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自分のことを寝坊するような人間だと思われていたことが不満な茜は一番近くにいた竜のことをポカポカと叩く。
そして竜を叩く茜のことを、寝坊をしているのが自分だとばらされた葵がペチペチと叩く。
3人が並んで隣の人間のことを叩くというよく分からない光景が教室に向かう廊下で起きていた。
「そういえばマキは昨日モンハンを始めたんだっけ?どこまでできたんだ?」
「えっとねー、大きなモンスターの背中から降りて大きなトカゲから逃げて前線基地って所にまで進んだよ」
ポカポカと叩いてくる茜の腕を防ぎながら竜はマキに尋ねる。
攻撃を防ぐ竜に茜は少しだけフェイントを織り混ぜながら攻撃を繰り出していった。
なお、葵から茜への攻撃は続いており、その攻撃はすべて茜に当たっている。
3人の様子にマキは苦笑しながらどこまで進んだのかを答えた。
マキの言う大きなモンスターとは開幕にハンターの乗る船にぶつかってくる超大型のモンスター、ゾラ・マグダラオスのことだろう。
ついでに言うなら、大きなトカゲとは最初に現れて別のモンスターにボコボコにされる黄色のモンスター、ドスジャグラスのことだ。
「というかモンハンのキャラクター作成の項目さぁ、細かすぎじゃない?」
「こだわる人はかなり作り込めるからな」
「マキさんも納得がいくまで作り直したんですか?」
モンハンのキャラクター作成の項目の多さを思いだしたのか、マキは少しだけ疲れたような表情になる。
マキの様子からキャラクター作成でかなりの時間を使ったらしいということがうかがえた。
「うーん、さすがに時間がかかりすぎるからデフォルトのやつから軽く手を加える程度にしたよ」
「まぁ、一番無難な手やな」
「一番失敗しないで簡単にできる方法だったよね」
さすがに何度もキャラクター作成、ムービー、データ削除を繰り返すのは大変だと理解したのか、マキは一番確実な方法でキャラクター作成をしたようだ。
マキの答えに茜と葵はそれぞれ攻撃をするのをやめて頷く。
そして、5人は教室に到着した。
◇ ◇ ◇
時間は進んで、昼休み。
チャイムが鳴るのに合わせて竜はお昼のパンを取り出した。
それに合わせて竜の近くに茜、葵、ゆかり、マキがお弁当を片手に集まってくる。
「あれ、竜くん。パンの量が昨日よりも少なくない?」
「ほんまや。買い忘れたんか?」
竜の取り出したパンの量が少ないことに気がついた葵と茜は首をかしげて尋ねる。
2人の言葉にゆかりとマキも気がついたのか、同じように不思議そうに竜を見る。
「ああ、昨日ちょっと金を使いすぎてな。しばらくは節約だよ」
4人に自身の手もとを見られながら特に隠すことでもないため、竜はお昼のパンの量が少ない理由を話す。
竜の言葉に4人は納得したのか、なるほどといった様子で頷いた。
「竜せんぱーい!お昼ご飯を食べましょー!」
「・・・・・・よくよく考えると先輩の教室に躊躇なく入ってくるってスゴいよな」
「せやね」
「ボクには無理かなぁ・・・・・・」
元気に教室の扉を開けて現れたあかりの姿を確認し、竜はポツリと呟く。
竜の呟きが聞こえたのか茜は同意するように頷いた。
教室に入ってきたあかりは竜の近くの机を引っ張って寄せ、大きな重箱をデン!と置く。
そして、重箱を置いた際にそこそこに大きな音がなったため、葵が少しだけ驚いて跳び跳ねたのを竜たちはしっかりと目撃していた。
「やっぱりスゴい量だよな。食費とかどうなってるんだ?」
「えっとですね、1度に大量に仕入れているから単価としては安く済んでるらしいですよ。それにお父さんなんて私よりも食べますから」
「え、これより多いの・・・・・・?」
「これは、一般家庭では絶対に食費を用意できませんね・・・・・・」
ただでさえあかりの食べる量は多いのに父親はさらに食べるとあかりは言う。
あかりの口から出てきた衝撃の事実に、竜たちはお昼ご飯を食べ始めるあかりのことを唖然と見るのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ