Infinite Stratos Easy Day   作:キングオブ不死身さん

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文字数がどうしても5000文字以上行かない。どうしたらいいだろう


Let on the Stage

IS学園

 

 

3時間目 ISの授業

 

箒の宣言を受け入れたのちの俺は胸が透く様な気分だった。

そんな有頂天な一夏を叩き落とすかのような一撃が頭頂部へと去来する。

 

「鼻の下を伸ばして、何を考えているかは容易に予想がつく」

 

襲撃者の正体は言うまでもなく我が姉、我が教師の織斑千冬。

当然の事かとでも言うかのようにヒットアンドアウェイの要領で素早く教壇へとついた。

 

「さてと、貴様らひよっこ共には少々酷かも知れんがそんな貴様らの喚き声など聞いている暇もない」

 

恒例の宣言。反論するものなど誰一人としていない。そんな者など存在しない。

 

「いいか、よく聞け。6月よりクラス対抗戦を執り行う。簡単に説明するがこれは模擬戦争だ。テーブルの上で行われる座学とは違う。今は知っての通りソヴィエト及びその衛星国と緊張状態が続いている事はお前たちも知っている事だろう」

 

歴史の教科書を開いた事のある者は『冷戦』という言葉はご存知の事だろう。1945年からそれは始まり、イギリスの時の首相チャーチルが鉄のカーテン発言を行った事によりそれは明確となった。初期は近隣諸国からの工作活動に始まり62年のキューバ危機以降冷戦体制はさらに悪化の一途を辿った。長いベトナム戦争、アフガン侵攻を経て2015年の今においてもそれは依然としてその体制は恐怖の均衡を保っている。

 

「いつ大規模な武力衝突が起きるとも限らん。備えあれば憂い無しだ。そこでソ連軍OMGとの戦闘に備えてクラス同士による模擬戦争を長野県松代市にある演習場にて実施する」

 

背筋にゾクリとした悪寒が駆け巡る。それは紛れもない恐怖だ。ソ連との戦争、大量のISと戦車旅団が東京を苦もなく蹂躙し、兵士は一人ひとりを情け容赦無く射殺する。そんな光景など後生見たくもない。それは他の生徒とて同じだろう。周囲を見れば皆同じ表情を浮かべている。

 

「それでだ。このクラスの指揮官を決めたい。自推他推は問わない」

 

「では、私は織斑一夏を推薦する」

 

凛とした声音に教室の空気が揺れる。その声の主は他でもない篠ノ之箒だ。

箒はふと一夏の表情から察したかの様に小さく微笑んで見せた。

 

「護るんだろう?」

 

一夏にだけ聞こえるように、届くように小さく。だが確実にそう語りかけた。

 

「ああ…」

 

箒の言いようも無い声音に何かが身体を駆け巡る。息が詰まりそうだ。まるで自分が何かに駆られて身動きも取れないままその気持ちだけが先行して行く様に言葉がこぼれ出た。

 

 

「成程、こいつを推薦するわけか…他はいるか?」

 

その時だった。後方から金髪を湛えた一人の女子がゆっくりと立ち上がる。

クラス中の女子の視線が一斉に彼女を捉える中、彼女はゆっくりと口を開く。

 

「私が参戦してもよろしくて?」

 

凛とした声音が一夏の耳孔を打ち、彼もその女子を見据えた。

 

「セシリア・オルコットか…噂は聞いている。自薦するのか」

 

鬼と呼ばれた教師は冷淡は目でその女子、セシリア・オルコットを見つめた。

教室に沈黙が覆う中彼女は再び口を開き一夏へと視線を向ける。

「改めまして、英国代表候補生のセシリア・オルコットと申します。以後お見知り置きを」

そう言って彼女はロングスカートを摘まんで淑女の礼節を取った。

それに応じて一夏も恭しくセシリアへとお辞儀し向き直る。

 

「なかなかいい目をしておりますわね。織斑一夏さん」

 

セシリアの目は一夏の深遠を読み取るかのように蒼い目は透き通っていた。

一夏はそれがどうもどこか気味悪いような、見透かされているような感覚で頭の中に悪寒が走る。

感情の赴くままにあの時は、護ってやると口にした。だからと言って額面通りに発した言葉を額面通りに行動に移せばどうなるかは自ずと知れよう。もしもその時、力量が自分に無かったらと一夏は心の中で自問する。

 

「ありがとう。セシリア」

 

一夏は一応の返答をセシリアへと投げた。セシリアも淡々としたお辞儀でそれを返す。

 

「ところで一夏さん。あなたは誰かを護れるほどの力はお有りでしょうか」

 

「セシリア…俺は護って見せる。自分が好きな人を自分が護れなくて何になる」

 

一夏は自分の意志を最大限に込めて目の前の貴族へと宣言する。だが一夏がそう言いかけた所で口篭ったのをセシリアは見逃さなかった。確かに今の言葉をそのままに受け止めれば一夏はその“意志”は固いものだと読み取れよう。しかし一夏は無力だ。セシリアにとって言ってしまえば一夏の人間像は『護る』という強迫観念に駆られて身動きが取れないそれに見えていた。だからこそ彼女は先程の箒の言葉を聞いて即座に一夏の表情を冷淡に見つめたのだ。

 

「さてと、二人か。クラスの指揮官になりたい奴は二人。それ以上はいない。ならば織斑、オルコット。逃げは通用せんぞ。指揮官決定戦を行うから後で教官室まで来るように」

 

鬼神の裁定が下る。賽は投げられた。両者の淀みの無い瞳にクラス中が沈黙する。

そして火蓋は開かれた。

 

 

 

教官室に先程呼び出された二人がじっと席を寄せて座っている。理由は明白。そこにいる存在が何よりも恐ろしいからに他ならない。織斑千冬はこの状況を想定内の事態と捉えていた。そもそも指揮官決定において推薦が重複する事など承知の上。ましてや相手は世界初のISを扱える男にして自分の弟でもある織斑一夏とイギリスの特殊舟艇部隊出身のセシリア・オルコット。

イレギュラーと最強クラスの特殊部隊出身の兵士を戦わせる事で2人の戦闘データーを取る機会においてはこの上ないだろう。

 

「さてと、二人に指揮官決定戦を行うといったな。まずはそこからだ。織斑。オルコットは専用機を所持している。その意味は理解できるな?」

 

「はい…一応は」

 

一夏の口より消極的な返事が漏れる。当然とも言えばそうだろう。このIS学園は名目こそ高校であるが実態は『通常戦闘行動並びに特殊作戦行動におけるISの戦闘技術を習得する事』を目的に創設された訓練学校なのだから。軍人でもない彼が『本来ならば』入学する事すら不可能なところを男でISが操縦可能な人材であるという理由だけで防衛省は彼をIS学園へとねじ込んだのだ。

 

「オルコット。お前の専用機を展開してみろ」

 

「イエス・マム」

 

二つ返事でセシリアは自らの剣を鞘から抜き放った。剣は淡い蒼の輝きを放ちセシリアの肢体へと装甲が圧着されていき、その右手にマクミラン対物ライフルを。周囲にはその兵器の代名詞たる装備を従える。それこそがセシリア・オルコットが掲げる剣。キネティック・ウェポンの概念実証機である「ブルー・ティアーズ」だった。蒼い雫の名前とはあまりに皮肉めいたものだとつくづく

織斑千冬は実感させられる。

 

「これが、セシリアの専用機なのか」

 

怖気ついた風も無く一夏はセシリアにそう言った。対してセシリアも特に気にかける素振りも無く一夏を一瞥した後に再び自らの剣を鞘へと収める。

 

「これでよろしいでしょうか。教官」

 

「ああ、ありがとう」

 

そして見つめる先は自らの弟。一夏は先程と同じく表情に変化は見られない。

 

「一夏。貴様には現在専用機を急ピッチで作り上げている。だが心配するな。まずは打鉄型練習機で基礎からお前を教えていく。専用機が出来次第そちらへの機種転換訓練と慣らしを行ってから指揮官決定戦に移る。両者、異存は無いな?」

 

セシリアと一夏の暫くの目配せの後、無言で二人は首肯した。異存もない。後悔も無い。後はせめて悔いの無い戦いとなればそれでも千冬にとっては満足だろう。二人が部屋より退出し、千冬は肩の荷が下りたかの様にほっと一息つき、コーヒーを口へと運ぶ。甘さがほんわりと口へと広がる。

ふと、デスクに置かれていた資料へ目を通す。

“そういえば…”

PMSCから一人入学するとIS学園に伝達が来たのがつい先日の事だった。あまりに突然の電報で副担任の山田先生は椅子から転げまわってコーヒーメーカーのコーヒーが飛散したのはお約束と見るべきか。重要なのはそこではない。PMSCから入学する事も特に異例ではない。最近でもPMSCがISを使い始めたし、それによって入学者も出てきたのも事実だ。厄介なのが入学者の氏名どころか性別すら把握させないでこの学校へと入学させようとしているところだ。差し出し主は『トライデント・セキュリティー社』ヨーロッパ方面を担当する民間軍事会社の一つで噂によれば

CIAと提携を結んでいる部署もあるとか無いとかで一時期話題にされていた事もある会社だ。

詰まる所、この要求は非常に厄介な案件と見て間違い無い。

素性も分からない相手には最大限の警戒を持って接せよ。その言葉を胸に再び千冬はコーヒーを注ぐのだった。

 

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