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マキとマキの母親の作ったオムライス。
それは卵の部分がキレイな黄色をしていて焦げなどが見つからず、ケチャップの赤と合わさってとても鮮やかな色合いをしている。
スプーンを取り、そっと卵の部分に差し込む。
ほんの少しだけ卵の抵抗を感じたものの、あっさりとスプーンは卵の中へともぐり込んでいった。
そして、スプーンですくったオムライスのほんのわずかな重さを感じながら持ち上げればケチャップによって赤く染められたご飯が姿を現す。
そしてよく見ればケチャップライスの中にご飯以外のものが入っていることに気がつくだろう。
それは細かく刻まれたニンジンやベーコン、ピーマンなど色々なものが混ぜ込まれていた。
栄養のバランス的にご飯だけよりも良いだろう。
「うまっ!」
「喜んでくれて嬉しいわね」
オムライスを口に運んだ竜は思わずといった様子で言葉をもらした。
竜の言葉に母親は嬉しそうに微笑む。
その微笑みは親子だけあってかマキとそっくりだった。
「ね?お父さんだけじゃなくてお母さんの料理も美味しいんだよ」
「でもマキも手伝ったんだろう?」
竜の言葉にマキは頬にケチャップをつけながら自慢気に答える。
マキの頬についているケチャップに父親は笑いながら、マキも手伝っていたことを言った。
「えー、でも私は野菜とかを切っただけだよ?」
「だけ、じゃないわぁ。食材を切るだけでも料理する人の技術は出るものなのよ?」
父親の言葉にマキは不思議そうに首をかしげる。
自分は野菜を切っただけで調理をしたのは母親。
切るだけならば誰にでもできるし、切り方もちゃんと調べてしまえば間違えることもない。
そんなマキの言葉を母親は否定した。
「そうかなぁ?」
「んー、少なくとも私とお父さんは美味しいと思ってるわよぉ?」
不思議そうなマキに母親は微笑みながら答える。
首をかしげるマキを微笑ましそうにマキの両親と竜は見ていた。
両親だけでなく竜にまで微笑ましそうに見られていることに気づいたマキは、恥ずかしそうに頬を赤く染めてオムライスを食べることに集中するのだった。
◇ ◇ ◇
マキの家での晩御飯も食べ終わり、竜はマキの家の前にいた。
帰る竜を見送るためにマキも玄関前に出てきている。
「晩御飯のオムライス、とても旨かったよ。前にマキからお弁当を分けてもらったときにも思ったけどやっぱりマキも料理が得意なんだな」
「むぅ、竜くんまでそんなこと言って」
竜の言葉にマキは頬を膨らませる。
晩御飯の時に母親に言われたことのように竜にからかわれているとマキは思っていた。
「ちょっと暗くなってるから帰り道は気をつけてね?」
「ははは、そんなに心配するようなこともないと思うけどな」
頬を膨らませていたマキだったが、すぐに頬をしぼめて周囲を見渡した。
時間もそこそこに経っていたために周囲は暗く、ここから家へと帰る竜のことをマキは心配していた。
マキの言葉を竜は軽く笑い飛ばしながら答えた。
「マキとか可愛い子なら兎も角、俺みたいなのは襲われたりなんかしないから大丈夫だよ」
「か、可愛い?!」
とくに深く考えているわけでもない竜の言葉にマキは驚いてしまう。
まさか面と向かって可愛いなどと言われるとは思っていなかったため、これはマキにとって予想外のことだった。
「も、もう!いきなりそんなこと言われたら恥ずかしいよ!」
「お、おう、すまんな」
驚きと恥ずかしさでほんのりと赤く染まった頬のままマキは竜に言う。
マキの言葉の勢いに押されて竜は謝った。
「んじゃ、帰るわ。また明日な」
「うん、また明日」
そう言って竜は自宅への帰路についた
自宅へと向かって歩く竜の姿をマキはしばらく見守るのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ