UA100000を越えたので番外話です。
ヤンデレといっても作者のイメージするヤンデレですので好みが分かれるかもしれません。
それでもよろしければ読んでください。
なお、本編のネタバレも含まれますので気をつけてください。
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もしもあのとき、ご主人と出会えていなかったら。
ご主人の朝ごはんを準備しながらうちはふと考える。
うちとご主人が出会ったのはうちが東北家に預けられて逃げ出した夜のこと。
そのときはご主人はバイトから帰っているところだった。
もしも、うちがあの日に逃げ出していなかったら。
もしも、あの日ご主人がバイトをしていなかったら。
もしも、ご主人が霊を見ることができていなかったら。
そんなどれか1つのもしもがあったらうちとご主人が出会うことはなかっただろう。
だからこそ、うちはご主人のことを大切にしていきたいと思っている。
「くぁ・・・・・・、おはよう」
「おはようさんや。もうちょいで朝ごはんができるから待っとってなぁ」
うちが朝ごはんを準備しているとあくびをしながらご主人がリビングに入ってきた。
うがいや顔を洗ったりは済ませているようだけど、それでも眠気がやや残っているらしい。
「なんや、また遅くまでゲームしてたんか?早く寝ないとあかんで?」
「それは分かってはいるんだけどな・・・・・・。ついつい茜たちとゲームを続けちゃうんだよ・・・・・・」
うちの言葉にご主人はバツの悪そうに答える。
まぁ、こんなやり取りもよくあることなのでそこまで細かく言うつもりはないのだが、それでも健康のために夜更かしはあまりしないでほしいものだ。
そして、ご主人はうちの作った朝ごはんを食べて学校に向かうのだった。
◇ ◇ ◇
お昼休み。
ついなを制服のポケットに入れながら竜は学校の廊下を歩く。
竜は飲み物を買ってくるということで茜たちを先に保健室に向かわせていた。
「とりあえず無難にお茶かなぁ・・・・・・」
「せやね。それでええと思うで」
自販機に並んでいる飲み物の中から竜は無難ということでお茶を選んで買う。
不意に、ついなは不快ななにかを感じてポケットから顔を出して周囲を見渡した。
「どうかしたのか?」
「・・・・・・いや、なんでもないで。ご主人、うちはちょっと散歩してくるわー」
竜の言葉についなは首を振って答え、竜のポケットから飛び出して元の大きさに戻る。
散歩してくるというついなの言葉に竜は首をかしげるが、ずっとポケットにいたから体を伸ばしたくなったのだろうと考えて引き留めることはしなかった。
「そっか。なら俺は先に保健室に行ってるな」
「分かったでー」
そう言って竜は保健室に向かっていく。
保健室に向かっていく竜の姿を見送り、ついなは先ほど感じた不快なものの出所へと顔を向ける。
不快なものの出所へと顔を向けたついなの表情からは感情というものが消えており、その瞳は普段とは違って縦に大きく瞳孔が開いていた。
◇ ◇ ◇
時間は進み放課後。
竜の頭の上に乗ったついなは上機嫌に鼻歌を歌っていた。
「なにか良いことでもあったのか?」
「んー、そんなところやね。ご主人、今日はなんか食べたいものとかあるかぁ?」
上機嫌なついなに竜はなにがあったのか尋ねる。
竜の言葉についなはニヘラと柔らかく笑い、晩ご飯になにが食べたいかを尋ねた。
このとき、竜は
そして、その数人の男子高校生が発見されたのは、竜の通っている学校の校舎裏だったらしい。
「ふふふ・・・・・・」
そんなニュースが放送されているテレビをチラリと見たついなは小さく、竜に気づかれないほどに小さく暗い笑みをこぼすのだった。
◇ ◇ ◇
竜の家に帰ってきたついなは、手洗いうがいを素早く終えると手始めにご飯の準備をしていく。
先にお米を研いで炊飯器に入れておけばあとはボタンを押すだけで炊けるのを待つだけだし、晩ご飯のおかずを作るときにご飯の準備をする必要がなくなるからだ。
ご飯の準備を終えたついなはお茶の用意をして椅子に座っている竜の近くに移動する。
「ほんと、いつもありがとうな」
「べつにええって、うちがご主人にしたくてしとることなんやから」
ついなが竜の家に来てからそこそこに日数は経ってはいるのだが、いまだに竜はついなに対して食事の準備をしてもらうことに申し訳なさを感じていた。
風呂の掃除など手伝えることはキチンと竜もやってくれているのでついなはそこまで気にしていないのだが、竜が自分のことを考えてくれているということをついなは嬉しく思っていた。
「そういえばさっきニュースで見たんだが、うちの学校でなんかあったらしいな。茜たちからメッセージが届いて、ちょっと調べてみたんだよ」
「へぇ、そうなんや?怖いことがあったもんやねぇ」
話題を変えるために竜は先ほどスマホで茜たちから届いたメッセージから調べたことをついなに話す。
自分たちの通っている学校で起きた事件ということもあって、茜たちは気になったらしい。
竜が調べた内容は竜の帰宅途中で家電屋に置かれたテレビから放送されていたニュースと同じ内容で、男子高校生の名前や学年なんかは調べても出てくることはなかった。
竜の言葉についなは少しだけ驚いた表情を見せる。
「となると学校もなにが起こるか分からんなぁ。ご主人。ご主人のことはうちが守るから絶対に離れたらあかんで?」
「そうだな。もしもなにかありそうだったら頼むよ。でも、ついなが危なくなりそうなら俺もついなのことを助けるからな?」
むん、と両手を握ってついなは竜のことを守ると宣言する。
そんなついなの言葉に竜は笑いながら答え、自分もついなのことを守ると答えるのだった。
◇ ◇ ◇
夜の
ついなはリビングの椅子に座っていた。
「・・・・・・なんか言いたいことでもあるんか?」
ポツリとついなが誰もいない空間に声をかける。
ついなの言葉に答えるものはそこには誰もおらず、シンとした空気が漂っていた。
「ちぃと前まではあんたらのことは全然気づけへんかった。でも、ご主人から霊力をもらうことができてうちもだいぶ力を得ることができたんや」
不意に、ついなの周囲の空気の温度が一気に低下する。
しかし、不思議なことについなの正面の空気だけは逆に温度が上昇していった。
「ご主人のことを守ってきたであろうあんたたちでも、うちの邪魔は さ せ へ ん で ? 」
直後、ついなに向かって風の刃と槍のようになった枝が出現して放たれる。
自身に向かって飛んでくるそれらに対し、ついなはいつの間にか取り出した槍で切り払う。
そして次の瞬間、ついなの姿がリビングから消えるのだった。
それと同時に変化していた温度も、ついなに向かって放たれていた槍のような木の枝も消えていた。
先ほどまでの環境の変化はなんだったのかと思えるほどに、リビングからは音が消えて静かになるのだった。
◇ ◇ ◇
もうすぐ日が昇るのではないかという時間。
ふと、竜はなにかの気配を感じて目を覚ました。
「んん・・・・・・?ついな・・・・・・?」
「ああ、起きたんやなぁ。ご主人」
眼を開いた先に広がっているのは暗闇。
まだ日の出も出ておらず、ぼんやりとした闇の中でついなの影らしきものだけが竜には見えていた。
竜の言葉についなは嬉しそうな声を上げて竜へと近づいていく。
「ご主人のことを守るんはうちだけなんやで?うちだけがずぅっとご主人の近くにいてご主人のことを守るんや。ご主人のことを傷つけるような
「つ、ついな・・・・・・?」
暗闇の中、どこかうっとりと陶酔しているかのような口調でついなは言う。
いつもと違うついなの様子に竜は困惑したまま声をかける。
「でもなぁ、どんなに考えてもうちはご主人がいなくなってしまいそうで不安で不安で仕方がないんよぉ。せやからな、こうすることに決めたんよ。
「ぐ・・・・・・?!つい、な・・・・・・?!」
なにか呪文のようなものを呟きながらついなは竜の顔になにかを押しつける。
直後に竜が感じたのは自分の中になにかが入り込んでくる熱いとも冷たいともとれる奇妙な感覚と、頭が割れそうなほどのすさまじい痛み。
あまりにも凄まじい頭の痛みに竜の意識は闇の中へと落ちていき、それから竜の意識が目覚めることはなかった。
◇ ◇ ◇
どこかの山に、鬼が現れたという噂が立ち始めたのはいつ頃からだったか・・・・・・
その山は山頂に向かうにつれて木々に大きな破壊跡がついており、その形跡を見た登山客たちが言い出したらしい。
その山では狩猟などをやっていたのだが、いつの日からかまったく獣たちが現れなくなり、地面に大きな足跡のようなものが残されていたらしい。
その山に、その山に、その山にその山にその山に・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いくつも存在するある山には怖ろしい何かがいるのではないかという噂話。
しかしその噂の出所を知る者は誰もおらず、またその山がどこにあるのかを知る者もいない。
よくあるオカルト話だと一蹴する者もいれば、興味を持って調べ出す人もいる。
ただし1つ、気をつけなければならないことがある。
この噂を聞いたり、調べたりしたものは必ず山に向かって頭を下げなければならない。
山に向かって頭を下げなければ、怖ろしい何かが現れてその人のことを殺してしまうから・・・・・・・・・・・・
『ゴ
シ
ュ
ジ
ン
ノ
コ
ト
ヲ
シ
ラ
ベ
タ
ン
ハ
オ
マ
エ
カ
?』
誰のヤンデレが読みたいですか? その10
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