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轟音と光がおさまり徐々にテレビ画面は周囲の光景を映し始める。
最初に目につくのは悠然と立ちながらハンターたちを見据えるベヒーモスの姿。
先ほど竜たちは天から降ってきた岩石の後ろに身を潜めたはずなのになぜベヒーモスの姿が見えるのか。
その理由はとても分かりやすいもので、ベヒーモスがいくつもの岩石を降らせたあとの最大の大技“エクリプスメテオ”によって身を潜めていた岩石が跡形もなく消し飛んだからだ。
もしもこの威力を防ぐものがない状態で受けたのならば、間違いなく先ほどの身を潜めていた岩石と同じようにその身を消し飛ばされていただろう。
自身の肉体へのダメージも気にせずに大技“エクリプスメテオ”を放ったベヒーモスは、忌々しそうに竜と“KIRIKIRI”を睨むと身を
ベヒーモスが奥のエリアに移動したことを確認した竜と“KIRIKIRI”は小さく息を吐くと砥石を取り出して双剣を研ぎ始める。
「傷つけとかで切れ味をなるべく下げないようにしてたのにギリギリかぁ・・・・・・」
『こっちも同じ感じですね。達人芸が多目に発動してくれたお陰で緑程度には抑えられましたけど・・・・・・』
砥石を使いながら竜が確認しているのは画面左上に表示されている切れ味ゲージと呼ばれているもの。
これはその名の通り装備している武器の切れ味を表しているもので、最高で紫色から最低で刃こぼれの状態にまで段階的に変化する。
この切れ味というものは近接武器を使う上では切っても切れない重要な要因で、紫や白などの状態であれば基本的にはほとんどのものを斬ることが可能になり、反対に刃こぼれやオレンジ色の状態になってしまえばほとんどの攻撃が弾かれてしまうのだ。
ただし、『心眼』と呼ばれるスキルを着けていれば切れ味がどんな色になろうと弾かれることはないので安全に戦いたいのであれば『心眼』を着けるのも手の内だろう。
砥石を使ったことによって緑にまで落ちていた切れ味が白にまで戻る。
そしてベヒーモスとの戦闘中に使用したアイテムの補充のためにキャンプへと竜と“KIRIKIRI”は移動した。
「っと、被弾ごとに秘薬を使ってたからギリギリだったな」
『回復薬グレートとか持たないんですか?』
「飲む時間が勿体ないのと回復に時間がかかるんで(持た)ないです」
持ち物で補充をするのは秘薬とその材料になるもののみ。
普段であれば罠なども持っているのだが、あいにくとベヒーモスに罠は効かないので無駄なアイテムは減らしたのだ。
アイテムを補充し終えた2人はキャンプから出てベヒーモスのいるエリアへと向かう。
「みゅい!」
「んぉわっ?!」
『うん?どうかしましたか?』
勢いよく頭の上に降ってきた衝撃に竜は頭を揺らされ、思わず声を漏らした。
それと同時に聞こえてきたのは聞きなれた生き物の声。
竜の声が聞こえたのか“KIRIKIRI”は不思議そうに竜に尋ねる。
「みゅっ、みゅみゅっみゅ!」
「いきなり乗ってくるのは止めてくれよ・・・・・・。っと、ああ、すみません。頭の上に遊びにきた生き物がいきなり跳び乗ってきたので」
『そ、そうなんですか・・・・・・?』
動物が遊びにくるとはどういうことなのか。
竜の言葉に“KIRIKIRI”は困惑した声を出すことしかできなかった。
「わぁ!」
「今度はあかり草かい・・・・・・」
「みゅぅあ!」
竜の座っている足の間から生えてきたあかり草に竜は思わず声を出す。
あかり草は顔を向けるように竜へと花を向けると嬉しそうに揺れ始めた。
あかり草が急に生えてきたことにみゅかりさんは驚き、小さく竜の頭の上で跳び跳ねる。
「あー・・・・・・、あまり揺れんでくれ。その、なんだ、振動がくるから」
「わぁわぁ、わ?・・・・・・・・・・・・わぁ」
竜の言葉にあかり草は不思議そうに花の部分をかしげ、自分がどこに生えているのかを見た。
あかり草が生えているのはゲームをするために座っている竜の足の間。
あかり草が揺れるたびにその振動が、わずかにだが竜の体のもっとも大事な部分に届いていた。
自分の体がどこから生えてしまっているのかを理解したあかり草の花の部分はほんのりと赤く染まるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ