変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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第142話

 

 

 

 

 きりたんの操作するクラス“エトワール”のキャラクターによってモンスターたちが蹂躙されていく。

 レベルにあった難易度に挑んでいればそんなことは滅多に起きないのだが、きりたんは格好をつける為だけに2つほど低い難易度に来ていた。

 

 持ち手の前後に刃のついた武器“ダブルセイバー”が振るわれることによって無数の光剣が発生してモンスターたちを切り刻む。

 

 両手に1本づつ剣を持った双剣“デュアルブレード”がモンスターを切り裂いたかと思えば1振りの巨大な剣へと合体してモンスターを一刀のもとに切り裂く。

 

 T字型ではないハンマーのような短杖“ウォンド”が光を発しながらモンスターを吹き飛ばすと追撃をするように光線がモンスターを撃ち抜く。

 

 次々と繰り出される攻撃と、倒されていくモンスターたちに竜は楽しそうにテレビ画面を見ていた。

 

 

「おー!」

「ふふふふ、どうですか?」

 

 

 モンスターが倒されるたびに聞こえてくる竜の声にきりたんは自慢気に言う。

 そもそもとして、竜のことを“ワンキル男”と言って嫌そうにしていたのに普通にプレイして見せていることに違和感を感じるかもしれないが、これには簡単な理由があった。

 

 まず、前提としてきりたんは他の人よりも自分の方がゲームなどは上手いと思っており、自分より上手いと認めたか一緒にプレイしていて楽しいと思える相手以外には基本的にクソガキムーブをする。

 まぁ、そのせいで最終的に敗北するまでがきりたんの動画での様式美になっているのだが。

 

 閑話休題(それはともかくとして)

 

 今回は竜が気になっていたゲームと言うことで、きりたんに聞くような形で話しかけていた。

 このことからきりたんの中では、少なくとも“ファンタシースターオンライン2”に関しては自分の方が上だという構図になる。

 そしてプレイして見せれば竜のリアクションがとても心地よいものだったために、気分よく解説などをするようになったのだ。

 

 これが、きりたんが普通に竜にプレイしているところを見せた理由だった。

 

 

「100000とか普通にデカいダメージが出てくるのは爽快感があって良いな!」

「そうでしょうそうでしょう!この爽快感はモンハンとかとは違ったものがあるので私も気に入っているんですよ!」

 

 

 竜の言葉にきりたんはニンマリと嬉しそうに笑みを浮かべながら答える。

 その姿からは竜のことを“ワンキル男”と言って嫌そうにしていたとはとても思えなかった。

 不意にきりたんのお腹が小さく鳴る。

 時計を見ればたしかに小腹が空いてくるような時間を指し示していた。

 

 

「少しお腹が空きましたね。ずん姉さまのずんだ餅があるので食べましょうか」

「生徒会長の?それって勝手に食べて大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ。暇があれば勝手に作ってるんで少しでも消費したいんです」

 

 

 ちなみに、東北家にはずんだ餅が基本的に常備されているのだが、これはきりたんの言っているようにずん子がいつの間にか作ってしまっているからである。

 ずん子にとってずんだ餅を作るのはもはや日常なので、これに関しては誰に言われても止まることはないだろう。

 

 そして、きりたんはずんだ餅をいくつかお皿に乗せて台所から戻ってきた。

 

 

「へぇ、これを生徒会長が作ってるのか」

「そうですよ。あ、すみませんがそこに座ってもらえますか」

「ん?ああ、分かった」

 

 

 お皿に乗ったずんだ餅はとても美味しそうで、とても手作りには見えなかった。

 ずんだ餅を見ていた竜にきりたんは座る場所を指示する。

 きりたんの言葉に竜は不思議そうに首をかしげたが、とくに断る理由もなかったので指示された場所に座った。

 

 そして、きりたんはずんだ餅を座った竜の隣に置く。

 

 

「よ、っと・・・・・・」

「ちょ、きりたん?!」

 

 

 ずんだ餅を置いたきりたんは、とくに躊躇うことなく胡座(あぐら)を組んでいた竜の膝(●●●)に座った。

 いきなりのきりたんの行動と、膝に感じるきりたんの重さと体温に竜は驚いて声をあげる。

 

 

「じゃ、私はゲームを続けるんでずんだ餅を私に食べさせてください」

 

 

 驚く竜のことなど知ったことかと言わんばかりの態度できりたんはゲームを再開する。

 竜が東北家に着いたときの態度はなんだったのだろうかと思える光景がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰のヤンデレが読みたいですか? その16

  • 佐藤ささら
  • 鈴木つづみ

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