変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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第109話

 

 

 

 

 (ふところ)に潜り込む。

 

 先ほどまでいた場所に紫の分厚い筋肉でおおわれた巨大な腕が叩きつけられる。

 

 数回胴を斬りつけ、身を屈めながら横方向にステップを踏む。

 

 直後にベヒーモスの正面方向へと火柱が数本走る。

 

 

 ライトボウガンからうって変わってほぼゼロ距離とも言える戦闘。

 ベヒーモスの放つ攻撃すべてを竜はギリギリのところで回避していた。

 

 

「っ~!・・・・・・良いねぇ。最っ高に楽しい!」

 

 

 このエリアは坂道と段差があり、坂道では斜面であることによる移動の暴発。

 段差では乗り越える動作での強制的な隙に気をつけなければ安定して戦うことは難しいのだ。

 

 辛うじて攻撃モーションに気づいて回避ができているが、それでもいつ被弾するか分からないギリギリの戦い。

 ドキドキと五月蝿くなってくる心臓の音を感じながら竜は忙しなくコントローラーを操作していく。

 

 

『・・・・・・やりますか?』

「・・・・・・ですね。やりますか!」

 

 

 長く会話をする余裕もないために短い言葉で“KIRIKIRI”は竜に尋ねる。

 “KIRIKIRI”の操作するキャラクターが装備しているのは双剣。

 そしてそのキャラクターがいる場所を素早く確認した竜は“KIRIKIRI”の言葉の意味を理解し、ほどほどにベヒーモスに攻撃を与えてから“KIRIKIRI”のいる坂の上側近くへと移動した。

 

 

「双剣ならこれはやっておかないとですからね」

『当然ですね。技名はどうしますか?』

「“KIRIKIRI”さんが前に言っていたやつで」

『オッケーです』

 

 

 坂の上側へと移動し、ベヒーモスから距離を置いたことによって会話をする余裕ができた竜と“KIRIKIRI”は次に(おこな)うことの話し合いを軽くする。

 そして、ベヒーモスがこちらに向かってきているのを確認した竜と“KIRIKIRI”はほぼ同時に坂道を滑ってスライディングを始めた。

 

 スライディングをしていた竜と“KIRIKIRI”は、ベヒーモスの目の前で跳び上がり、その体を回転させていく。

 2人は体を回転させ、スライディングの勢いのままベヒーモスへと向かっていった。

 2人が回転していることも気に止めず、ベヒーモスは咆哮をあげながら2人に向かっていった。

 直後、回転していた2人の双剣がベヒーモスの顔面に直撃する。

 

 

「『“双刃(そうは)流螺旋(りゅうらせん)”!!』」

 

 

 次の瞬間、ベヒーモスに直撃した双剣の片方を軸に、2人は体勢を整えてベヒーモスの頭から尻尾へと体をなぞるように回転しながら進んでいった。

 加えて言うと、回転しながら双剣も振るっており、ベヒーモスの体には無数の斬撃が叩き込まれている。

 ズザザザザザザザザッ、という長い斬撃音を出しながらのスタイリッシュな攻撃に、竜は満足そうにうなずく。

 そして、2人の攻撃がベヒーモスの体の後ろの方へと到達した瞬間。

 

 ブツンッ!と言う音とともに巨大ななにかが飛んでいく。

 それと同時にベヒーモスが大きく鳴き声をあげながら前方へと走っていった。

 

 飛んでいったものの方を見ると、そこにはベヒーモスの体表と同じ紫色のなにかが落ちていた。

 落ちていたものの確認もそこそこに、ベヒーモスを見ると、明らかに先ほどと変わった部分がある。

 

 先ほどまで回転攻撃で猛威を振るっていたベヒーモスの尻尾が根本の辺りからバッサリとなくなっているのだ。

 どうやら2人がかりによる回転連続攻撃“双刃・流螺旋”によってベヒーモスの尻尾が切断されたようだ。

 

 尻尾が切れたことによる怒りからなのか、ベヒーモスはめちゃくちゃに岩石を降らせる。

 そのうちのいくつかが壊れずにフィールドに残った。

 

 

『これは・・・・・・』

「きますね・・・・・・」

 

 

 壊れなかったいくつかの岩石。

 それらを確認した竜と“KIRIKIRI”は警戒しながらベヒーモスを見る。

 

 直後、今までとは比べ物にならないほどに天が赤く染まった。

 雲が大きく渦巻き、それと同時に何本もの雷が雲の中を走っている。

 

 天が赤くなったのを確認した2人は急いで先ほど壊れなかった岩石の後ろに身を潜めた。

 そして、ベヒーモスが一際大きく鳴き声をあげ・・・・・・

 

 

 

      ・・・・・・世界は轟音と光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰のヤンデレが読みたいですか? その16

  • 佐藤ささら
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