変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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第90話

 

 

 

 

 竜が喫茶店“cafe Maki”で働くことが決まり、あかりもパフェを食べ終えた帰り道。

 竜たちは5人は会話をしながら歩いていた。

 

 

「とまぁ、とりあえずは仕事に慣れることが最優先かな」

「やはりマキさんのお父さんは相変わらずなんですね」

 

 

 マキの父親の出した“cafe Maki”で働くための条件を竜から聞き、ゆかりたちは苦笑する。

 そこでふと思い出したように竜はあかりを見た。

 

 

「そういや普通に一緒に歩いてるけどあかりの家ってどこなんだ?場合によっては送るけど・・・・・・」

「そういえばそうやな」

「自然に帰ってたからぜんぜん気づいてなかったよ」

 

 

 竜の言葉にゆかりたちもあかりの家の場所を知らないことを思い出した。

 そして、4人の視線があかりに集まる。

 

 

「私の家ですか?でしたらこのまま一緒で大丈夫ですよ」

「そうなのか?」

「へぇ、あかりもおんなじ道なんやな」

「今まで会ったことはなかったので意外ですね」

 

 

 あかりの言葉に竜たちは少しだけ驚いた表情になる。

 まぁ、今まで普通に通ってきて見かけたこともなかったので、同じだということが本当に意外だったのだ。

 3人が驚く中、葵だけは考えるような表情になりながらあかりをチラリと見る。

 

 

「・・・・・・・・・・・・絶対にあの家だ」

「うん?葵、なんか言うた?」

「ううん、なんでもないよ。お姉ちゃん」

 

 

 あることに思い至った葵はポツリと呟く。

 葵がなにかを呟いたことに気がついたのか、茜は首をかしげながら葵に尋ねる。

 茜の言葉に葵は首を横に降って誤魔化した。

 

 

「ゆかり先輩たちはどの辺りに住んでるんですか?」

「私はまだ少し先の“清花荘”に住んでますよ」

「うちと葵もやな」

「スーパーも近いから立地は本当に良いよね」

 

 

 自分だけ聞かれたことが気になったのか、あかりはゆかりたちがどこに住んでいるのかを尋ねる。

 あかりに尋ねられ、特に隠す意味もないのでゆかりたちは普通に自分たちの住んでいる場所を答えた。

 

 

「ああ、あそこだったんですね。管理人のセイカさんも良い人ですし」

「お、なんや知っとるんか?」

「ええ、まぁ、“清花荘”を管理している管理人のセイカさんってもともとは紲星グループの社員だったんですよ」

「え?じゃあ、なんで“清花荘”の管理人をやってるの?」

「どう考えても社員の方が給料とかも良さそうですよね?」

 

 

 “清花荘”の名前を聞いたあかりは頷きながら呟く。

 あかりの呟きに茜が反応し、不思議そうに尋ねた。

 

 “清花荘”の管理人である京町セイカ。

 彼女の驚きの経歴にゆかりたちは驚いてあかりに詰め寄ってしまう。

 

 アパートの管理人と超大手の企業の社員。

 どちらの方が収入が良く、安定した職種かと尋ねられたら答えは聞くまでもないはずだ。

 

 

「ええと、その辺りはお父さんと話して決めたらしくて私もそこまで詳しくは知らないんですよ」

「なんや、そうなんか」

「でも、セイカさんが紲星グループで働いていたってのは本当にビックリしたね」

「一応、今でもうちに席は残しているらしいので本当に優秀だったんだと思いますよ」

 

 

 思わぬところからの思わぬ情報に驚きつつ、竜たちは竜の家の前に到着した。

 そして、ここであかりが立ち止まり、竜の家の向かいの家に向かっていった。

 

 

「それでは、また明日です!」

「おう!・・・・・・って、ちょい待ちい?!」

「・・・・・・え、そこがあかりさんの家だったんですか?!」

 

 

 手をあげて家の中へと入ろうとするあかりに思わず茜とゆかりはツッコミをいれる。

 あまりにも自然に家に入ろうとしていたため、状況を理解するのにほんの少しだけ時間をくってしまっていた。

 

 

「やっぱり、そうだったんだ・・・・・・」

「葵は気づいてたのか?」

「まぁ・・・・・・、工事の幕を見たときから、ね」

 

 

 そこまで驚いておらず、むしろ納得したような表情の葵に竜は尋ねる。

 竜の言葉に葵は乾いた笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰のヤンデレが読みたいですか? その16

  • 佐藤ささら
  • 鈴木つづみ

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