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口を開いたきりたんの小さな口に緑色の和菓子、ずんだ餅を運ぶ。
口の近くに運ばれたずんだ餅に気づいたきりたんはテレビ画面を見ながらずんだ餅にかじりつき、ずんだ餅を少しだけ噛み千切った。
もにゅもにゅと動くきりたんの口を見ながら、次にジュースの入ったコップを手に取りストローをきりたんの口に近づける。
口の中のずんだ餅を飲み込んだきりたんはストローを咥えてジュースを飲んだ。
「んく、んく・・・・・・、ぷはぁ」
きりたんがジュースを飲むのを止めたのを確認した竜はずんだ餅を取り、今度は自身の口に運んだ。
柔らかな餅の弾力とずんだの甘さが口の中に広がり、気がつけば竜は手に取ったずんだ餅をペロリと食べてしまっていた。
「ずん姉さまのずんだ餅はそこら辺で売っているものよりも美味しいですからね。味わって食べると良いですよ」
「そうだな。ありがたくそうさせてもらうよ」
テレビ画面を見ながらきりたんは竜がずんだ餅を食べたことに気がついたのか、テレビ画面から目線を逸らすことなく言った。
きりたんの言葉に竜は次のずんだ餅を手に取りながら答えるのだった。
「ところで・・・・・・、なんで膝に座ってるんだ?」
「だって他の場所だと食べさせてもらいにくいじゃないですか」
きりたんがいきなり膝に座ったことによって生じた驚きから回復した竜は努めて冷静にきりたんに尋ねる。
膝に感じる子供特有のやや高めの体温と、プニプニとした柔らかな感触。
そして茜や葵よりも軽いその体重。
それらのことからきりたんが膝に座っていることは苦ではなかったのだが、それでも気になったために竜はきりたんに尋ねたのだ。
竜の言葉にきりたんはあっさりと竜の膝に座った理由を答えた。
「・・・・・・そうか」
「そうなんです」
あまりにもきりたんがアッサリと理由を言ったため、竜は少しだけ脱力して呟いた。
まぁ、仮に竜がきりたんに膝の上から退くように言ったとしても、きりたんがそれに従うかどうかは不明なのだが。
きりたんの答えに脱力した竜は、ずんだ餅によって少しだけ汚れた手をウェットティッシュでキレイに拭き取る。
キレイに拭き取ったことによって手についていたずんだが他のものについてしまう心配がなくなった。
そして、キレイになった手を竜はきりたんの頭の上にポムリと乗せた。
竜の手が自身の頭の上に乗っているというのにきりたんはとくに反応らしい反応も見せない。
「すごいサラサラだな」
きりたんの髪の毛を
竜に髪の毛を触れられ、きりたんはピクリと小さく体を揺らすが、とくになにかを言うことはなかった。
きりたんの髪の毛はとてもサラサラとしており、竜の膝に座っているということもあってきりたんの頭はとても触りやすい位置にあった。
「あの、ずんだ餅をお願いします」
「ん、分かった」
竜がきりたんの頭を撫でていると、不意にきりたんがずんだ餅を要求してきた。
きりたんの言葉に竜は撫でていない方の手でずんだ餅を手に取り、きりたんの口へと運んだ。
運ばれてきたずんだ餅にかじりつきながら、きりたんは徐々に体から力を抜いて竜の方へと寄りかかっていく。
膝に座っていただけよりも更に密着してきたきりたんに竜は少しだけ驚くものの、とくに怒ったりする理由もなかったためきりたんの好きにさせていた。
もしも自分に妹がいたのならばこんな感じなのだろうかと考えながら竜はきりたんの頭を撫でる。
「・・・・・・にぃ・・・・・・」
「うん・・・・・・?」
ふと、きりたんが小さくなにかを呟いたような気がして竜はきりたんを見る。
そんな竜の視線から逃れるようにきりたんは“ファンタシースターオンライン2”で大きな必殺技を連発するのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ