変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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ようやくゲームが終わります。




第162話

 

 

 

 

 懐中電灯を持った葵の操作するキャラクターが現れた瞬間、カニバルはフックに向かうのを止めて警戒するように葵の操作するキャラクターを見ていた。

 “DEAD BY DAYLIGHT”を知らない人間からすればたかだか懐中電灯になにを警戒しているのか不思議に思うかもしれないが、これにはちゃんと理由がある。

 

 “DEAD BY DAYLIGHT”において懐中電灯は殺人鬼を妨害するためのアイテムで、殺人鬼の顔を正確に照らすことによって殺人鬼の目を(くら)ませて数秒ほど視界を塞ぐことができるのだ。

 ただし動き回る殺人鬼の頭部に正確に光を当てることができなければただの懐中電灯なので無策で使うとあっさりと避けられて攻撃を受けてしまうのだが。

 

 

『ボクの光をくらえー!』

『まぁ、案の定当たっとらんわな。まぁ、それでも問題はないんや。なんせ・・・・・・、こっちの役割は時間稼ぎやからな』

 

 

 狙いをつけられていない葵の懐中電灯の光はカニバルの顔面に当たることはなく、見当違いの場所を照らしていた。

 しかし茜は葵が懐中電灯を外すことを想定していたのか、不適に笑みを浮かべながら答える。

 直後、カニバルに担がれてもがいていた竜が一際(ひときわ)大きく体を動かす。

 竜の体が大きく動いたことによってカニバルは担いでいた竜を取り落とした。

 

 

「助かった!ありがとう左乳首ライトアップマン!」

『ぶふぉっ・・・・・・、た、たしかにカニバルの左胸に・・・・・・くく、当たっとったな・・・・・・』

『もう!そういうことは言わなくて良いの!』

 

 

 カニバルに担がれているときにもがきながら葵がカニバルのどこを照らしているのかが見えていた竜はお礼を言いながら小屋のある方へ向かって走り出す。

 竜の言葉に葵の横でテレビ画面を見ていた茜は思わず吹き出してしまう。

 竜がカニバルから逃れることができたのを確認した葵は文句を言いながら竜と同じように走り出す。

 

 

『来ましたね。ここのゲートも開けてあるので先に行ってください』

『負傷している“D-ragon”さんは先に行って、私たちが肉壁になります』

「頼んだ!」

 

 

 カニバルから逃げた竜と葵がどうにか小屋までたどり着くと、ゆかりと“KIRIKIRI”が待っていた。

 2人も竜の救助のために行動はしていたのだが、葵1人で救助ができそうだと分かってすぐに次の行動に移っていたのだ。

 そのため、この2人は別になにもせずにここで待っていたわけではないのだ。

 

 カニバルから逃げる竜と葵の姿を確認したゆかりと“KIRIKIRI”は竜の後ろにつくように移動して走り出す。

 これは負傷している人間が攻撃を受けないように無傷の人間が壁になっているのだ。

 これによって負傷者は逃げ切れる可能性が高まり、犠牲者を減らすことに繋がる。

 

 

『くっ・・・・・・残り時間ギリギリ。でも、これなら!』

『痛っ・・・・・・脱出完了です!』

『うひゃあ?!』

「3人が防いでくれなかったら殺られてたな・・・・・・」

 

 

 攻撃を受けた人間はダメージを受けた衝撃で前方に飛び出し、自動的に次の人間がカニバルの前に肉壁として現れる。

 これによって竜たちはどうにか全員が出口から脱出することができた。

 竜が脱出して最後に見たのは、走っていく竜たちを寂しそうに見つめるカニバルの姿だった。

 

 

「ふぅ、どうにか全員が脱出できたな」

『そうですね。それも誰も吊られることなく』

 

 

 リザルト画面で竜は短く息を吐きながら呟く。

 正直、ここまでスムーズに脱出できたのはほとんど経験がなかった。

 竜の呟きに入手したブラッドポイントを確認していたゆかりが答える。

 そして、それからも何度か装備するパークを入れ換えたりしながらゲームを続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰のヤンデレが読みたいですか? その16

  • 佐藤ささら
  • 鈴木つづみ

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