変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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第103話

 

 

 

 

 どこぞの漫画家のようなゆかりの言葉にマキはピシリと表情を固まらせる。

 ゆかりの言葉にファミレスに来た本来の目的を思い出したのか、茜たちはポンと手を叩いてゆかりを見た。

 

 悟らせるような行動はしておらず、自然に話題を誘導できていたはずなのに失敗した。

 

 

  なぜ?

 

  どうして?

 

 

 マキの頭の中をその2つの言葉が埋め尽くしていく。

 

 

「なん・・・・・・で・・・・・・」

「マキさんとはとくに長い付き合いですからね。あなたの考えていることくらいはそこそこ読めるんですよ」

 

 

 思わずこぼれたマキの言葉にゆかりは水を一口飲んで答えた。

 

 マキの話題の誘導が失敗した理由はたった1つ。

 たった1つのシンプルな答え。

 

 マキとゆかりは親友だった。

 

 

「コホン・・・・・・。さて、それでは改めてマキさんに聞きましょう。竜くんのこと、どう思ってますか?」

「えっと、それは、その・・・・・・」

 

 

 小さく咳払いをしたゆかりは改めてマキに尋ねる。

 当然のことだが、ゆかりの言う『どう思っているか』というのは恋愛感情としての好きかどうかのことだ。

 ゆかりの言葉にマキは視線をキョロキョロと動かしながら言い淀んでしまう。

 

 しかし、マキが言葉に悩んでしまうのも無理はないだろう。

 本人が気づいていなかったことをお昼休みに気づかされ、頭の中で整理する間もなくファミレス(ここ)までつれてこられたのだから。

 

 ワチャワチャと手を動かし、どうにかゆかりの言葉に答えようとするマキの姿に、ゆかりたちはなんとなく察したような表情になった。

 

 

「私は、そんな、竜くんの食生活が心配で、好きとかそんな・・・・・・。で、でも美味しいって褒められたら嬉しくて、えっと・・・・・・、だから・・・・・・」

「・・・・・・なんちゅーか、マキマキが混乱してるっちゅーのは分かったわ」

「ねぇ、ゆかりさん。もしかしてマキさんってまだ・・・・・・」

「・・・・・・ええ、私の知る限りでは初恋はまだですね」

 

 

 混乱しながらもどうにか自分の思いを伝えようとするマキの言葉を聞きつつ、ゆかりたちは声を潜めて話す。

 マキの様子からもしかして、とあたりをつけた葵は思いきってゆかりに尋ねた。

 どうやら葵の勘は当たっていたようで、ゆかりはうなずいて答える。

 

 

「それってかなり珍しくないですか?普通に生活していれば初恋くらい・・・・・・」

「マキさんは・・・・・・ほら、お父さんが・・・・・・」

「せやったな・・・・・・」

「あ~・・・・・・」

 

 

 初恋なんてものは早ければ保育園や幼稚園で起こるもの。

 マキの初恋がまだだということにあかりは不思議そうにゆかりに尋ねる。

 

 たしかに今まで初恋をする機会がなかったというのは普通に考えればあり得ないと誰もが思ってしまうだろう。

 しかし、マキの父親は誰もが知っているほどの親バカ。

 

 ゆかりの言った、ただそれだけのことだけで茜たちは納得ができてしまった。

 

 

「・・・・・・マキさん。ゆっくりと、落ち着いてください」

「ゆかりん・・・・・・?」

 

 

 混乱しながらも必死に答えようとしているマキの手を取り、ゆかりは落ち着くように言う。

 ゆかりの言葉にマキは少しづつ落ち着きを取り戻していった。

 

 

「マキさん。私たちのことだとか、他のことは考えないで良いんです。ただ、マキさんが竜くんのことをどう思っているのか、自分の心に聞いてみてください」

「私の・・・・・・心に・・・・・・」

 

 

 そっと、優しく言い聞かせるようにゆかりはマキに言う。

 今、一番大事なことはマキが竜に対してどのような感情を抱いているのか。

 ゆかりの言葉にマキは目を閉じ、自分の心の中に浮かんだ言葉を口に出した。

 

 

「私は・・・・・・、竜くんに料理を食べてもらって嬉しかったんだ・・・・・・、美味しいって褒めてくれて・・・・・・、たまに胸に視線が来ることもあるけど、それでも目を見てちゃんと話してくれて・・・・・・」

 

 

 心を落ち着かせ、自分の中にある思いと向き合うことでマキは竜に対して思っていることを言っていく。

 胸の話になったときにゆかりと茜、葵の視線がやや怖くなったが、目を閉じているマキは気づいていない。

 

 

「・・・・・・うん。ゆかりん、私、竜くんに私の作った料理をもっと食べてもらいたいんだ。これがゆかりんたちが欲しかった答えなのかは分からないけど・・・・・・。私の思いなんだ」

 

 

 自分の中にあった思い。

 それに触れることができたマキは目を開いてゆかりたちにその思いを伝えた。

 

 マキの中に生まれたその思い。

 その思いの本当の意味をマキが知る日は近い、かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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