少し遅れてしまいました・・・・・・
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背後から迫ってくる心音。
それに合わせて鳴り響くギャリギャリという耳にこびりついて離れない異様な駆動音。
背後から聞こえてくる音を気にしつつ、竜は全力で廃病院を走る。
途中にある窓枠を飛び越え────
立てかかっている板を倒して道を塞ぎ────
複雑に曲がる道を利用して背後からの追跡者の視線から姿を隠す────
思いつくことすべてを使って竜は走る。
「はっはっはっはっ・・・・・・。撒いた、か・・・・・・?」
荒くなった呼吸を整えつつ、竜は周囲を確認する。
いつの間にか背後から聞こえていた音は聞こえなくなっており、逃げ切ることが出来たのだろうと竜はホッと息を吐く。
追跡者から逃れることが出来たのであれば次に竜がやるべきことは1つ、出口を開くために行動をすること。
呼吸を整えた竜は目的の場所に向かうために移動を開始する。
「たしか、こっちのほうに・・・・・・。よし!」
なるべく音を立てぬように気をつけつつ、竜は廃病院の中を歩く。
もしも迂闊に走ろうものならば追跡者に見つかってしまい、なにをされるか。
廃病院の中を移動していた竜は目的としていた機械を見つけ、急いで駆け寄った。
「・・・・・・へっ?」
竜が機械に駆け寄った直後、ちょうど曲がり角の影になっていたところから現れたチェーンソーを持った男に切りつけられてしまう。
全く予想していなかった事態に竜はなんとも気の抜けた声を漏らす。
そして、執拗に何度も何度もチェーンソーで切りつけられ、その光景が竜の見た最後の光景となるのだった。
「ぐあーーーっっ!!メメモリされたぁーー!!!」
テレビ画面に映される自身の操作するキャラクターの死亡表示に竜は大きく声をあげる。
メメモリ、正式名称は“メメント・モリ”。
これは消費型のアイテムで、これを使うことによって逃走者を殺すことができるようになるという、条件はあるがかなり強力な能力のことだ。
レアリティの低いものであれば1人しか殺すことはできないが、最高レアリティのものになれば全員を殺すことも可能になる。
竜が一番最初に死んだため、残っている逃走者は3人。
今後はこの3人のみでこの廃病院から脱出をしなければならなくなってしまった。
『マジか?!残りの発電機をうちらで直さないかんのか?!』
『残りの発電機は・・・・・・、3個ですか。ちょっと厳しいかもですね』
『こちらはもう少しなので残りは2個になりますね』
竜の操作するキャラクターが死んだことに気がついた茜、ゆかり、“KIRIKIRI”は驚きの声をあげる。
“DEAD BY DAYLIGHT”において逃走者の人数は生命線であり、1人減るだけで基本的には致命傷と考えても良いだろう。
まぁ、ときたまかなりうまい人がいて、ほとんど1人で終わりまで追跡者を引き付けたりすることもあるのだが。
操作するキャラクターが死んでしまって暇になってしまった竜は、茜たちの視点を見ていく。
「“赤青”の後ろを追いかけてきてるぞ!今のうちに発電機の修理を進めるんだ!」
『うおぉぉおお!捕まるわけにはいかんのやぁあっっ!!』
『了解です!』
『ちょっと間に合うかは不安ですけど・・・・・・』
茜────プレイステーション4におけるプレイヤーネーム“赤青”の操作するキャラクターが追跡者に追われていることに気がついた竜はゆかりと“KIRIKIRI”に発電機の修理をするように言う。
竜の言葉に2人は急いで発電機のもとに移動し、修理を進めていく。
その間、追跡者に追われている茜は声をあげて逃げ続けるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ