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イタコ先生がお面の保管されている部屋に入っていくのを見届けた竜は、肩車をしているきりたんの位置を調整するように軽く上に跳ねる。
それによってきりたんの体は少しだけ上に跳ね、軽い衝撃と共に竜の肩に着地する。
突然の衝撃にきりたんは驚いた表情を浮かべるが、肩車をしている竜には見えていなかった。
「んじゃ、居間に戻るか」
「ですね。さぁ、行くのです!リョウンゲリオン発進!」
「コンッ」
イタコ先生が入っていった部屋から視線を戻し、竜は居間に向かって歩きだす。
歩き始めた竜の頭をペシペシと軽く叩きながらきりたんはどこかで聞いたことのあるような名前で竜を呼ぶ。
竜に飛び付いていたキツネはイタコ先生と話す前の時のように竜の服の中へと潜り込み、胸元からヒョコリと頭を出していた。
「それにしても、タコ姉さまのキツネがそこまで懐いているのは意外でしたね」
「うん?そんなに珍しいことなのか?」
イタコ先生とずん子も驚いてはいたが、それは竜とキツネが一緒にいたことが理由だと思っていた竜はきりたんの言葉に不思議そうに聞き返す。
竜の言葉にきりたんはチラリと竜の胸元から頭を出しているキツネを見る。
「そうですね。というか、そもそもとしてこの子に気づける人自体がかなり希少なんで」
「あー、イタコ先生の使ってる“霊術”で気づけないのか」
「ですです」
キツネが懐いていることが珍しいとかそれ以前にイタコ先生の“霊術”を突破できる人の存在がそもそも珍しい。
事実として、きりたんが知っている中でイタコ先生の“霊術”を突破できるのは竜以外には両親くらいしか記憶にはない。
ちなみに、東北家の両親はそれぞれ霊能者と“いたこ”として全国を巡ったり、ときおりテレビに出演していたりする
とくに夏場はテレビ番組によく呼ばれているため、学校でも話題になるのだ。
「まぁ、それでもここまでくっついているのはタコ姉さま以外には本当に珍しいですね。私やずん姉さまも撫でたりはできますけどそこまでですし」
「そうなのか」
普通にくっつくどころか服の中に入り込んで密着をする。
きりたんやずん子ですら撫でるくらいしかできないというのにここまで懐くとなれば驚き以外にないのだ。
きりたんの言葉に竜はキツネの頭を撫でながら答えた。
「っと、ただいま戻りましたー」
「戻りました!」
「あら、おかえりなさい。2人ともとても仲良くなったのね?」
居間に入るときにきりたんが頭をぶつけてしまわないように中腰になりながら竜は居間に入る。
ゆかりたちと話をしていたのか居間にはずん子の姿もあった。
ずん子は居間に戻ってきた竜ときりたんの姿を見ると嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「って、あら?」
「あ、イタコ先生に頼まれたんで一緒にいるんです」
「私たちよりも懐いていますよね」
居間に戻ってきた竜ときりたんを見たずん子は、竜の胸元から見えるキツネの姿に気づいて不思議そうに竜とキツネを交互に見る。
ずん子の視線に気がついた竜は、自身の胸元にキツネが入っている理由を答える。
竜の言葉にずん子は納得し、竜たちが何について話しているのかが分からない首をかしげた。
「あの、なんの話をしているのですか?」
「一緒にいるとか、懐くとか言うとったけど生き物なんか?」
竜たちの話の内容が気になったのか、ゆかりは尋ねる。
さらに竜たちの会話の内容が聞こえていたのか茜も尋ねた。
2人の言葉に竜はチラリとずん子を見る。
キツネに関して話して良いのかが分からないため、竜はずん子が口を開くのを待った。
「そうね・・・・・・。聞いた内容を誰にも話したりしないって約束できるのなら教えてあげるわね?」
少しだけ脅すように威圧感を放ちながらずん子は言う。
そんなずん子の様子に軽い調子で聞いていたゆかりたちは驚いたように顔を見合わせるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ