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茜の言葉で少しだけピリッとした空気になったものの、しばらくすればそんな空気も霧散していつものお昼ご飯となっていた。
話題に上がるのは最近やっているゲームや気になっている漫画や小説などの様々なもの。
「そろそろ久しぶりに地球でも防衛しようかなぁ」
「お、ええやん。最近はモンハンやら“DEAD BY DAYLIGHT”やらばっかやったし」
「ボクとしてもそっちの方が気が楽かなぁ」
竜の呟きに茜がまず反応し、それに続いて葵も反応した。
最近は基本的にマキのクエストの手伝いや、“DEAD BY DAYLIGHT”で殺人気から逃げ回ることばかりが多かったので、気分転換をしようと考えたのだ。
葵からしてみればモンハンは問題ないにしてもホラーゲームである“DEAD BY DAYLIGHT”をプレイされるのは怖くてしかたがないので、それだったらまだ虫が気持ち悪いだけのゲームの方が精神的にまだマシなのだ。
「“地球防衛軍”ですか。これは私の神エイムを見せるときですね?」
「え、でもゆかりん。この前モンハンでライトボウガンを使って1発もモンスターに当てられなかったよね?」
「それで途中で武器を持ち換えてモンスターに突っ込んでいったんだよな」
「むしろ、ゆかり先輩の撃った弾がほとんど私に当たっていたんですけど・・・・・・」
ニヤリと不適な笑みを浮かべながらゆかりは自信満々に言う。
そんなゆかりの言葉にマキは、少し前のモンハンでのゆかりのプレイを思い出して首をかしげる。
使い慣れていない武器だということを加味したとしても1発も当てられないという酷さ。
しかも撃った弾があかりの操作しているハンターに当たってしまっている。
正直、これらのことからゆかりが神エイムだとは誰も信じていなかった。
不意に教室の扉が開き、1人の女子生徒が現れた。
「こんにちわ、公住 竜くんに用があって来たんですけど・・・・・・」
「ずん・・・・・・、やのうて生徒会長やん。竜、なんかやったんか?」
「いや、とくに覚えはないけど・・・・・・」
女子生徒────東北ずん子の胸元に揺れるリボンの色は
その事からずん子が上の学年、つまりは先輩だということが分かる。
ずん子の姿に茜は思わず違うことを口走りそうになったが、慌てて言い直して竜に尋ねた。
竜からしてみれば生徒会長に呼ばれるようなことをした覚えはないので、首をかしげながらずん子のもとに向かう。
「ええと、自分になにか用ですか?」
「あなたが・・・・・・、ふむ・・・・・・」
「あの・・・・・・?」
竜が声をかけると、ずん子はしげしげと興味深そうに竜を見る。
ずん子に見つめられ、竜はどうしたら良いのかわからずに困惑した声をあげた。
「ああ、ごめんなさい。じつはイタコ姉さまが公住くんに用があるので、放課後に家に来てもらえないかと思って来たの」
「イタコ先生が、ですか?学校じゃダメなんですか?」
「イタコ姉さまの用事は学校よりも家の方が都合が良いのよ。だから手間をかけて申し訳ないけど家に来てほしいの」
ずん子の言葉に竜は首をかしげる。
軽く思い返してみても、やはりイタコ先生に呼ばれる心当たりが思い浮かばなかった。
イタコ先生の用が学校で終わらせることができないかを竜は聞いてみたが、その答えは否。
家の方が都合が良い用事とはいったいどんな用事なのだろうか。
ずん子の言葉に竜はもう一度首をかしげた。
「それじゃあ、私は自分の教室に戻るわね。放課後に迎えに行くから待っていてね?」
「あ、はい。分かりました」
そう言ってずん子はヒラヒラと手を振って教室から出ていった。
イタコ先生の用事がどんなものかは分からないが、家に呼ぶということはそれくらいには重要な用事なのだろう。
とりあえずはそう納得して竜は椅子に戻るのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ