変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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UA60000を越えたので番外話です。

ヤンデレといっても作者のイメージするヤンデレですので好みが分かれるかもしれません。

それでもよろしければ読んでください。

なお、本編のネタバレも含まれますので気をつけてください。






UA60000突破・番外話・ヤンデレイタコエンド

 

 

 

 

 いつ頃から彼のことが気になっていたのか。

 

 

 ふと、そんなことが頭をよぎる。

 

 彼の学年が入学してきた最初の頃は普通の男の子だと思っていた。

 それこそ、自分のような普通の人にはない力など知らない、ただの男の子だと思っていた。

 

 それが少し変わってきたのは彼らの学年が学校生活になれてきた頃。

 女性にとって男性の視線というのはどうしたって気づいてしまうもので、男性のチラ見は女性にとってのガン見とも言えるほどに気づくことができる。

 そのため、自分のことを見る男子生徒たちや他の先生たちがいることにもすぐに気がついた。

 そして、そんな男子生徒や先生たちがなにかと理由をつけて保健室に来ることも。

 

 正直に言えば大きな怪我でもないのに保健室に来るのはやめてほしかった。

 彼らがいるために本当に処置の必要な生徒が入ってこれないことが時たまあったのだ。

 

 そんな日々が続いていたある日、彼は膝から血を流しながら保健室に来た。

 彼が言うには体育の授業で思いきり転んだとのことだったが、そのときの私は彼も他の生徒たちと同じように保健室に来るために怪我をしたのではないかと思ってしまっていた。

 しかし、彼は怪我の処置が終わるとお礼を言ってアッサリと保健室から出ていってしまったのだ。

 あまりにもアッサリと保健室から出ていってしまった彼の姿が私の中でとても強く印象に残っていた。

 

 それからも彼はたまに怪我をして保健室に来るものの、他の生徒たちのように頻繁に保健室に来ることはなかった。

 

 

 そして、彼のことが決定的に気になり始めたのは彼に霊力についての話をするために家に招いたときだった。

 霊力についての話をする前に私の中にいるキツネが彼のことを気に入り、その感情が私に流れ込んできたのだ。

 そのときはキツネの感情だけだと思っていたのだが、時間が経ってしばらくしてからも彼のことを見るたびに私の中の奥の方でなにかが(うず)くような感覚があった。

 私の中の奥の方で疼くような感覚、これが“恋”という感情だと知ったのはそれから少し後のことだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「竜、なんや体調悪そうやけど大丈夫なんか?」

「んー?ああ、なんか朝からダルくてな・・・・・・。寝不足とかではないはずなんだが・・・・・・」

 

 

 どこかフラフラとした様子の竜に茜が声をかける。

 竜の顔色などは悪くなさそうに見えるのだが、それでもどこかぼんやりとしているように見えた。

 

 

「体調が悪いなら保健室に行ってきたらどう?」

「そうだな・・・・・・。ちょっと行ってくるよ・・・・・・」

「キツそうやし、うちらも付き添うで」

 

 

 あまりにも竜の体調が悪そうに見え、葵は竜に保健室に行ってはどうかと提案する。

 葵の言葉に竜は少しだけ考え、うなずいて保健室に向かうことに決めた。

 そして、茜と葵の付き添いのもと、竜は教室を出た。

 

 

「にしてもほんまにどうしたんやろうね?ここんとこずっとそんな調子やない?」

「うんうん。それで今日は特にひどく見えるよね」

「そうなんだよな・・・・・・。とくに身に覚えもないんだが・・・・・・」

 

 

 どことなくフラフラとした足取りの竜の両手を茜と葵がそれぞれ取りながら保健室に向かう。

 保健室に向かって歩きながら茜はここ最近の竜の体調を思い出しながら尋ねる。

 茜の言葉に葵も同意してうなずく。

 

 茜の言うとおり、ここ最近の竜はどこか体調が悪そうで、普段とは少し様子の違う竜にアイ先生やクラスメイトたちも不思議そうにしていた。

 茜の言葉にうなずきながら竜は体調が悪くなっていることに対してとくに身に覚えがないことを答える。

 

 そして、竜たちは保健室に到着した。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「失礼します。イタコ先生はいますか?」

「体調不良を搬送してきたでー」

「あー・・・・・・、失礼しまーす・・・・・・」

 

 

 保健室の扉を開け、茜たちは保健室に入る。

 茜たちが保健室に入ると、扉を開けた音に気がついたイタコ先生がちょうど振り向いていた。

 

 

「あらまぁ、公住くんが体調不良ですの?」

「はい。ここのところ最近も体調は悪そうだったんですけど、今日はとくによくないように見えたので保健室にお姉ちゃんと私が付き添いで来ました」

「竜のこと、お願いするで!」

 

 

 フラフラとした様子の竜に気がついたイタコ先生は少しだけ驚いたような表情になりながら葵からどういった用件で保健室に来たのかを聞く。

 竜も軽く説明しようとしていたのだが、保健室に着いてからとくに体調が悪くなったのか、しゃべることすら辛いような状態になってしまっていた。

 そのことにいち早く気がついた茜は、イタコ先生に確認をとる前に素早く竜のことをベッドに寝かせる。

 そして竜をベッドに寝かせた茜は汗をぬぐうような動きをしてからイタコ先生に向かって親指を立ててキメ顔をした。

 

 普通であれば勝手に保健室のベッドに寝かせていることをイタコ先生は注意をしなければいけないのだが、竜が辛そうにしているのはハッキリと分かっていたので目をつむることにした。

 

 

「それじゃあ、竜くんのことをお願いします」

「ええ、もちろんですわ。そろそろ授業も始まりますから、廊下は走らないように戻りなさいな」

 

 

 イタコ先生に頭を下げ、茜と葵は保健室を後にした。

 2人が保健室から出ていき、姿が見えなくなるところまで確認したイタコ先生は素早く保健室に戻ると静かに保健室の扉の鍵を閉める。

 それと同時に竜と一緒にいるついなに気づかれないように術を発動する。

 

 

「イタコ、ご主人は大丈夫なんかなぁ?」

「ええ、私が見ているんですもの。すぐに良くなりますわ」

 

 

 イタコ先生がベッドに横になっている竜の近くによると、竜の制服のポケットから出てきたついなが不安そうにしながら尋ねてきた。

 ついなの言葉にイタコ先生はニコリと微笑みながら答える。

 イタコ先生の言葉についなは少しだけ安心したのか、竜の頬を優しく撫でてベッドの枕の近くに座り込んだ。

 

 

「それにしても・・・・・・・・・・・・。ここまで耐えるとは思いませんでしたわ・・・・・・」

「くー・・・・・・」

 

 

 竜の横になっているベッドから離れ、自分の机の上の書類整理を始めながらイタコ先生はボソリと小さく呟く。

 イタコ先生の言葉にキツネもひょこりと顔を出して同意するようにうなずいた。

 

 

「ですが、それも今日までですわね。彼を守っている子たちもすでに手は打ちましたし、あとはついなさんだけ。そうすれば・・・・・・、ふふふ・・・・・・」

 

 

 書類の整理をしながらイタコ先生は人が見れば見惚れそうな笑みを浮かべる。

 そして、イタコ先生は笑みを浮かべながらチラリと竜の横になっているベッドに視線を向けた。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 竜が保健室に着いてからどれ程の時間が経っただろうか。

 保健室のベッドの上で竜はパチリと目を開く。

 多少なりとも眠ったことで回復したのか、教室にいたときよりも竜の体調は良くなっていた。

 ベッドの上で体を起こし、保健室にいるであろうイタコ先生を探す。

 

 

「ああ、起きましたのね」

「あ、はい。今は・・・・・・」

「今は午後の授業中ですわ。お腹は空いていないかしら?」

 

 

 竜が起きたことに気がつき、イタコ先生は竜に声をかける。

 自分がどれぐらい眠っていたのかがきになり、竜はイタコ先生に尋ねた。

 

 イタコ先生の言葉に竜は驚きつつ、自分のお腹が空腹をうったえていることに気がつく。

 それと同時に竜の腹からぐぅ~という音が聞こえてきた。

 

 

「えっと、空いています・・・・・・」

「あらあら、元気な音ですわね。お昼休みに弦巻さんが持ってきてくれたお弁当がありますから、そちらを食べると良いですわ」

 

 

 竜のお腹から聞こえてきた音にイタコ先生はクスクスと笑いながら1つのお弁当箱を差し出す。

 お腹の音をイタコ先生に聞かれたことに竜は恥ずかしさを感じつつ、イタコ先生からお弁当を受け取った。

 

 

「いつも弦巻さんにお昼を作ってもらっているんですか?」

「ええ、まぁ、申し訳ないとは思っているんですけどね」

 

 

 竜がマキの作ったお弁当を食べているのを見てイタコ先生は尋ねる。

 イタコ先生の言葉に竜はお弁当を食べながら答えた。

 

 空腹だったこともあり、竜は一気にマキの作ってくれたお弁当を食べ終わる。

 そして、竜が食べ終わったタイミングでついながお茶を差し出してきた。

 

 

「ご主人の体調がよくなったみたいでひと安心や」

「そうですわね。でも、念のためにもう少し休んでいくと良いですわ」

「はい、そうさせてもらいます」

 

 

 ついなからお茶をもらい、竜は一息をつく。

 眠ったお陰で体調は回復したようだが、それでも万全というわけではないので念のためにまだ寝ているようにイタコ先生は言う。

 イタコ先生の言葉に竜はベッドに横になった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 時間は進み、ベッドで寝ていた竜は違和感を感じて目を覚ました。

 目を開いて最初に気づくのは保健室の暗さ。

 そして続いて感じるのはどことなく冷えた空気だ。

 

 今の時期はたしかにやや冷えを感じる時期ではあるのだが、それでもいま竜が感じている冷えた空気はそれとは違ったもののように感じられた。

 

 

「イタコ先生・・・・・・?ついな・・・・・・?」

 

 

 ベッドから起き上がり、竜は寝る前にいたはずの2人の名前を呼ぶ。

 しかし竜の呼び掛けに答える声は聞こえず、冷えた空気も合わさっていままでに感じたことのないほどの静けさを感じられた。

 

 

「どうなっているんだ・・・・・・?」

 

 

 いきなりの異常事態に竜は周囲を警戒しながら保健室から顔を出した。

 保健室の外も中と同じように暗く、一切の音が聞こえなかった。

 まるで自分以外に生き物がいないかのような事態に竜は表情を強張らせながら廊下を歩いていく。

 

 教室、図書室、職員室、中庭、屋上。

 

 思いつく限りの校内を歩いて調べてみたが、そのどこにも人の姿はなかった。

 そして、竜は落ち着いて考えるために保健室に一旦戻ることに決めた。

 

 

「・・・・・・ふぅ。落ち着け。見た限りで校内に人の姿はなし。それと中庭に梅の木はあったがひめとみことはいないみたいだったな」

 

 

 ここで混乱してしまっても事態は解決しない。

 それが分かっているからこそ竜は発狂しそうな感情を無理矢理押さえ込んで状況の整理をする。

 

 

「とにかく、落ち着いて冷静に行動しよう」

 

 

 保健室に戻る際に自販機で買ったジュースを飲み、竜はもう一度校内を探索することに決めた。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

『ここにもなにもない、か・・・・・・』

「ふふふふ・・・・・・」

 

 

 月明かりの差し込む自室でイタコ先生は笑みを浮かべる。

 イタコ先生が見ているのは1つの鏡。

 その鏡には竜の姿が映り込んでいた。

 

 

「ああ、ああ・・・・・・。怖がりながらも探索をするその表情が。脱出できることを信じているその表情が。とても、とてもとても・・・・・・愛しいですわ」

 

 

 鏡に映る竜を撫でながらイタコ先生は艶かしい声で囁く。

 その吐息は熱を帯びているかのように熱く、嬉しそうに竜の姿を見ながら自身の指を軽く噛んでいた。

 

 

「はぁ、はぁ・・・・・・。公住くん、いいえ、旦那さま(竜くん)。あなたの感情、表情、肉体、精神。その全ては私の、“私たち”のものですわ。だから、安心してくださいませ?心が壊れても、狂ってしまっても“私たち”はずっと旦那さま(竜くん)のことを愛し続けますから・・・・・・。うふふふふ・・・・・・」

 

 

 熱く、荒い吐息を吐きながらイタコ先生は自らの秘所に手を伸ばしていく。

 そして、イタコ先生の部屋から水音のようなものと艷声が聞こえてくるのだった。

 

 

 

 

 しばらくして、1人の男子生徒の捜索願いが出されるのだが、その行方は依然として掴めないままだったらしい・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰のヤンデレが読みたいですか? その7

  • 弦巻マキ(母親が死んでいる世界)
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  • 役ついな
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