UA120000を越えたので番外話です。
ヤンデレといっても作者のイメージするヤンデレですので好みが分かれるかもしれません。
それでもよろしければ読んでください。
なお、本編のネタバレも含まれますので気をつけてください。
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太宰府天満宮のご神木“
その生活が変わったのはある学校が創設されたときったい。
その学校の創設者が言うには、ご神木である
最初、“飛梅”を管理している宮司さんは肯定的ではなかったっちゃけど、創設者さんの思いを聞いて最終的にはその学校に“飛梅”の枝を分けて挿し木をすることを認めたったい。
そして、その学校に植えられた“飛梅”はいまもなお枯れることなく綺麗な花を咲かせている。
「それにしても、相変わらずキレイな梅の花だよなぁ・・・・・・」
「というかどの季節でもずっと咲いてるってどういうことなん?」
学校の中庭に植えられている
“飛梅”は
「えへへぇ~、そんなキレイなんて言われてもなんもでんよ~?」
「いや、出てる出てる。梅の花びらが舞ってるから」
なんとかボクはにやけるのを我慢していたが、あっさりとひめが身体をくねくねとくねらせながら周りに梅の花をポンポンと咲かせていた。
ひめのそんな様子に竜さんは思わず軽いツッコミを入れていた。
「んん!・・・・・・ええっと、この梅の木の花が散らない理由でしたっけ?」
「せやね。普通の木やったら枯れてるような季節でも、この梅の木は咲いとるから気になっとったんよ」
軽く咳払いをしてボクは首をかしげていたついなさんの疑問を確認する。
たしかに
といっても最初からこのように枯れないわけではなく。
ある程度成長してから
「えっと、簡単に言ってしまうとこの梅の木は太宰府天満宮にあるご神木である“飛梅”の枝から挿し木されたもので、ボクたちが宿っている特別な梅の木なんです。それで、ボクたちが宿ることによってこの梅の木には霊力が流れて循環し、いつまでも花を咲かせ続けることができるようになるんです」
「ほーん。そんな理由があったんやねぇ」
ボクの説明についなさんは納得したのか、うんうんとしきりにうなずく。
それから、
◇ ◇ ◇
学校の中庭でのんびりと梅の花を見た翌日。
竜はついな、ひめ、みことの4人で町を歩いていた。
「天気が良くて心地いいっちゃね~」
「風もそんなに強くないし、絶好のお散歩日和ですね」
竜の手をそれぞれ掴みながらひめとみことは気持ちよさそうに目を細めながら言う。
これまでは太宰府天満宮か学校の周囲くらいにしか出歩くことができなかったために、こんな普通の散歩ですら2人にとっては楽しいものに感じられるのだ。
「ん、この辺にはこんな花が咲いているのか」
「おー、ちいちゃくてかわええなぁ」
ちらりと竜が道の端に目をやると、そこには何種類かの花が可愛らしく植えられていた。
色とりどりの花の姿に竜とついなは表情を和らげる。
不意に、植えられている花を見ていた竜の手をひめとみことが強く引っ張る。
「うぉ?どうしたんだ?」
「んー、早く行くっちゃよー!」
「はい。立ち止まっているなんてもったいないですから」
急に手を引っ張ってきた2人に竜が尋ねると、2人は竜の手を引きながら早く先に行こうと答える。
2人の急かす様子に竜とついなは顔を見合わせ、苦笑して先に向かって歩き始めた。
前を向いて歩き始めた竜とついなは気づかなかった。
先ほど竜とついなが見ていた花をひめとみことが冷たい目で見ていたことに。
後日、この辺り一帯の花が枯れるという事件が起こったのだが、ついぞその原因が分かることはなかったらしい。
◇ ◇ ◇
ついな、ひめ、みことをつれて竜は公園へと到着する。
公園には家族連れやカップル、老夫婦などさまざまな人たちの姿があった。
「うんうん。やっぱり元気な人の姿があるのは良いもんったいね」
「公園だといろいろな人が見れて良いね」
周囲を歩いている人たちの姿を見ながらひめとみことは嬉しそうに言う。
やはりご神木に宿っている精霊ということで元気な人の姿を見ることが好きなのだろう。
公園に着いてからついな、ひめ、みことの3人は竜の霊力を使って実体化しており、誰の目からでも見えるようになっていた。
「竜お兄さん、ちょっとあっちの方に行ってみんー?」
「あっちって・・・・・・、植物の迷路か。いいぞ」
ひめが指さした先にあったのは植物でできた壁の迷路。
この迷路はこの公園に設置されている遊具の1つであり、植物でできた迷路を抜けて遊ぶというシンプルな遊具だ。
ひめの提案に竜はうなずき、植物の迷路へと向かって行く。
その後を追うようについなとみことも歩いて行った。
「こっちは・・・・・・、行き止まりか。意外と面白いなこの迷路」
「せやね。ご主人でも先が見えないような高さの壁やし、なかなかに楽しめる遊具やと思うで」
植物の迷路に入って数分後。
竜たちは出口を目指して迷子になっていた。
公園の遊具なのだから簡単に脱出できてしまうのではないかと思っていたのだが、予想に反して簡単に脱出ができないでいた。
「けっこう難しいっちゃね~?」
「ううん。どの道が正解かな・・・・・・」
コテンと首をかしげながらひめとみことが呟く。
どうやら2人もどの道が出口につながっているのかが分からないらしい。
「とりあえず適当に歩いて行ってみるかー」
「それしかなさそうやね」
「頑張って歩くったーい!」
「まぁ、立ち止まっているよりもいいですよね」
どの道に進むかを考えるのを止め、竜は歩き始める。
この場にとどまって頭を悩ませるよりも歩き回って道を調べた方が有益だと竜は判断したのだ。
歩き出した竜の後をついな、ひめ、みことの3人も追いかけていく。
それから、竜たちが迷路から脱出できたのは10分ほど経った後だった。
◇ ◇ ◇
ひめたちと出かけた日の夜。
竜はなにか不思議な香りを感じて目を覚ました。
「これは・・・・・・、花の香り・・・・・・?」
竜が鼻で息を吸うと、なにかしらの花の香りを感じることができた。
どこかで嗅いだ覚えのある花の香りに首をかしげながら竜は香りの出所を探りに行く。
客間やリビング、トイレなんかも調べながら竜は匂いの出所を探っていくのだが、どこからも花の香りはしてこなかった。
「どこから・・・・・・、ん?」
花の香りの出所を探っていた竜は、不意に玄関の方がわずかにだが香りが強いことに気がついた。
警戒をしながら竜は玄関へと近づいていく。
「これは・・・・・・、梅の木?!」
玄関に着いた竜の目に飛び込んできたのは、玄関の扉を埋めるように生えた巨大な梅の木だった。
直後に梅の木から伸びた枝が竜の足に絡みつく。
「竜おにーいさん」
「竜さん、ボクたちに身をゆだねてください」
「ひめとみこと?!」
絡みついてきた枝をどうにか剥がそうとしていると、梅の木からひめとみことの姿が現れた。
ひめとみことの姿が現れたことに竜は驚き、声を上げる。
「えへへ~、竜お兄さんはうちらのことだけをキレイって思ってたらええんよ~?」
「ですからボクたちの中にいれてずーっと一緒になりましょう?」
どこかドロリとした暗い目を竜に向けながらひめとみことは言う。
どうやら昼間に竜が植えられている花のことを見ていたことが気に入らなかったらしい。
そのまま、竜の足に絡みついた枝はずりずりと竜のことを引っ張っていく。
体を引かれながら竜はどうにか足に絡みついている枝を引き剥がそうとするのだが、がっちりと絡みついているために引き剥がすことができずにいた。
「くっ、やめ・・・・・・」
「ふふふ、これで、ずっと一緒っちゃね?」
「これからずっと永遠に竜さんはボクたちと一緒ですよ」
抵抗むなしく竜の体がひめとみことのいる梅の木に到達する。
竜が近くに来たことを確認したひめとみことは嬉しそうに竜の体に抱き着く。
そして、2人が竜の体に抱き着くと、そのまま梅の木の中へと竜ごと沈んでいくのだった。
翌朝、学校の中庭に植えられている梅の木の根元に大きなこぶのようなものができていたのだが、それがなんなのか分かる人間はどこにもいなかった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その12
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