Infinite Stratos Easy Day   作:キングオブ不死身さん

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繋がれる二人

俺は今、自分がどのような状況に置かれているかを理解できないでいた。

ここが、学校である。という事までは理解できる。確かに学校ではあるのだが、男子は自分を除いては誰もいない。何故こうなってしまったのか?理由は明白。

“男として、ISを操作できてしまった”からだ。

通常、ISは女性にしか操る事の出来ない兵器である。だが俺、織斑一夏を除いては。

もともとは入試の際にISを起動させてしまった事による入学なのだが…

それにしても、全方位が全員女子に囲まれて暮らすというのも、傍から見れば羨ましいことに見えるかもしれない。だが、男子が一人もいないというのは、気が滅入るものだ。

「これから俺、どう過ごしていけばいいんだ…?」

全方位からの視線に晒され、うなだれる一夏。背後からいきなり頭を叩かれた。

「痛っ」

反射的に顔を上げると、そこには彼の姉でありこのIS学園の教師である、織斑千冬が冷徹な眼差しを湛えて一夏を見つめる。

 

「お前の番だぞ、織斑。」

 

周囲を見回してみると、クラスの視線が一夏に集中している。

 

――ここでやるしかない。

 

一夏はゆっくりと立ち上がり、息を肺に送り込む。

 

「織斑一夏です。」

 

一瞬の沈黙がクラスを包む、彼の自己紹介の続きを今か今かと待ち続ける。

好きなもの、趣味、身長、どれをとっても女子高生には話題の種に出来る。

そんな情報を彼女たちは待ち望んでいたのだが…

 

「よろしくお願いします。」

 

あまりに唐突な終了に一同はポカンと首を傾げる。

だが、どうあがいても、どうあがいたとしても次の言葉は出てこない。

彼の自己紹介は終わったのである。

一年の中で最も重要な儀式は非常に簡潔な形で終了したのであった。

 

 

 

 

 

 

一夏は授業中にある女子に視線を寄せていた。

その少女はポニーテールで若干眼が釣りあがっており

その周囲には何者をも寄せ付けないかのような空気が張り巡らされていた。

窓から吹き込んだ風でポニーテールがふわりと揺れる。

かつての幼馴染の顔が彼の脳裏にはっきりと浮かぶ。

その横顔は彼にとっては到底忘れがたい者であった。

少女の名は篠之ノ箒。

 

「箒」

 

一夏は6年ぶりに会った幼馴染に一声掛ける。

 

「なんだ」

 

箒は一夏の顔を見るなりに顔を赤くして俯いてしまった。

だが、その口ぶりは6年前と変わらないままでいる。

 

「ちょっと…話があるんだ」

 

そういって彼はIS学園の屋上へ箒を連れ出した。

外には閑散とした空気が一夏と箒の周りを覆っていた。

 

「なあ箒。お前ずいぶんと変わったな」

 

口ぶりは確かに6年前と変わらないままに、だが箒の体つきを見ているとあの頃とはずいぶんと遠くに行ってしまったように感じられる。最も親しかった間柄。だったはずの少女は6年の時を経て再び織斑一夏の下へと姿を現した。

 

「お前のほうが変わったぞ。一夏」

 

それだけを口にすると箒は再び俯き加減の調子で遠くを眺めている。

 

「そうか…」

 

親友にそんな事を言われたのは初めてだ。自分は昔から一つの信念を掲げてこの道を歩いてきたのだ。しかし6年以来の親友にそれを指摘されるとどこが変わっているのだろうかと自分の腹の中に探りを入れてしまう。

 

「変わったというよりか、大人びた感じがするのだ。何となくだが」

 

「成程なぁ」

 

“大人びた。か…“

じゃああの自己紹介は何なんだと心のどこかで突っ込みたいところではあったがそこは箒の表情に免じて突っ込まないようにした。

確かにそう言われてみれば、彼女にとっては確かにそうなのかもしれない。

何より6年以来の再会であるから彼女にとってもどこか遠くへ行ってしまった感じがするのだろう。まるで二人を防弾ガラスが仕切っているかのような近く、しかし触れ合うことのできないもどかしさ。

 

「そうか…お前に会えて嬉しかった」

 

微かな微笑みを浮かべ箒は一夏へと向き直る。

「お前がとんだハプニングを起こさなければ、お前とここで再会する事も無かっただろう。

だから一夏。6年以来の友人の我儘を一つ聞いてくれるだろうか?」

 

その表情は確かに容姿の若干の違いこそ思いは同じだ。だからこそ、彼女は不器用なまでの宣言を風に乗せ、今伝えるのだ。

 

「私のそばにいてほしい」

 

それは不器用ながらも告白だった。それでも箒は伝えたかった。自分が好きだからという理由で。それに対して織斑一夏は箒の体を思いきり抱きしめた。まるで箒という存在を必死に繫ぎ止めているかのように。

 

「判ってる。だから俺は――」

 

彼の決意も徐々におぼろげたものから確固たる意志へと変容を遂げていく。

 

「お前を、必ず護ってみせる」

 

2人を隔てていたガラスが砕け散り織斑一夏は全身全霊をもって彼女の意志を迎え入れた。

6年の時を経て、篠ノ之箒のラヴストーリーはこうして完結した。

だがしかし、物語の本章はまだ始まりに過ぎない。

 

 

 

 

 

 




一夏と箒に関しては早い段階でくっつけるのが妥当だと判断しました。
そうすればのちのストーリーにも彼の意志の深みを持たせられると考えたからです。

あと読みにくいと感じたかたは感想欄にご指摘をお願いします。
ストーリーに関しても指摘も矛盾点も挙げていただけると助かります。
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