UA80000を越えたので番外話です。
ハーレムと言ってもこの時点でのヤンデレエンドを向かえた、ゆかり、あかり、マキ、きりたん、茜、葵、イタコ、ずん子の8人のみとなっています。
ヤンデレといっても作者のイメージするヤンデレですので好みが分かれるかもしれません。
それでもよろしければ読んでください。
なお、本編のネタバレも含まれますので気をつけてください。
・
高い壁に囲まれた一軒の家・・・・・・、いや、それはもはや屋敷と言っていいほどの大きさの建物だった。
壁の高さは目測でおおよそ10メートルはあり、壁の上の方にはまるでネズミ返しのようにつるつるとした素材の壁が反り出ている。
また、家を囲っている壁には一切の隙間などはなく、唯一開いているところが出入り口となる正面の門のみとなっていた。
そんな屋敷の一室。
そこで竜は目を覚ました。
「ううん・・・・・・」
寝起きゆえにうまく働かない頭で、竜は部屋の中を見渡す。
部屋の中に置かれている家具はどれも見覚えはなく、普段家で使っているものよりも高そうなものに見える。
ジャラリ・・・・・・――――
眠っていたベッドから起き上がり、部屋の中を調べてみようと考えた竜の耳になにか金属が擦れるような音が届く。
それと同時に竜は自分の首になにかが巻き付いていることに気がついた。
「なんだ、これ・・・・・・?」
竜は首に巻き付けられているものを外そうと試みてみるが、ロックでもされているのか一向に外せない。
触れている感触から革製品のように思えるが、これがどういったものなのかはまったく分からなかった。
首に巻き付けられているものを触っていると、首の後ろのあたりから鎖のようなものが伸びていることが分かる。
伸びている部分を掴んで見えるように前に持ってくると、首の後ろの部分から伸びていたものが鉄製の鎖だということが分かった。
「鎖・・・・・・、ぐえっ?!」
自分の首に鎖がつながっていると理解した竜は驚き、思わずベッドから転げ落ちる。
ベッドから落ちた竜がぶつけたところをさすっていると、部屋の扉が開いた。
「あ、起きたんですね。おはようございます」
「ゆかり・・・・・・?」
部屋の扉を開けて入ってきたのはゆかりだった。
見知らぬ場所に首につながれた鎖。
理解の追いつかない状況下で現れた自分の知っている人物に竜は逆に怪しさを感じてしまう。
やや警戒しながら竜がゆかりのことを見ていると、ゆかりは嬉しそうに笑みを浮かべながら竜に近づいてきた。
「ふふふ。寝ぐせで髪の毛がぼさぼさですよ?ちょっと動かないでくださいね」
「ここはどこなんだ・・・・・・?それにこの首の鎖は・・・・・・」
竜の髪型は寝起きということもあって寝ぐせでぼさぼさになっている。
ゆかりは竜の後ろに移動すると、クシを取り出して竜の髪型を整え始めた。
ゆかりにされるがままになりながら竜はゆかりにここがどこなのか、首につながっている鎖がなんなのかを尋ねる
しかしゆかりは竜の言葉に答えず、鼻歌を歌いながら竜の髪型を整えていくのだった。
「さて、それじゃあ行きましょうか」
「ま、説明を・・・・・・、うぐっ・・・・・・」
竜の髪型を整え終えたゆかりは竜の首に繋がっている鎖を持ち、部屋から出ようとする。
部屋から移動しようとするゆかりを引き留めようとするが、鎖を引かれたことによって首を引かれて言葉が途切れてしまった。
ゆかりによって鎖を引かれながら竜はゆかりの後を追う。
道中の廊下も見覚えはなく。
なぜゆかりが迷いなく歩いていくことができるのかが不思議で仕方がなかった。
「皆さん、竜くんが起きましたよ」
「あ、起きたんやね。おはようさんや!」
「おはよう。ちょっとお寝坊さんだったね」
「竜くんおはよう。朝ごはんはできてるよー」
「竜先輩、おはようございます!」
「おはようございます。小学生よりも起きるのが遅いのはどうかと思いますよ?」
「きりちゃんは夜更かしをしていて寝ていないだけでしょう?」
「まぁまぁ、これからみんなで暮らすのが楽しみで仕方がなかったみたいですし」
ゆかりがある部屋の前で止まり、大きな扉を開けて中に入ると茜、葵、マキ、あかり、きりたん、イタコ、ずん子の姿があった。
茜たちの姿に竜が困惑していると、ゆかりが鎖を引いて空いている椅子へと竜を誘導した。
「これは、どういう・・・・・・」
ここはどこなのか。
どうして茜たちがここにいるのか。
解消されない疑問に竜の頭の中はハテナマークで埋め尽くされていく。
「はい。竜くんの朝ごはんだよ」
「お昼はうちが担当するからなー。楽しみにしとってな!」
「晩ごはんは私とずんちゃんが担当ですわ。頑張っちゃいますわね?」
「姉さまたちのごはんはとても美味しいですからね。期待してくれても良いのですよ」
「うーん。そんなにハードルを上げられるとちょっと不安になっちゃうわね」
竜の前にマキの作った朝ごはんが並べられる。
茜たちの言葉に困惑しながら竜は朝ごはんを食べ始めた。
◇ ◇ ◇
朝ごはんを食べ終わり、竜は改めて茜たちを見渡す。
茜たちはそれぞれ椅子に座って会話をしていたり、飲み物を飲んだりして思い思いに過ごしているように見える。
ふと、竜は今の時間が気になり、時計を探した。
「時計はどこに・・・・・・、あれか。って、9時?!」
「なんや、どうしたん?」
時計を見つけて時間を確認した竜は思わず声を上げる。
竜の記憶違いでなければ今日は月曜日であり、今の時間は確実に遅刻をしている時間帯だった。
竜の言葉に茜が不思議そうに首をかしげる。
「いや、今の時間!遅刻だろ!」
「あ、問題ないですよ」
慌てた様子の竜にあかりがのんびりと紅茶を飲みながら答える。
どう考えても遅刻の時間帯なのに問題ないとはどういう意味なのか。
あかりの言葉の意味が分からず、竜は首をかしげた。
「だって、私たちみんな学校を辞めてますから」
「・・・・・・・・・・・・は?」
なんてことないことかのように告げられたあかりの言葉に竜は思わず口を開ける。
そのまま茜たちのことを見回すが、誰一人として訂正することはなく、あかりの言葉が嘘ではないのだろうということがうかがえた。
「どういう・・・・・・ことだ・・・・・・?」
「どういうもなにも言葉通りの意味ですよ?」
「うちらはみんな学校を辞めとるんや」
「そうそう。それでこの家にみんなで暮らすんだよ」
あかりの言葉がうまく理解できず、竜はまるでどこかのオレンジ髪の死神のような表情で聞き返した。
竜がどうして理解できないのか分からず、不思議そうにあかりは首をかしげる。
あかりの言葉を肯定するように茜と葵も学校を辞めていることを肯定する。
「なんで?!いや、そもそもとしてそんな勝手に・・・・・・!」
「仕方がないんだよ。だって、竜くんってばすぐに女の子と仲良くなっちゃうんだもん」
「そうですよね。学校の梅の木の精に始まり、最近では3年生の方たちとも交流ができたとか・・・・・・」
「だから公住くんが私たち以外の誰とも仲良くならないようにするにはこうするしかなかったの」
「ご安心くださいませ。騒ぎになったりしてはいけませんから私ときりたんで認識の阻害やつじつま合わせなんかもしてありますので」
竜の言葉を遮るようにマキが座っている竜の肩に手を置きながら答える。
さらに反対側の肩に手を置きながらゆかりも言葉を続ける。
ここで、ようやく竜は全員が談笑したりしていながらも自分から目線を外していないことに気がついた。
全員から見られていることに気がついた竜は思わず体を強張らせる。
「いや、でもきりたんは小学校が・・・・・・」
「問題ないです。勉強の方はタコ姉さまに教えてもらえますので。それに学校なんかよりも竜兄さまの方が大切です」
少しでも学校を辞めたことを撤回させようとする竜だったが、バッサリとその抵抗は切り捨てられる。
きりたんの言葉に竜は思わずがくりと項垂れた。
「ですので。私たちはみんな学校を辞めてここでずっと一緒に暮らすんです。ここには私たちしかいません。だから竜先輩が他に誰かと仲良くなることもないんです」
「料理の方はマキさんたちに任せておけますし、防犯やら食費やらはあかりさんが何とかしてくれます。なのでなにも気にすることはないんです」
「皆でごはんを食べて皆でテレビを見て感想を言って。皆で家族みたいに暮らせるって素敵なことだよね」
「竜のことは皆でちゃんと守ってやるさかい、なんも不安にならんでええんよ」
項垂れた竜に言い聞かせるようにあかりたちは口々に言う。
その声音にはどこか暗いものが感じられ、けっして竜を逃がすことはないと宣言しているようにも感じられた。
「ああ、言い忘れていました。竜先輩はこの家から出ようとしても出られませんからね?竜先輩の首につけているソレには仕組みがありまして。ソレをつけている人が家から出ようとするとすべての扉が閉じて完全に封鎖されるようになっているんです」
ふと、あかりはうっかりといった様子で竜の首に巻きつけられているものを指さしながら言った。
何でもないことかのように告げられたのは、竜が決してこの家から出ることは叶わないということ。
「さぁ、それでは今日も1日、皆で仲良く。竜くんを共有しましょうか」
「ですね。それじゃあ、まずはゲームをして勝った人から竜先輩になにかやってもらいましょうか」
「ええやん。その勝負、のったで!」
「それじゃあゲームをしている間にボクはおやつでも作っておこうかな」
「ちゅわ。私も手伝いますわ」
「ゲームなら私も負ける気はありませんよ」
竜の首につながる鎖を持ち、ゆかりたちはゲームの置いてある部屋へと向かう。
これから竜に待ち受けるのは自身のことを病むほどに好いている人間との共同生活。
もしかしたら誰かが欲求を爆発させて竜のことを襲うかもしれない。
もしかしたら誰かが暴走して竜のことを食べてしまうかもしれない。
もしかしたら誰かが竜に薬を盛って襲わせてしまうかもしれない。
共同生活をしてどんなことが起こるかは誰にも予想ができず、その生活が幸せになれるものなのかも誰にも予想はできない。
しいて言うのであれば、彼女らの存在は世間から消え、ごく一部の人たちにしか知られなくなったということだろう。
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