変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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第165話

 

 

 

 

 新しく来店してきたお客の案内も終わり、竜は空いているテーブルを拭いていく。

 いつの間にかマキも戻ってきており、お客から注文を受けていた。

 

 

「そういえばさっきの生き物はどうなったんだろう・・・・・・」

 

 

 テーブルを拭きながら竜が思い出すのは先ほど店の奥の方の椅子で寝ていたぎゅんぎゅんと鳴く生き物のこと。

 今までに見たことのない生き物だったが、どことなくみゅかりさんと似ているように感じられ、竜は先ほどの生き物のことが無性に気になっていた。

 

 

「いつの間にかいなくなってたし・・・・・・、マキに聞いてみるか」

 

 

 新しく来店してきたお客の案内が終わってから竜は先ほどの生き物の方に行こうとしていたのだが、いつの間にかその姿はなく、仕方なく竜はテーブルを拭いていたのだ。

 “cafe Maki”の椅子に座っていたことや、マキの父親が知っていたこともあってこの店に関係があると考えて間違いはないだろう。

 そう考えた竜はマキの手があくのを待って話を聞くことにした。

 

 

「なぁ、さっき変わった生き物を店の中で見つけたんだが。なにか知っているか?」

「変わった生き物?」

「ああ、黄色い毛に(おお)われていて、ぎゅんぎゅんって鳴くんだ」

 

 

 竜の言葉にマキは不思議そうに首をかしげる。

 不思議そうなマキの言葉に竜はうなずき、簡単に生き物について説明をした。

 

 

「それは確かに不思議な生き物だね。とりあえず次の休憩の時にでも探してみたらどうかな?」

「そうだな」

 

 

 テーブルを拭いたりしながら生き物を探したりもしてみてはいたが、仕事をしながらのためにキチンと探すことはできずにいたため、竜はマキの提案にうなずいて仕事に戻った。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 前半の仕事が終わって竜は休憩に入り、さっそく先ほどの生き物を探し始める。

 先ほど見つけたのが店の奥の方の席だったのでそちらを確認してみたがそこにはおらず、竜は少しだけ残念そうに肩を落とした。

 

 

「ここにはいない、か。本当にいったいどこにいったんだ?」

 

 

 生き物の姿が見つからないことに竜は少しだけ落ち込みそうになったが、とりあえず気分を変えるために適当な替え歌である『白毛兎胸肉特上鍋御膳18000円』を鼻歌で歌い始めた。

 まぁ、替え歌といっても鼻歌でしかないのでけっきょくはもとの曲である『黒毛和牛上塩タン焼680円』となんの変化もないのだが。

 

 ちなみに白毛兎という部分に関してはとくに理由はないペコよ。

 

 

「竜くん、それなんの曲?なんか聞き覚えはあるんだけど・・・・・・」

「この曲か?『黒毛和牛上塩タン焼680円』だよ」

 

 

 竜が歌っている鼻歌が気になったのか、近くに来ていたマキは不思議そうに竜に尋ねる。

 マキの問いに竜は普通に聞けば曲のタイトルとは思えないタイトルを答える。

 

 

「・・・・・・お腹が空いたの?」

 

 

 竜の言った曲のタイトルにマキは首をかしげながら竜がお腹が空いたのかと勘違いをする。

 まぁ、曲のタイトルが紛らわしいのだから仕方がないだろう。

 

 

「いや、曲のタイトルが『黒毛和牛上塩タン焼680円』なんだよ。まぁ、鼻歌で分からなかっただろうけど替え歌のつもりだったんだがな」

「へぇ、そんなお腹の空きそうな曲名なんだ?」

「曲の内容は恋愛系だけどね。あとアニメのブラックジャックのエンディング曲だったな」

 

 

 竜の説明にマキは曲名からの印象で答える。

 

 ところでマキが仕事をしていないことが気になるかもしれないが、すでに店の中にいるお客の注文は聞き終えて運ぶのも終わっており、やることはすべて終わっているのだ。

 

 

「そういえばさっきの生き物が見当たらないんだけど・・・・・・」

「あー・・・・・・。ならあとで私が休憩に入ったら見つけておくから竜くんはちゃんと休憩しておきなよ」

「ん、なら頼むわ」

 

 

 竜の様子にマキは竜に休憩に行くように促す。

 マキの言葉に竜はうなずき、休憩をするために移動するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰のヤンデレが読みたいですか? その16

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