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4人で会話をしながら竜たちは学校に向かう。
会話の内容は基本的には“DEAD BY DAYLIGHT”のことばかりだが、実際に映像を見ているわけではないので葵もそこまで怖がらずに会話に参加できていた。
「そういえば気になったんやけど、竜とゆかりさんは一緒に登校しとるんか?」
「そうだな。最初は偶然だったけど、ここのところはだいたい一緒になってるな」
ふと思い出したように茜は尋ねる。
茜の質問に竜は頷いて肯定する。
一番最初は偶然だったが、竜とゆかりはいつの間にか一緒に登校するようになっていた。
「ええ、私の出る時間と竜くんの出る時間が偶然一緒みたいで」
「・・・・・・本当に偶然なのかな?」
ゆかりの言葉に葵は小さく呟く。
葵の呟きが聞こえたのか、ゆかりはソッと葵から顔を逸らした。
「まぁ、ゆかりさんが時間を見計らって家を出てるのとかは別にええわ」
「いえ、ですから偶然で・・・・・・」
「 別 に え え わ 。葵~、うちらも次からこのくらいの時間に出ようや」
「そうだね。ボクも竜くんと一緒に登校できたら嬉しいし」
ゆかりの反論を断ち切って茜は葵に提案する。
茜の提案に葵は嬉しそうに頷いた。
茜に言葉を断ち切られたゆかりは少しだけ悲しそうな表情を浮かべる。
そんな3人のやり取りに竜は苦笑いを浮かべるのだった。
「あ、みんなおはよー!」
「マキさん、おはようございます」
「おう、おはよう」
「おはようや、マキマキ」
「おはよう、マキさん」
会話をしながら歩いていたので、いつの間にか竜たちは校門に到着していた。
校門に着くと竜たちの姿を見つけたマキが手を振りながら駆け寄ってくる。
駆けるマキの姿にゆかりはSAN値を削られつつ、挨拶を返し、竜は駆け寄ってくるマキから視線をやや上に固定しながらマキに手をあげて応えた。
「今日はみんなで登校してきたんだねー」
「せやで。今日はたまたま早くに家を出てなぁ」
「そういえばいつもはもう少し遅いですよね」
4人が揃って登校してきた姿にマキは羨ましそうに呟く。
マキの言葉にゆかりは茜と葵が普段より早く登校していることに気づいた。
いつもであればもう少しあとになってから教室に入ってきているはずなので、そう考えると今日はそこそこに早い時間に登校していると言えるだろう。
「あー、今日は珍しく葵がスッと起きてくれてなぁ」
「わーッ!わーッ!お姉ちゃんなにを言ってるの?!」
ゆかりの言葉に茜はいつもより早く登校できた理由を言う。
茜の暴露に葵は思わず茜の口を押さえようと手を伸ばすが、ヒラリと茜に避けられてしまった。
「茜じゃなくて葵なのか」
「葵さん、寝起きが悪いんですか?」
「葵ちゃんはスッキリと起きてそうなイメージだったけどなー」
茜の言葉に3人は意外そうな表情を浮かべながら葵を見る。
3人から視線を向けられ、葵は恥ずかしそうにうつむいてしまう。
正直なところ、いつも登校する時間が少し遅いのは茜が寝坊しているからだと思っていたため、茜の言葉は本当に意外だったのだ。
「みんながうちのことをどう思ってるのかは分かったわ。うちはお弁当を作るために早めに起きとるからな?」
ポカポカと軽く竜を叩きながら茜は言うが、茜と葵の外での様子を考えればそう思われても仕方がないだろう。
片や、元気に動きまわって勉強は少し苦手な姉。
片や、おとなしく勉強のできる優等生な妹。
家の外での2人はおおむねこのような評価なため、どちらが寝坊しそうかと問われれば答えはほぼ1つしか出ない。
3人の反応から、自分がどう思われていたのかを理解した茜は不満そうに頬を膨らませるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ