・
ずん子が部屋に入ってから数分、竜は白銀色の体毛をしたキレイなキツネを撫でたりしながら待っていた。
イタコ先生がなにを探しているのかは分からないが、よっぽど小さいものかなにかで見つけにくいものなのだろう。
「なにを探してるんだろうなー?」
「クー?」
キツネの首もとから背中にかけてを優しく撫でながら竜はキツネに話しかける。
キツネの顔を見ながら竜が首をかしげると、キツネもそれを真似するように首をかしげた。
不思議そうに自分の動きを真似るキツネに竜は笑みをこぼす。
「コン!」
「おわっ?!」
不意にキツネが竜に勢いよく跳びかかる。
いきなりのことに竜は驚き、尻餅をついてしまった。
尻餅をついてしまった竜のことを気にせずに、キツネは竜の服の隙間から服の中へと潜り込んでいってしまう。
竜の体と服の間はほとんど隙間がないようなもの。
そんなところになんの苦もなく潜り込んでしまったキツネに竜は驚き、慌てて胸元を引っ張って中を覗いた。
「コン!」
「ええ・・・・・・?」
中を覗くと先ほど潜り込んだキツネが普通に鳴き声をあげていた。
普通の動物としてはあり得ない事態に竜は0/1D6のSANチェックをおこなう。
「・・・・・・大丈夫、なのか?」
「クー!」
こんな隙間に入っているのだから息苦しいなどはないのか。
それが気になった竜はキツネに尋ねる。
するとキツネは嬉しそうに鳴き声をあげると、竜の服の端から尻尾を出してパタパタと振った。
嬉しそうに揺れる尻尾を見る限り、どうやら狭いとか苦しいだとかは感じていないらしい。
竜が服の中を覗いてキツネを見ていると、襖が開いてずん子が部屋から顔を出した。
それと同時にキツネは竜の服の端から出していた尻尾を服の中にしまいこむ。
「待たせてしまってごめんなさい。少しだけ予想外のことが起きちゃっていて・・・・・・。とりあえず話をする分には問題はないから部屋に入ってもらえるかな?」
「あ、はい。分かりました」
部屋から顔を出したずん子は竜が服の中を覗いていることに首をかしげるが、とくに気にせずに待たせてしまったことを謝った。
ずん子の言葉に竜は服の中を覗くのを止め、部屋の中へと入った。
「ちゅわ、お待たせしてしまってすみませんでしたわ」
「・・・・・・えっ?」
部屋の中に入った竜は謝るイタコ先生の姿を見て驚いて固まってしまう。
驚きに固まる竜の姿にずん子とイタコ先生は苦笑を浮かべた。
「く、黒・・・・・・?」
イタコ先生を見ながら竜は、思ったことを言う。
黒といっても先ほどずん子が部屋に入る際に見えてしまった黒い三角形の布のようなもののことではない。
竜が見ていたのはイタコ先生の顔。
より正確に言うのならイタコ先生の髪の毛を見て竜は驚いていた。
昨日、竜が保健室でイタコ先生を見たときはキレイな白銀色の髪色をしてキツネのような耳を生やしていた。
しかし、今竜の目の前にいるイタコ先生は、カラスの濡れ羽のようなキレイな“黒色”の髪の毛でキツネのような耳を生やしていなかった。
今まで見てきたものからいきなり変わったイタコ先生の姿に竜は思わずずん子へと視線を向ける。
「やっぱり驚くよね。大丈夫、髪の色は違うけどイタコ姉さまで間違いはないから」
「は、はあ・・・・・・」
竜の視線の意味に気がついたずん子は苦笑しながらちゃんとイタコ先生本人であると説明をする。
家族であるずん子が言うのであれば本当にイタコ先生で間違いないのだろう。
改めて竜はイタコ先生を見た。
「驚かせてしまって申し訳ないですわ。ちょっと予想外の事態が起きてしまったもので・・・・・・」
「えっと、予想外っていうのはその髪の色に関係が・・・・・・?」
イタコ先生の言葉に竜は、黒色の髪の毛のイタコ先生という見慣れない姿に戸惑いながら尋ねるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
-
佐藤ささら
-
鈴木つづみ