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イタコ先生の運転する車の中。
竜は助手席に、マキとあかりは後ろの席に座っていた。
車に乗る前はマキとあかりのどちらが竜と一緒に後ろの席に乗るかを争いそうになっていたのだが、多少は慣れている茜や葵ならともかくとしてマキやあかりと並んで座ることに照れを感じてしまった竜がいち早く助手席に乗ったため、その争いが起きることはなかった。
「それにしても、きりたんはスゴかったね」
「ですね。竜先輩にしがみついていましたし・・・・・・」
車に乗っている4人の頭の中に浮かぶのはイタコ先生が帰ってきたので車に乗るために外に向かおうと竜が立ち上がったときのきりたんの行動。
どんな行動をきりたんがしたのかというと、きりたんは竜が立ち上がった瞬間に素早く立ち上がると、勢いよく竜の腰にしがみついたのだ。
聞けば竜を送るのについていきたいということでしがみついたらしい。
しかし、学校で出た宿題が終わっていないということでずん子から許可が降りず、無理やり引き剥がされてしまう。
引き剥がされたきりたんはジタバタと手足を動かして逃れようとしたが、そこは姉妹ということで慣れているずん子に軍配が上がり、逃れることは叶わない。
逃げられないと理解したきりたんは竜に向かって手を伸ばして無言の
そんなきりたんの姿に竜は苦笑し、連絡先を教えることで落ち着かせるのだった。
まぁ、連絡先を教えた結果が今もなお鳴り続けている竜のケータイなのだが。
「それにしても、なんで急にきりたんに好かれたんだろうね?」
「私たちがイタコ先生と話をして戻ってきたときにはもうあんな感じでしたよね」
きりたんから送られてくるメッセージに返事をする竜の姿を見ながらマキとあかりは竜がここまできりたんに好かれた理由を考える。
2人が考えているといつの間にか車はマキの家“cafe Maki”に着いていた。
車が止まったことに気がついたマキは自身の荷物を手に取ると車から降りる。
「送ってくれてありがとうございました。2人ともまたね」
「いえいえ、どういたしましてですわ」
「おう、またな」
「はい。おやすみなさいです」
手を振るマキに竜たちも手を振って応える。
そして、マキが家に入ったのを確認したイタコ先生は車を発進させる。
「お2人はこちらの道で合ってましたわよね?」
「はい、合ってますよ」
ゆっくりと車を走らせながらイタコ先生は道が合っているかを確認する。
イタコ先生の言葉にケータイの音が鳴り止んだ竜はうなずいて肯定した。
きりたんからのメッセージが止まったことから考えるに、おそらくはずん子に見つかってケータイを没収されたのではないだろうか。
「あ、そうですわ。今後もうちの子が公住くんのところに行くかもしれませんから、連絡先を教えてくれませんか?」
「あー、その方が楽ですもんね」
「たしかに見ていた感じだとかなりの確率で竜先輩のところに行きそうですよね」
運転をしながらイタコ先生は思いついたように竜に言う。
たしかにイタコ先生の言うように、イタコ先生のキツネは竜のもとに来ることが多くなると考えられるので連絡先を交換しておくに越したことはないだろう。
また、東北家でのことを考えるにきりたんも竜のところに来る可能性もあるので、その点でも連絡先の交換は重要なことだと考えられるので。
「っと、着きましたわね」
竜とあかりの家の前に車を止め、イタコ先生は竜と連絡先を交換する。
ちなみに、学校関連でイタコ先生が連絡先を交換したのは教師間での連絡が必要なときのための交換を除けばこれが初であるのだが、とくに気にすることではないだろう。
そして、竜と連絡先の交換を終えたイタコ先生は手を振って帰っていくのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ