変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

11 / 620



UA70000を越えたので番外話です。

ヤンデレといっても作者のイメージするヤンデレですので好みが分かれるかもしれません。

それでもよろしければ読んでください。

なお、本編のネタバレも含まれますので気をつけてください。





UA70000突破・番外話・ヤンデレずん子エンド

 

 

 

 

 生徒会長。

 

 私がその立場になったのは周りから推薦されたからという理由もあったのだが、それ以外にもう1つ理由があった。

 

 私には姉と妹がそれぞれいて、どちらもとても自慢の存在だ。

 でも、2人と比べて私には自信の持てるものがなにもなかった。

 

 姉であるイタコ姉さまは自身の身に九尾のキツネを宿すことのできるほどの器を。

 

 妹であるきりたんは年齢に見合わぬほどに強大な霊力とそれを扱うだけの技術を。

 

 2人と比べて私はそれほど多くはない霊力しか持っていなかった。

 しかも私にできることといえば“霊視”や簡易的な“結界”を張ったりする程度。

 一応、得意なことになる弓もイタコ姉さまときりたんの“霊術”による徐霊と比べてしまえばほとんど効果の無いようなものだった。

 

 だから、私はいつの間にか私にしかできないことを、私のことを見てくれる人を探していたのだと思う。

 東北家の三姉妹の中のイタコ姉さまでも、きりたんでもなく、東北ずん子である私のことを見てくれる人を・・・・・・。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 竜たちの通っている学校の廊下。

 竜は教室でアイ先生に頼まれた紙の山を生徒会室に運んでいた。

 最初はついなも手伝おうとしていたのだが、ついなが手伝ってしまうと空中に浮かぶ紙の山か、部外者が校内に侵入しているという騒ぎになってしまうため、手伝うことができていなかった。

 

 

「うーっし・・・・・・、生徒会室にとうちゃーく。いな、扉を開けてもらっていいか?」

「了解や。んっしょ」

 

 

 竜の言葉についなは竜の制服のポケットから飛び出してもとの大きさに戻る。

 そして、生徒会室に入れるように扉を開けた。

 

 竜が生徒会室に入ると、生徒会室の中には1人しか人がいなかった。

 

 

「あら。公住くん、なにか生徒会に用事かしら?」

「あ、えっと、アイ先生に頼まれてこれを運んできました」

 

 

 生徒会室にいた人、東北ずん子は扉の開いた音で手元の書類から顔をあげて竜に声をかけた。

 ずん子の言葉に竜は手に持っている紙の山を見せながら答える。

 

 ちなみについなは扉を開けた後にすぐにまた小さくなって竜の制服のポケットに戻っていた。

 

 

「そうだったのね。その紙ならそっちの机の上に置いておいてもらえるかしら」

「ここですね。んっ、しょと・・・・・・。ふぅ・・・・・・」

 

 

 竜の持っている紙の山を見てずん子は近くにある机の上に置くように指示する。

 ずん子の言葉に竜は机の上に紙の山を置き、背中を伸ばすように体を仰け反らせた。

 

 紙の山を置いた竜は生徒会室の中を見渡す。

 生徒会室の中はなにやら色々な紙で溢れており、それほど生徒会室に来たことのない竜でも分かるくらいに散らかっていた。

 

 

「そんなに忙しいんですか?」

「そうね。いまは色々とあって、ちょっとだけ忙しいですね。ああ、でも大丈夫よ。私は生徒会長なんだから」

 

 

 竜の言葉にずん子は両手でガッツポーズをしながら答えた。

 一見、元気でお茶目なような雰囲気を出しているずん子だが、その目の下にはうっすらとクマができており、竜の目にはそれが虚勢にしか見えなかった。

 

 

「・・・・・・手伝いますよ。まぁ、自分にできることはそんなにないとは思いますけど」

「そんな、気にしなくても大丈夫よ?」

 

 

 ずん子の顔をジッと見た竜は小さく息を吐いて近くの机に座る。

 一先ずできることとすれば書類をまとめることくらいだろうか。

 

 竜の言葉にずん子はパタパタと手を振りながら手伝わなくても大丈夫だと言う。

 

 

「自分がしたいからするんで。・・・・・・それと、目元をもう少し隠した方がいいですよ」

「え、あ?!・・・・・・ありがとう」

 

 

 ずん子の言葉に竜は書類を同じ種類ごとに分けながら答える。

 

 竜にとって、どう見ても疲れている様子の女の子を放っておくというのはどうにも落ち着かないものなので、こればかりは誰に言われても譲るつもりはなかった。

 

 竜の言葉にずん子は慌てて手鏡で自分の目元を見て、クマの存在に気がついた。

 そして、恥ずかしそうにしながら手伝いを始めた竜にお礼を言うのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 それから、竜は手が空いているときは生徒会の仕事を手伝うようになった。

 竜が手伝うようになったお陰なのかは不明だが、ずん子の目元からもクマは消え、余裕があるように見える。

 

 そして、竜が生徒会の仕事を手伝うようになって一番変わったことが1つある。

 

 

「公住くん、お姉さんとお昼ごはんを食べましょう」

「あら、生徒会長はまた来ましたね」

「というかここんとこ毎日やない?」

「なんか、頻度がおかしいよね?」

「んー・・・・・・。ていうかナチュラルにお姉さんって言っていることには誰もツッコまないの?」

 

 

 竜たちの教室の扉を開け、ずん子がお弁当を片手に現れた。

 ずん子が竜たちの教室に来るようになったのは竜が生徒会の手伝いをするようになってしばらくしてからのことで、いまでは基本的に毎回来るようになっていた。

 

 教室にやって来たずん子の姿にお昼ごはんを食べる準備をしていた茜たちは首をかしげながら呟く。

 

 逆にいえば教室に来て一緒にお昼ごはんを食べるようになった以外にとくに変化はなく。

 ずん子の行動は茜たちにとって不可解の一言につきていた。

 

 

「あ、そうだ。公住くん、ちょっと手伝ってほしいことがあるからお昼ごはんを食べ終わったら生徒会室に来てもらってもいいかしら?」

「手伝いですか?わかりました」

 

 

 お昼ごはんを食べる準備が終わり、早速お昼ごはんを食べようかというときにずん子は思い出したように竜に生徒会室に来てほしいということを言う。

 ずん子の言葉に竜はうなずき、お昼ごはんを食べはじめるのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 お昼ごはんを食べ終わり、ところ変わって生徒会室に竜とずん子はいた。

 ずん子からは手伝ってほしいとしか言われておらず、竜はなにを手伝うのかはまだ分かっていなかった。

 

 

「それで、手伝ってほしいことってなんですか?」

「えっと、その前に・・・・・・。(ふう)、それと(すい)

「な?!んえ・・・・・・?」

 

 

 ずん子の言っていた手伝ってほしいこととはなんなのか。

 それが気になった竜はずん子に尋ねた。

 竜の言葉にずん子は答えず、竜の制服のポケットに入っているついなに向けて“霊術”を使った。

 突然のずん子の行動についなは驚きの声をあげるが、すぐに眠りに落ちてしまう。

 

 

「なにを・・・・・・?!」

「ごめんなさいね?ちょっとだけ眠ってもらったの」

 

 

 ついなが眠ってしまったことに驚く竜にずん子はペロリと舌を出しながら謝る。

 さらにずん子は竜の体に抱きつき、その動きを封じてしまう。

 ずん子に抱きつかれた竜はずん子から香ってくる甘いような香りと、触れている体の柔らかさに思わず体を硬直させてしまった。

 

 

(さい)

「あ・・・・・・」

 

 

 耳元で告げられた言葉を竜が認識した瞬間、竜の意識は闇の中に落ちていってしまった。

 しかし、意識はないはずの竜の体は倒れずにそのまま立っている。

 竜に“霊術”をかけたずん子は満足そうにうなずきながら竜の体から離れる。

 

 

「ふふふ。それじゃあ、いつも(●●●)みたいにお願いね?」

 

 

 ずん子の言葉に竜は生徒会長の椅子に座る。

 普通に動いているように見えるのだが、その動きはどこかぎこちなく、まるで操り人形のようにも見えた。

 竜が椅子に座ったのを確認したずん子は生徒会室の扉の鍵を閉め、竜のもとに向かう。

 

 

「お姉ちゃん、頑張ったよ?いっぱい、いろんなことを頑張ったの。だから、ね?」

 

 

 ポスン、とずん子は椅子に座っている竜の膝の上に座る。

 そして上目遣いで竜を見ながら竜の手を撫で始めた。

 

 

「がんばったね・・・・・・。おつかれさま・・・・・・。がんばっているおねえちゃんがすきだよ・・・・・・」

「えへへへ。嬉しいなぁ」

 

 

 意識のないはずの竜の口が動き、どこか抑揚のない声が発せられる。

 それに合わせて竜の手も動いてずん子の頭を撫で始めた。

 竜の言葉を聞き、ずん子は嬉しそうに体を委ねている。

 

 

「うん。私はお姉ちゃんなの。だからりょーくんのことはちゃんと私が守ってあげるの。ううん。お姉ちゃんだからりょーくんの彼女のことも考えないといけないよね。ゆくゆくは私の義妹になるんだし。あ、でも彼女とかができてもりょーくんの一番は私だよね」

「おねえちゃんが、いちばんだよ・・・・・・。むりはしないでね・・・・・・。がんばらなくてもいいんだからね・・・・・・」

 

 

 抑揚のない声で喋りながらずん子の頭を撫でる竜はどこか人形かロボットのようにも見え、それが普通の状態ではないことは誰の目にも明らかだった。

 しかし、今ここにいるのはずん子と竜、そして眠らされてしまっているついなだけ。

 竜の周りには動物霊たちがいるのではないかと思うかもしれないが、彼らはすでにずん子の手によって封印されてしまっており、竜のことをもとに戻すことはできなかった。

 

 

「それじゃあ、次はぎゅってしてほしいな。強く、私のことを離さないように・・・・・・」

「うん・・・・・・」

 

 

 ずん子の言葉に竜は強くずん子のことを抱き締め始めた。

 竜に抱き締められ、ずん子は恍惚とした表情を浮かべる。

 そんなことが残りのお昼休みの時間のあいだ続けられるのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 お昼休みがもうすぐで終わろうかという時間になり、ずん子は少しだけ着崩れてしまった服をしっかりと着直す。

 

 

(かい)

「んぇ?くぁ・・・・・・、なんやいつのまに寝てもうたんや・・・・・・?」

「うん?っと、こんな時間なのか」

 

 

 ギリギリの時間まで竜に抱きついていたずん子は竜の体から離れて“霊術”を解除する。

 “霊術”が解除された竜とついなは少しだけキョロキョロとしていたが、とくになにかに不信がることもなく時計を見て驚いていた。

 どうやら、2人の記憶は生徒会室に来た辺りから改竄をされているようで、なにもないはずの机の上を見ながらやっていないはずの書類の話をしている。

 

 

「っと、そろそろ戻らないと不味そうか。それじゃあ、先に戻りますね!」

「はい。廊下は走らないようにしてくださいね」

 

 

 そう言って竜は生徒会室から出て自分の教室に向かっていった。

 そんな竜の姿をずん子はジッと見送る。

 

 

「ふふふ・・・・・・。お姉ちゃん、頑張っちゃいますね?」

 

 

 竜の姿を見送りながら、ずん子は小さく呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







正直、投稿する3時間前に書いている途中の2000文字を消して500文字から書き直すとは思ってもいなかったです・・・・・・。

でも、書き直した方が私のイメージするずん子っぽさは出せたかな、と。


誰のヤンデレが読みたいですか? その8

  • 弦巻マキ(母親が死んでいる世界)
  • 役ついな
  • 鳴花姉妹
  • UNA
  • 現在番外話を書かれている全員

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。