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竜が教室でFGOの周回をし始めてから数分後、ずん子が教室の扉を開けて入ってきた。
ちなみにスカスカシステムを使っていたために周回自体は数回ほどできていた。
短時間でぐるぐると周回できるのがスカスカシステムの利点である。
「お待たせ。ごめんなさい、少しだけホームルームが長引いちゃったの」
「いえ、そんなに待ってませんので」
ずん子は教室に入って竜の近くに行くと、手を合わせて軽く謝った。
FGOを止め、スクールバッグを手に取りながら竜は答える。
教室間だけの移動にしては時間がかかるなとは思っていたが、ホームルームが長引いたのであれば教室に来るのに時間がかかってしまったのも仕方がないだろう。
「それで、ええと・・・・・・。公住くん、そちらの子たちは?」
「えっと、それぞれイタコ先生に聞きたいことがあるらしくて・・・・・・」
竜の後ろで自分たちのスクールバッグを持ったゆかりたちを見ながらずん子は竜に尋ねる。
ずん子の言葉に竜は言いにくそうに答えた。
竜自身、ゆかりたちに帰る様子がないことは気になっていたが、まさかついてくるつもりだとは思ってもいなかったのだ。
「イタコ先生の美容の秘訣とか聞いてみたいんよ」
「あ、ボクもお姉ちゃんと同じです」
「肩こりの相談を少ししたいかなー」
「美味しい地方の食べ物を聞いておきたいなぁと思いまして」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・胸を大きくするための秘訣を」
「そうね。イタコ姉さまの用事が終われば話を聞く時間もとれるでしょうし。一緒に行きましょうか」
ずん子の視線を受け、ゆかりたちは順番についていきたい理由を言っていく。
ゆかりの声だけ異様に小さく、竜たちの耳にはなにも聞こえなかったが、ずん子の耳には聞こえていたらしく、どことなく納得したような表情を浮かべた。
そんなずん子の表情にゆかりは少しだけ不満そうな表情を浮かべるのだった。
そして、竜たちは東北家へと向かうために学校をあとにした。
◇ ◇ ◇
いつもと違い、ずん子がいるということで竜たちはどことなくぎこちない空気になりながら歩く。
ずん子自身もなんとなくそれを察しているが、どうしたら良いのかは思いついていないようだ。
「ごめんね?いきなり家に誘ったりして。ビックリしてしまったでしょ?」
「まぁ、そうですね。とくに呼ばれるような憶えもありませんでしたし」
歩きながらずん子は竜にいきなり家へと誘ってしまったことを謝る。
大切なことであるとは分かっているのだが、それでもいきなり過ぎたとはずん子も思っていたのだ。
それでも早い段階で呼んでおいた方が良いのも事実。
それが分かっているからこそずん子とイタコは竜を家に誘ったのだ。
「お、猫だ」
「ほんまや。首輪もないし野良なんかな?」
「え、でもそれにしては毛並みがキレイじゃない?」
ふと、竜は近づいてきた猫に気がつき、しゃがんで頭を撫でた。
竜に撫でられて猫は気持ち良さそうに目を細める。
竜の言葉にゆかりたちも猫に気づいて近くに移動した。
茜の言うように猫に首輪は着いていないのだが、そのわりには汚れなどもほとんどなく、とても野良には見えなかった。
「ああ、この子はここら辺の家を渡り歩いている子ね。いろんな家でご飯をもらったりしているから人懐っこいのよ」
「だから竜先輩の方に近づいてきたんですかね?」
「おー、毛並みも良いけどお肉もフニフニだぁ」
見覚えのある猫にずん子は軽く猫の説明をする。
ずん子の説明にあかりは猫が近づいてきた理由に納得し、マキは猫のお腹を触って嬉しそうに喜んでいた。
そして、ひとしきり猫を堪能した竜たちは改めて東北家へと向かうのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ