Infinite Stratos Easy Day   作:キングオブ不死身さん

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一難去ってもう一難

トライデントセキュリティー社 ブリュッセル支社 43階 指揮官執務室 午後4:30

 

 

ジークフリードの執務室の静寂を破るように呼び鈴が鳴り響いた。

 

「ああっ・・」

 

正直なところ、寝ているところに呼び鈴を鳴らされたとあってはたまったものではない。

彼は一刻も早くこの呼び鈴が鳴り止むのを待ちわびていた。

だが、呼び鈴は一向に鳴り止まず、彼は内心の苛立ちを抑えつつ受話器を手に取る。

 

「久しぶりだな。俺だ。ちょっと例の議案で国防総省から具体的な創設計画が整った」

 

耳に受話器を当てた瞬間、電話口の男はいきなり挨拶もせずに要件のみを突っ走った。

 

「CIAの古巣の閑古鳥がこの僻地に何の御用でしょうか?」

 

あまりの予想通りな展開にジークフリードの口から苦笑が漏れる。5年共に過ごしたCIA随一の古株にしてサングラスがよく似合う諜報員、ジェイソン・ハドソンの顔が脳裏にはっきりと浮かび上がったからだ。

 

国家特殊作戦グループ(National Joint Special Operations Group)の事だ。アレの一件でCIAの内部がかなり揉めてな。実行部隊をSADチームからあんたのSOU・FASTteamに移す事になったのだが…実はそれに関して、古巣から巣立ちして一営業部の指揮官となったお前さんに話が聞きたくてね」

 

「アレはこっちの人員をCIAに移し変える事で決まった話じゃなかったのか。それともまた別の途轍もなく長ったらしい名前の部隊に配属が決まるのか?」

 

「ああ、ところがどっこいそうは行かなくなった。何しろ上が何を考えているのかは元特殊工作チームのお前さんなら知っているだろう?保身に走るような連中ばかりだ。CIAにそっちの部隊を借りると証拠が残ってしまうのが嫌ならしい。どうにも、手柄を占めたい派閥と秘密主義者で大争いのようだがな。NATO軍の特殊作戦軍と合同で任務を遂行するような組織に出来上がるらしい。身内にはアメリカ特殊作戦軍(SOCOM)統合特殊作戦コマンド(JSOC)もいる。」

 

無言で受話器を置くジークフリード。もはや何も言うまい。言いたくもない。国家統合特殊作戦グループというまた一つ玩具が出来あがる。そのおもちゃの素晴らしいところはそれまでの玩具をすべてコンプリートすることで出来上がるというそんな仕様だ。それがメーカーならば子供心に響くだろうと採用するがこっちはそんな生易しい構造で出来上がっていない。第一、政治が必ず絡む。そこには彼の言う手柄を占めたい派閥が跳梁跋扈するのは目に見えている。装備も何かに統一しなくてはならないし、そして何より出撃させる部隊がその地形にあっているかどうかという事も重要になる。今だから言えるがSEALSを山岳地帯に出撃させてほぼ全滅の状態となったのはどう考えても彼らがその部隊の特性を把握していないとしか言いようがない。

 

「安心しろ、ハドソン。その先に待っているのはローン・サバイバー第2作目の映画化だ」

 

「やめろジーク。それは前線に立った者への最大級の侮辱だ」

 

明らかに先ほどとは違う語勢の怒気が入り混じる。それならば問題は無い。真摯にその作戦を受け止めているという意思の表れだ。ハドソンがジョークで返す時はさして気にも留めていない事が多い。ふとジークフリードは咥えていた煙草に火をつける。

 

「いや、そうなる。どう考えてもあのNATOと共同作戦をしたら必ず身内争いが起きる。それも自国の利益だ何だと難癖をつけてな。責任が及んだら即逃亡。そんな連中の下で戦わされる軍人が不憫で仕方が無い。そもそもその計画、指揮官は誰に決まったんだ?」

 

国家統合特殊作戦グループ。そんなご大層な組織にはお似合い指揮官は果ては武功を刻みたい無能な指揮官だろう。

 

「ウィルソン・マクレイヴン将軍だ。ホントはお前にしたかったがな」

 

ハドソンのそれを聞いてジークフリードの口から安堵の紫煙が漏れ出る。先ほどのひどく憔悴しきった表情に少しずつ光が返ってきた。

 

「それなら少しは安心した。特殊作戦畑出身なら、軋轢はそうそう出るまい。」

 

「だといいがな…ジーク。幸運を祈ってるよ」

 

「全くだ」

 

受話器を置いた後にジークフリードは先ほど送られてきたデーターを眺め見る。キーを叩いて2つ3つ情報を閲覧した後に煙草をごみ箱へと投げ捨てる。今回の一件で一つ、明らかになった事がある。どうやら俺たちはどうしようもない程の国家戦略に巻き込まれる事になりそうだ。

 

 

 

 

指揮官室の椅子にぐったりともたれかかっていると、再び電話のコール音が響く。一段落してまた災難。苛立つ気すら起こらなかった。反射的に受話器を掴み取ってそれに応じる。

 

「もしもし、トライデント・セキュリティーです。そちらの氏名をお願いできますか?」

 

「こんな時間に済まない。英国陸軍第22連隊のジョセフ・マクミラン中佐です」

 

いつもの軍産複合体からの電話だとジークフリードはそう確信していた。だが、今回は違う。ハドソンでも無い。よりによってスコットランド訛りの英国人から電話を頂くことになろうとは。

 

「ご用件は?」

 

英国随一の特殊部隊の司令官がこんな僻地に何の御用だ。とハドソンと同じフレーズを使いたかったがあくまで来客。接待程度のあいさつに留めておく。

 

「そちらに一人、警備部に入社を希望している人がおります」

 

警備部に入社と聞いてジークフリードは耳を傍立てる。特殊部隊が特殊部隊に入隊したいなど今時このご時世には相違ない人材だ。

 

「名前は、モードレッド・プライス・ペンドラゴン。階級は少尉。年齢は16歳だ」

 

マクミランのそれを聞いてジークフリードは先ほどの高揚感が急ピッチで落胆していくのを感じ取った。ああ、16か。その頃の年頃の娘なら若さでそんな道を目指す事もあるだろう。クリームヒルトに関しては完全な例外処置だが。

 

「それで、彼女が入隊を?」

 

「そういう事です。近々創設される部隊の編入に備えてそちらに配属をと思いましてな」

 

マクミランの言葉にジークフリードは納得した様子で頷く。国家統合特殊作戦グループの創設でどこの部隊もてんてこ舞いな状況であることは窺える。だがどうにも怪訝なのはモードレッドという少女を入隊させる必要があるのかという核心的な疑問だった。

 

「なぜ、その子をこちらに入隊させようと考えに?」

 

「主だった理由は彼女のリベンジマッチ。SASの選抜試験でトップクラスだった成績の子をそう簡単に有象無象にするわけにはいかない。まあ何とも言えないでしょうね」

 

電話越しの苦笑をジークフリードは冷徹な表情で受け止める。さして問題でも無いように。ごくありふれた形でそれに応じた。

 

「了解です。手配はしておきます。それでは」

 

事務的な口調で応対した後に再び受話器を置く。一難去って、また一難。どうやらまだまだ災難は続くようである。

 

 

 




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