変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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第126話

 

 

 

 

 しばらく竜と茜に対して大きな声でツッコミをいれていた葵は、小さくため息を吐いて肩を落とした。

 同じようなことは過去にも何回かあり、そのたびに葵がツッコミをいれているのだが、竜と茜がやめる気配はまったくと言って良いほどに感じられなかった。

 まぁ、そもそもとして自覚のあるなしは不明だが、葵自身もツッコミをいれながらも楽しんでいる節があるので、問題はなさそうだが。

 ため息を吐いた葵が諦めて歩き出そうとすると、茜が目の前に移動して腕組みをしながら電信柱に寄りかかっていた。

 

 

「おおっと待つんや。京の町に行くんやろ?だったらうちを連れていくんや」

「それはいったいなんの物真似なの・・・・・・」

 

 

 どことなく強者感を出そうとして失敗した茜の言葉に葵は呆れながら尋ねる。

 

 

「うちの名はアカネ。魔王が狙っているという3人の姫を守るべく、最強の肉か・・・・・・げふんげふん、盾となれる素質をもった人間を探している」

「無駄に話のスケールを広げようとしないで?!というか今、肉壁って言おうとしたよね?!そんなんで帰るまでに本当に終わるの?!」

 

 

 今、竜たちがいるところは学校と竜の家とのちょうど中間辺り、普通に歩いていれば10分かそこらで竜の家に着いてしまうだろう。

 なぜここで竜の家なのかが気になるかもしれないが、この遊びは竜、茜、葵の3人が揃って始められる遊びであり、3人でなくなった時点で終了になるのだ。

 そのため、竜の家に着くまでがタイムリミットとなっている。

 

 

「えっと、BGMはっと・・・・・・」

 

 

 茜はそう言いながらスマホを操作して音楽を流す。

 どことなくレトロなファミコンの音楽が流れ、少ししてから音楽が終わった。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 アカネ が 仲間 に 加わった ! 」

「長くないですか?」

「今の音楽ってあれかな?ほら、ゲームで仲間が増えたときに鳴る曲」

「あー、たしかにそれっぽいですね」

 

 

 曲を止めてから少し無言の時間が経過し、茜はゲームで表示されていそうなことを言った。

 茜の溜めにあかりは思わず首をかしげ、マキとゆかりは一連の流れがゲームでいうなにを表しているのかを当てていた。

 

 

「では、行くで!肉か・・・・・・勇者よ!」

「 アカネ は 5 の ダメージ を 受けた 」

「ちゃんと装備して、装備」

 

 

 意気揚々と歩き始めようとした茜に、竜はダメージが入ったことを告げる。

 再び肉壁と言いそうになっている茜に対してのツッコミを放棄した葵は呆れながら2人に付き合って茜に装備を促した。

 

 

「それで?次はどうするの?」

「決まってるやろ。お城に行って姫に会いに行くんや」

 

 

 疲れた表情で葵は茜に尋ねる。

 葵の言葉に茜は自信満々に答えた。

 そんな2人の前に、今度は竜が移動してきた。

 

 

「 モンスター が 現れた 」

「あ、今度は竜先輩がやるんですね」

「まぁ、茜ちゃんが仲間になってるならそうなるよね」

「とりあえず茜さんはどう対処するんですかね?」

 

 

 竜がモンスターのような構えをとったことに、3人の掛け合いを見るのが楽しくなってきたゆかりたちは茜の行動を見守る。

 

 

「モンスターが出たわけだけど、どうするの?」

「無視する」

「無視ぃ?!」

 

 

 モンスターの対処をどうするのか聞かれた茜はあっさりと言いのけてモンスター役をやっている竜の隣を通り抜けた。

 普通に戦うものとばかり思っていた葵は茜の行動に驚きつつ、その後を追っていく。

 

 

「着いたで、ここが城や」

「 よくぞ 来たな 勇者 よ 」

「なんで王様もモンスターと同じポーズをとってるの?!」

 

 

 少し歩いて茜は立ち止まって言った。

 先ほどのモンスターとまったく同じポーズをとった竜が目の前で王様のような言葉で出迎える。

 その近くにはゆかりたちも並んでおり、どうやら3人の姫として参加させられたようだ。

 

 

「あんたが中ボスやな!」

「いや、中ボスじゃなくて王様でしょ?!」

「よくぞ見破ったな。俺が中ボスだ」

「中ボスだった?!」

 

 

 王様だと言っていたはずなのに茜は普通に構えて戦闘に入ろうとする。

 いきなりのことに葵がツッコミをいれるが、あっさりと竜は自身が中ボスだと認めた。

 急すぎる展開に葵だけでなくゆかりたちも同じように驚いてしまっていた。

 

 

「ふん!」

「やられた~」

「いや、展開早くない?!竜くんの家が近いからって展開早すぎるでしょ!」

 

 

 茜の手刀一発でドサリと竜は倒れ込む。

 中ボスだのと言っていたのはなんだったのかと言いたくなるほどの急展開だ。

 倒れた竜はふとあることに気がつき、ガバリと起き上がる。

 

 

「ヤバい!さっきのところにスクールバッグ忘れた!」

「うちもや!」

「そういえばさっきから2人とも手ぶらだったね・・・・・・」

「大丈夫ですよ。お2人のバッグでしたらちゃんと持ってきてますから」

 

 

 スクールバッグを道に置いてきてしまったと考えた竜と茜は慌てて道を戻ろうとする。

 そんな2人の様子に苦笑しながらゆかりとマキは回収しておいた2人のスクールバッグを渡すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰のヤンデレが読みたいですか? その16

  • 佐藤ささら
  • 鈴木つづみ

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