変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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第146話

 

 

 

 

 竜に飛び付いてきたキツネの姿にきりたんは少しだけ驚いた表情を浮かべるが、落ちそうになったわけでもなかったのでとくにはなにも言わなかった。

 竜ときりたんが仲良くなっていることに呆けていたイタコ先生は竜にキツネが飛び付いていることに気がつくと、諦めたようにため息を吐いた。

 

 

「はぁ、またですの?」

「なんというか・・・・・・、すみません」

 

 

 とくに竜が悪いというわけではないのだが、それでも竜は申し訳なく感じてしまってイタコ先生に頭を下げる。

 そんな竜のことなど気にもせずにキツネはスリスリと竜の体に自身の体をすり付けるのだった。

 

 

「いえ、むしろいる場所がハッキリとしてるだけまだマシだと思うことにしますわ。家にいる間は任せしてしまってもいいかしら?」

「イタコ先生が良いなら自分は構いませんけど・・・・・・」

「コンッ!」

 

 

 フルフルと頭を横に振って思考を切り替えてイタコ先生は言う。

 キツネがどこかに行ってどこにいるかわからなくなるよりは竜の近くにいて好きにさせている方が所在も把握できるのでまだ安心ができる。

 そう考えることにしたイタコ先生は竜に尋ねた。

 イタコ先生の言葉に竜はチラリとキツネを見て答える。

 その間もキツネを撫でる手は止まっておらず、キツネは嬉しそうに竜に撫でられながら鳴き声を上げた。

 

 

「それじゃあ、こちらの家にいる間は預かっていますね」

「ええ、お願いしますわ。この家の中でしたら“結界”も張ってありますのでよっぽど強い霊でもない限り安全ですし」

「家の“結界”を破ってくる霊なんて私も見たことがないので心配することはないですよ」

 

 

 竜の言葉にイタコ先生はうなずく。

 それと同時にイタコ先生の髪の毛の色が白銀から黒色へと変わり、頭から生えていたキツネ耳が消えた。

 どうやら先ほどまではまだイタコ先生とキツネとの間に繋がり(パス)があったようで、いま完全に繋がりを一時的に解除したようだ。

 家に張られている“結界”があればなにも心配入らないときりたんは言う。

 きりたんの言葉が竜にはフラグのようにも思えたが、とくにできることもないためになにも言わなかった。

 

 

「そういえばタコ姉さまはどうしてこちらに?」

「あ、そうでしたわ。ちょっと前に預かったお面の様子を見に行こうと思っていましたの」

 

 

 トイレの近くで話し込んでしまっているが、イタコ先生はトイレに入ろうとしていたのではないのか。

 そう考えたきりたんはイタコ先生に尋ねる。

 きりたんに尋ねられてイタコ先生は元々の目的を思い出したのか、向かう予定だった部屋を指差した。

 

 

「お面って・・・・・・、ああ、あれですか」

「ええ、とくには強い力も感じなかったから持ち主さんの気のせいだとは思うのですけど、一応はね?」

 

 

 イタコ先生の言うお面を思い浮かべたきりたんは納得したようにうなずく。

 東北家は代々強い霊力を持っている者が多く、その関係で徐霊などの副業をして生活をしていた。

 イタコ先生の言うお面もそれ関係で持ち込まれたものだった。

 

 お面がどんなものかを知らない竜は2人の言葉に首をかしげる。

 

 

「霊関連ならこの子は一緒にいた方が良いのでは?」

「いえ、本当に強い力もなにも感じなかったので大丈夫ですわ」

 

 

 強い力を感じなかったとは言っても油断は禁物ではないのかと考えた竜は体にくっついているキツネを指差しながらイタコ先生に尋ねる。

 竜の言葉にイタコ先生はヒラヒラと手を動かしながら答えた。

 イタコ先生が大丈夫だと言うのなら本当に大丈夫なのだろう。

 そう考えた竜はお面が保管されているという部屋にイタコ先生が入っていくのをきりたんとキツネと一緒に見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰のヤンデレが読みたいですか? その16

  • 佐藤ささら
  • 鈴木つづみ

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