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パンの量が少なかった竜は早々に食べ終え、重箱のお弁当を食べているあかりをチラリと見る。
あかりの体は太いわけではなく、むしろ一部を除いて細めでどこにその食べたものが行っているのかが気になるほどだ。
「あ、そうだ。なぁ、なんかいいバイトとか知らないか?」
「バイト、ですか?」
「ふぁんひゃ、ふぁひとふるんふぁ?」
「お姉ちゃん、食べ物を咥えながらしゃべらないでよ・・・・・・」
竜はふとバイトをしようと考えていたことを思い出して茜、葵、ゆかり、マキ、あかりの5人に尋ねる。
竜の言葉に2番目に食べ終わっていたゆかりは不思議そうに聞き返す。
茜も同じように尋ねようとしていたが、口にエビフライを咥えていたためにちゃんとした言葉になっておらず、茜以外の全員が首をかしげた。
「・・・・・・・・・・・・なんて?」
「えっと、たぶんだけど『なんや、バイトするんか?』って言ったんじゃないかな?」
茜がなんと言ったのか分からず、竜は首をかしげながら聞き返した。
竜の言葉になんとか茜の言葉を理解できたらしい葵が答える。
どうやら葵の推測は当たっていたようで、葵の隣で茜がエビフライをモグモグと食べながら頷いていた。
「んぐ・・・・・・ごくん。んで、なんで急にバイトなんや?」
「いや、もう少し自由に使える金が欲しくなってな」
エビフライをしっかりと尻尾まで食べてから茜は竜に尋ねる。
茜の言葉に竜は頬を軽く掻きながらバイトを始めようと思った理由を答えた。
“DEAD BY DAYLIGHT”とプレイステーションストアカードを買ったために少しばかり金欠気味なことも理由なのだが、その辺りは別に言う必要はないだろうと竜は判断した。
「欲しいものとかを考えるとお金はいくらあっても足りませんからね」
「モグモグ、モグモグ・・・・・・ごくん。でしたら、うちの系列のどこかでバイトを探しますか?」
「
口に含んでいたものを飲み込んでからあかりは提案をする。
どんな人間でも知っているほどの大きな会社、紲星グループ。
その仕事の種類は多岐にわたっており、街を歩けば紲星グループ関連のものが最低でも10個は見つかるほどだ。
そんな大きな会社の系列のバイトと言われればまともに仕事ができるのかすら不安になってしまう。
「給料は多そうやけど、その分要求される技術とかも厳しそうなイメージはあるなぁ」
「そういえばこの校舎も紲星グループが作ったんじゃなかったっけ?」
「たしかそのはずですね。入学したときに校長先生に挨拶されましたし」
「ま、まぁ、どんなのがあるか分からないし。一旦保留で頼むわ」
葵が思い出したように言うと、あかりは頷きながら肯定した。
しかも校長先生が挨拶したとなれば確定で間違いはないだろう。
そんな大きな会社である紲星グループのバイト。
それも社長の娘であるあかりからの紹介となればプレッシャーがとてつもないものになってしまう。
竜はあかりの紹介でバイトをした場合の未来を考えてしまい、苦笑いを浮かべながら答えるのだった。
「ん~・・・・・・。なんだったらうちで働いてみる?」
「マキの所でか?」
少しだけ考える仕草をしていたマキが提案をする。
マキの提案が意外だったのか、竜以外の全員は驚いた表情でマキを見ていた。
「うん。といってもお父さんに聞いてみないと分からないけどね」
「ふむ・・・・・・。知ってる所ならまだ働きやすい、か?放課後に聞きに行ってもいいか?」
「あ、でしたら私も行きます。紅茶が飲みたい気分なので」
「うちも行くでー」
「ボクも行くよ」
「マキ先輩のお家はなにかお店をやってるんですか?」
放課後にバイトの話を聞くためにマキの家でやっている喫茶店“cafe Maki”に向かうことを決めると、ゆかりたちも一緒に向かうと言い出した。
唯一マキの家が喫茶店をやっていると知らないあかりだけが不思議そうに首をかしげるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ