慌てて走る足音が聞こえる。そして、ついに現れる。
「くそっ!!なんでこっけ「〈アストラルバインド〉」なっ!?」
最初に出てきた皮鎧を着た〈武闘家〉の男を拘束する。すると次々とPKを現れ始め、6人目が現れた瞬間に攻撃を始める。
「今よ〈剣の神呪〉」
「喰らえ〈オーブ・オブ・ラーヴァ〉」
「〈マエストロエコー〉」
「んっ〈ラピッドショット〉」
無数の剣が、溶岩の弾が、コピーされた魔法が、分裂した矢がPK共に向かって着弾、蹂躙していく。大量の土煙が舞い、土煙が晴れると6人中4人が神殿送りにされ、残りの二人はレベル88の〈守護戦士〉の男とその後ろにいるレベル85の〈盗剣士〉の男が生き残っている。
「あれ、なんで生き残ってるんだ。こいつら?」
「本当ね。いくら、盗剣士はともかく、守護戦士でもあの攻撃喰らえば、ひとたまりもないはずなのに」
そう。盗剣士はHPがちょっと削れているが、守護戦士はHPが削れていない。魔理沙とレンコの疑問に霊夢が答える。
「馬鹿なのあんたら。あれは守護戦士の特技〈キャッスル・オブ・ストーン〉を使ったのよ。後ろの盗剣士はあの守護戦士の後ろに隠れたおかげで助かったんでしょ」
〈キャッスル・オブ・ストーン〉は短時間だけダメージを受け付けない特技でさっきの猛攻を防ぎ切ったそして、盗剣士はその後ろに隠れて、ダメージを凌いだというわけだ。
そんな風に呑気に話しているとPKの二人が睨みつけながら口を開く。
「てめえら。よくもやりやがったな」
「ぶっ殺す!!!」
そう言うと二人がかりで襲ってくるがしかし、妖夢が前に立つと
「〈武士の挑戦〉」
妖夢が挑発特技を使い、PK二人を引き寄せる。「クッソ」と口を吐きながら、妖夢に襲い掛かるが妖夢は〈武士〉の二刀流特技〈流派:風守雷攻〉を使い、二本の刀で攻撃を受け流しや回避でしのぎ、隙見て攻撃をしている。早くしびれを切らしたPKの二人が特技を使いだす。
「くそっが!!〈シールドスマッシュ〉」
「〈ヴァイパーストラッシュ〉」
「〈刹那の見切り〉」
盾と双剣が妖夢を襲うが、妖夢は〈刹那の見切り〉を使い、冷静に対処する。しかし、妖夢は特技使用による膠着状態になってしまう。それを見た守護戦士がニヤリと笑い、
「〈クロス・スラッシュ〉」
守護戦士の片手剣が十字の斬撃を繰り出し、妖夢に当たろうとするがガシャンと斬撃が何かに阻まれて、攻撃が無効化される。
「なに!!?」
「なめすぎなよ。あんたら。私が障壁を張らない訳がないでしょ」
今のは霊夢が張った〈禊ぎの障壁〉が割れた音で障壁のおかげで攻撃を無効化できたのだ。守護戦士はそれに気付くと仲間の盗剣士を呼ぼうとする。
「おい、こっち来い。こいつらを一気に・・・・・・」
途中で声が途切れる。それはそうだ。なにせ、仲間の盗剣士がいつの間にか拘束されて、地べたに転がっているのだ。
あれはレンコの〈アストラルバインド〉とヤマメの秘宝級の鋼糸〈餓毒蜘蛛の鋼線〉、その効果の〈邪毒〉〈麻痺〉〈疫病〉のバッドステータスで動けなり、ピクピクと痙攣している。更に亀甲縛りで縛られているので、霊夢と妖夢はそれを見て、正直、えぐいなと思った。
それを見た守護戦士は助け船がないと判断し、妖夢たちを怯ませて、一気に逃げようと考え、直ぐに実行に移す。
「喰らえや!!!〈オーラセイバー〉」
「遅い」
片手剣がオーラを纏い、妖夢に振り上げようするが妖夢は難なく躱す。妖夢もさっさと決めようと一気に畳みかける。
「〈一刀両断〉」
妖夢の一刀が頭から股下までを真っ二つに切り裂かれる。守護戦士は泡に変わり、消え去る。妖夢は二本の刀をしまい、霊夢たちの所に戻る。
「終わりましたよ。霊夢」
「お疲れ」
まるで、先程の戦闘など軽い運動したかの様に話す二人。妖夢は縛られた盗剣士を見る。
「そういえば、コレどうしますか?」
「そうね。捕まえててもしょうがないし、神殿送りにしましょう」
霊夢がそう言うと縛られた盗剣士は逃げようとするが縛られてその場でジタバタすることしかできない。
霊夢はヤマメと小町を呼ぼうした時、周囲の警戒をしていた幽々子から連絡が入る。
「霊夢。さっき来たPKの方向から黒剣騎士団が来るわよ。一応注意して」
幽々子の連絡に霊夢は首を傾げる。なんで黒剣騎士団がこっちに来るのかと疑問に思ったが縛られたPKを見て、このPKは黒剣騎士団に喧嘩売って、逃げてきたのかと考える。
すると、近くから足音と茂みが揺れる音が聞こえ、黒い剣と鎧を装備した赤い男が現れる。その後にフードを被った男など5,6人が現れる。
「あっ・・・誰かと思ったら〈幻想郷〉のやつらじゃねーか」
「久し振りね。〈黒剣〉あなたちの用って、コレの事」
霊夢が縛ったPKを指差すと〈黒剣〉のアイザックが亀甲縛りにされている盗剣士を見ると顔を顰めながら、返事をする。
「あぁ、最近、戦闘訓練しているフィールドのPK共の掃除をしてるんだよ。そいつもその一人でな」
「なるほどね」
「とりあえず、そいつを渡してくれねぇか。色々聞きたい事があるからよぉ」
アイザックは引き渡しの要求をしている。恐らく尋問か拷問などをして、PKの所属ギルド〈たいだるくらん〉の情報を手に入れようと考えているのだ。霊夢は別に渡してもいいがただと言うのは納得出来ないので吹っ掛け見る事にした。
「別にいいけど。ただと言う訳にはいかないわ」
「なに」
アイザックが目を細める。その目から『めんどくせー事、言うじゃねーよ』と映っている。
「貸し一つでどうかしら?」
『!!?』
霊夢の言葉に黒剣騎士団が殺気立つ。黒剣騎士団はレベル85以上しか入れないエリート志向が高いギルド有名だ。そのギルドに貸し一つと言われて素直に傾くわけがない。
かと言って黒剣騎士団と同等と言われる〈幻想郷〉との争いは避けたいはず。ここで戦えば、良ければ痛み分けと言った所だ。更にあの二人もいる。
「あら、誰かと思ったら黒剣ですわよ。お姉さま」
「本当ですわ。久し振りに相手してくださいますから?」
「げっ、いたのかよ夢幻姉妹・・・」
馬車の反対側から夢幻姉妹が出てくるとアイザックがすぐに凄く嫌な顔になる。
〈最凶最悪の夢幻姉妹〉ゲーム時代は幻月が敵のダメージを受けても攻撃し続ける壁役。夢月は回複役や攻撃役、サブの壁役にもなるオールラウンダー。
しかし、ある趣味がなければ、こんな呼ばれ方はしない。その趣味とは喧嘩。しかも、たった二人で〈DDD〉などの大規模戦闘系ギルドに喧嘩を売る事だ。
喧嘩の規模は様々で多くは、負けるか痛み分けで終わるが受けた相手にとっては毎回、それなりの損害を受けるため『何度も喧嘩を吹っ掛ける戦闘狂姉妹』と言うのが相手にした者の評価である。
なんで、そんなことをするのか聞いたら、『強い相手を叩きのめして、地に伏せる瞬間がゾクゾクするから』と言う理由だそうだ。
そんな訳でアイザックは夢幻姉妹に少しの苦手意識を持っている。
「で、どうする?」
「ちょっと待ってください」
霊夢が不敵に笑うとアイザックは歯を食いしばる顔になるがフードを被った男が待ったを掛ける。この優男はレザリック。〈黒剣騎士団〉の事務方面を担当している。
「なによ、レザリック」
「流石に貸一つは高いです。金貨でなら払えますがどうですか」
「うーん・・・別にそれでもいいわよ」
霊夢はレザリックとの交渉はめんどくさいと思い、レザリックの要求に答える。
「分かりました。では、金貨1万枚でどうでしょうか」
「それじゃ安いわ。5万枚よ」
「高すぎます。最高でも2万枚くらいですよ」
その後も霊夢の交渉は続き、最終的に金貨3万枚で成立した。その後、もう用はないと黒剣騎士団は去り、私たちはアサクサに向かうため、馬車を再び発進させた。
十数分、私達はついにアサクサにたどり着いた。
ステータス
名前:幽々子
種族:ハーフアルヴ
レベル:90
メイン職業:召喚術師
サブ職業:死霊使い
アイテム:1〈冥府巨桜の夜扇子〉
死霊たちを魅了する桜の木を写した幻想級の扇子
振れば、死を払い、舞えば、魂を引き寄せると言われる
効果は死霊系従者の高い戦闘強化と弱点無効などを持つ
アイテム:2〈死霊研究図解書〉
偉大な死霊使いが残した〈死霊使い〉専用の秘宝級の魔導書
新種の不死系モンスターを見つけるとその不死系モンスターの情報が乗る性能と死霊従者の召喚の詠唱時間と再詠唱時間の短縮効果を持つ
アイテム:3〈骸骨鳴らしの鈴〉
骸骨の形をした鈴で鳴らすとカラカラと鳴る。
効果は不死系モンスターの引き寄せ効果がある。
主に男性層から人気があり、デザインは世界中に100種類もあると言われる。
名前:星熊勇儀
種族:ヒューマン
レベル:90
メイン職業:武闘家
サブ職業:鍛冶屋
アイテム:1〈巨人魔鋼のレシピ〉
エッゾ帝国の〈炎峰ダイセツ〉の鍜治場の炎熱巨人に鍛冶1本勝負に勝つことで入手できるレシピ
巨人魔鋼は高位の対巨人装備や巨人特攻武具の材料になる。
ただし、炎熱系モンスターが多数、徘徊する〈炎峰ダイセツ〉に侵入、鍛冶勝負に負けたら死に戻りなど入手する過程が鬼畜レベルのため、幻の鍛冶レシピと呼ばれてる。
アイテム:2〈雷竜真鱗の籠手〉
雷竜のレアドロップ〈雷竜の真鱗〉をふんだんに使った籠手
〈ライトニング・ストレート〉の威力強化や再詠唱時間短縮、敵に対する麻痺付与の効果をもたらす。〈ライトニング・ストレート〉を多用する武闘家から人気がある。
アイテム:3〈古代の運動服〉
廃校型の古代遺跡で手に入る体操服型の装備
防具としての性能はないが魔法の効果で蒸れない、汚れないの効果がある。
勇儀の一番お気に入りの装備である。
名前:ヤマメ
種族:ハーフアルヴ
レベル:90
メイン職業:暗殺者
サブ職業:毒使い
アイテム:1〈暗獄三日月〉
十三騎士団の一つ(無貌騎士団)が使用したと言われる幻想級のシミター
無貌騎士団が厳しい掟と戒律の象徴として作り上げたと言われる。
高い攻撃力とクリティカル率上昇、対人戦闘によるステータスアップ効果を持つ。
アイテム:2〈餓毒蜘蛛の鋼線〉
地獄の亡者を食い散らかす餓毒蜘蛛の糸から作られた秘宝級アイテム
攻撃力はないが特殊能力として、邪毒や麻痺、疫病のバッドステータスを高確率で与える。更に捕獲された状態の時、低確率で相手に何らかのバッドステータスをランダムに付与する。
アイテム:3〈天上慈悲ノ衣〉
天上から垂らす慈悲の糸から作り上げた幻想級の布鎧
高い柔軟性と移動速度上昇、特技の再使用時間の短縮効果に攻撃を受けると超低確率で攻撃を反射する特殊効果を持つ