Infinite Stratos Easy Day 作:キングオブ不死身さん
それでは
モードレッドは先程までに起こった事を頭の中で簡潔に整理した後に再び火器装備担当の元へと向かった。装備は手元にあるが、銃火器が無ければ戦闘は出来ない。火器担当にその旨を伝えると彼は仏頂面を崩さずにリストをモードレッドへと渡した。
「どれにするかねえ」
いくらIS、インフィニットストラトスを操縦すると為れども、結局のところ最後に頼りになるのは自分の腕と握られた銃のみ。そうプライスから嫌と言うほどまで聞かされてきた彼女にとっては銃が無い事は死を意味する事だと直感で刷り込まれていた。ならば、ここで一番使い易い物を選んでおけば後々の事態にも役に立つ。
リストは会社ごとに区分けされている。何を選ぼうかとしばし銃火器リストを呆然と眺めていた。モードレッドは性能や使用弾薬と言った事にはあまり頓着せず、ユーザビリティの高い銃をリストから選び出す。候補はSCAR-HとF2000、HK416にM4。それらの名称を書いて火器担当に渡し、銃と弾薬と手榴弾を受け取った。
「射撃演習場はどちらに?」
「この部屋の奥だ」
やはり顔の通りの性格だ。
奥へ進むとシューターレンジが姿を現す。近接戦闘用のキルハウスと全長300メートルのシューターレンジといった具合だ。早速モードレッドはSCARを構え、マガジンを装填する。狙うは300メートル先のマンターゲット。射撃姿勢に何不自由は無い。まず1発。300メートルで立射であっても7.62の弾丸は吸い込まれるようにマンターゲットへと命中する。M4系統の流れを継いだ銃だからこその扱いやすさか。しかし決して射撃性能のみでモードレッドは銃を決めるわけではない。続いてキルハウス。屋内戦闘を想定した模擬戦闘施設で近接戦闘における訓練を習熟できる施設だ。
再びマガジンを装填し、モードレッドは1つ目の小部屋へと突入する。同時に目標のチェック、敵は2人。流れるような銃捌きで2つの敵を仕留めていく。此処までは順調だ。続いて廊下に出る、左右を確認し的が無い事を確認し次の部屋へと移る。
「フラッシュバン!」
誰もいないが模擬演習の一環だ。閃光榴弾を投げる合図と共にピンを引き抜き部屋へ投合。破片と爆風の代わりに閃光と爆音が部屋一体を押し包む。前方を警戒して素早く突入し遮蔽物を確保する。ほとんどの人間がCQBを行う場合、必ず敵より速く銃を撃つという事にとらわれるが逆に考えれば返り討ちの可能性も非常に高い。ましてや一人。相手は、的は複数。ならば後先考えずに突撃するよりはトリッキーに動く方が近接戦としては有利な面もある。まずは一つ。トリガーを引き絞る。
「うん?」
的に当たった感触はあるが……妙だ。銃を操っているような感覚からほんの僅かだが銃本体に振り回される感覚。リコイルコントロールできずに照準がずれ、頭部分にあたるはずの弾丸は右胸部分を貫通した。あくまで些細なミスではある。すぐにペースを戻し攻撃を続行。手早く部屋を制圧していく。これでキルハウスはクリア。セーフティをかけてベンチへと座り込む。
「一瞬だけど、銃に振り回された」
録画しておいた先ほどの突入シーンをもう一度見返してみる。2つ目の部屋のシーン。まさしく突入してから相手を幻惑するように立ち回ったところだ。
「あ……」
――やっちまった。
全身から気恥ずかしさで汗が噴き出す。
これをプライスが見ていたら何て言うだろう。
今のはどう見ても些細なミスとは言い難いものだった。自分の視点からモノを見ても気づかないことがあるがほかの視点から見ると間違いに気づくとはこの事だ。何がいけなかったのかというと、トリッキーに動き過ぎたあまりに銃本体をしっかり肩付けしていなかった事だった。本来銃を肩付けしなければ敵を撃つことすらままららない。
モードレッドはその初歩的なミスを犯したのだ。CQBに集中するあまり。
「はいいいいい?」
それをやってしまったところでやり直せば済む話だ。
SCARを置いてHK416を手に取り再び挑戦。1つ目の部屋へと突入。先程と同じ要領で部屋を制圧していく。SCARに比べれば大分軽い。重心が真ん中のおかげで余計な調整をしなくて済む。1つ目の部屋の最後の的を制圧し廊下へと躍り出る。両サイドに敵はいない。そのままペースを崩さずに2つ目の部屋にフラッシュバンを投げ部屋を制圧。2回目のキルハウスもクリア。一度休憩ということでキルハウスから退出して射撃場右横の自販機へと向かう。
「ふう……」
HK416Cを扱ったときは上々だった。リコイルにも悩まされる事無く、的確な射撃が出来たことは良かったと見るべきだろう。とりあえずマウンテンデューを一杯。喉を潤して頭の中身を整理する。
SCARとHK416ならばどちらも扱いやすい普通の小銃といった印象を受ける。ストックやセレクターに多少の違いこそあれどすぐに順応できるレベルだ。モードレッドはM4を脇に置いて最後の小銃を手に取った。ブルハップと呼ばれる簡単に言えばマガジンがトリガーよりも後方に来るタイプの奇抜な小銃。とも言い難く、実際に扱ったメンバーによれば取り回しが良好とも聞く。
「何か前に見たアニメでこんな銃扱っている奴がいたな」
さて、誰だったかな。F2000を構えてベクトルを変える敵に立ち向かう……だった気がするな。それを扱っているのは中学生と、誰があんなものを好むのやら。
確かにアニメとは一緒でも、扱っているのは本物のF2000。一旦シューティングレンジにて構えてみる。
身体の部位の一つ一つに銃が密着し、ハンドガードを握る左手は吸い寄せられるように的確な位置で握りこまれる。慣れぬ形状であったがストレス無く構えられた。重心が身体の体幹部に近い為か重量はさほど感じられる事は無い。
その証拠にマンターゲットからぶれる事無く目標を捕らえ続けている。
「これなら行けるか?」
これまで数多くの訓練を重ねて来たからこそ分かる。どの銃を比べたとしても自分に合うものはこれしかない。
確信を胸に再びキルハウスへと突入。立ち上がったマンターゲットをコンマ1秒でヘッドショット、遮蔽物を乗り越えて二つ目のターゲットを撃ち抜いた。
――これならいける!!!
モードレッドは微かな笑みを浮かべキルハウスへの廊下へ躍り出る。この動作にも何ら支障をきたす事無くF2000は自分の思うように標的に弾痕を穿った。人質にはただの一つの弾丸も当たっていない。成果を確認せず彼女は最後の部屋へとフラッシュバンを投合し敵陣へと殴り込む。突貫力と反射神経と空間把握能力を最大限に駆使してターゲットを掃討。数舜遅れた排装音とマガジンの無機質な落下音が静寂の中に響いた。
「19秒か」
制圧時間を横目にまじまじと呟いた。ギャズとほぼ同じ制圧速度、あのキャップを被った隊員と同じ土俵まで近づいた。だが、一つだけ残念な事があると言えばそれがSASで生かされなかった事。せめて父親の糾弾さえなければ今頃はSASで初任務に就いていた頃合いだっただろう。どれだけ妄想に身を委ねて目を閉じたとしても、再び目を開けた時に見る光景は無機質な射撃場と仏頂面の係員のみ。今自分がいる場所はトライデント・セキュリティー社の射撃演習場なのだ。その事実は変わらない。
「そうだよな」
――オレの戦場は、ここなんだ。
そう決めつける事がモードレッドにとっての最善の策だった。
更新は多分テスト終了後……だといいなあ