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弦巻家での晩御飯も普通になにごともなく終わり、竜は帰路を歩いている。
もはや弦巻家で晩御飯を食べるのが恒例になってしまっており、マキの父親ですら受け入れ始めていた。
「・・・・・・そういえば、けだまきまきってどこに住んでるんだろう?」
帰り道を歩きながら竜はふと思ったことを呟く。
“cafe MAKI”にいたのだから普通に弦巻家に住んでいるのかと思ったのだが、そのわりには晩御飯の時にはけだまきまきの姿はなかった。
もしかしたら個別でご飯をあげたりしているのかもしれないが、それでも姿を見れなかったのが少しだけ残念だった。
「うっ・・・・・・うっ・・・・・・」
「え、なんか泣いてる子がいる・・・・・・」
けだまきまきのことを考えながら歩いていると、道の端で泣いている女の子がいることに竜は気がついた。
今の時刻は7時を過ぎており、こんな時間に女の子が1人で出歩いているのはどう考えても不自然だった。
まぁ、もしかしたら両親が共働きで帰ってくるのが遅くて晩御飯を買ってくる必要がある女の子の可能性もあるが。
とはいえ、少なくともこれまで帰り道であのように泣いている女の子を見かけたことはないのでその可能性はほとんど無いと言えるだろう。
「うううっ・・・・・・、なんでうちがこんな目に・・・・・・」
少しだけ女の子に近づいてみれば、女の子が和服のような格好で頭に鬼のお面のようなものを着けていることが分かった。
さすがにこの時間帯で泣いている女の子を見捨てて帰るのも鬼畜が過ぎるような気がしてしまい、竜はどうしようか歩くのを止めて考え始めた。
「・・・・・・一応、声をかけてみるか」
時間も時間なのでそこまで長く考えずに竜は結論を出す。
どんな理由にしても女の子を放っておくことの方が心情的に辛いものがあるので、竜は女の子に声をかけることを決めた。
「キツネは怖いし・・・・・・、緑はずんだに変えてくるし・・・・・・、しかも一番ちっこいのは近くに行くだけでなんか削られるような感覚があるし・・・・・・、そりゃあうちの力はそんなに強くはないんやけど・・・・・・」
「えっと・・・・・・、こんな時間に出歩いているけどどうかしたんですか?」
ぶつぶつとなにかを呟き始めた女の子に少しだけ恐怖を感じつつも、竜は女の子に声をかけた。
「あ、すんません。ちょっと辛いことがあってしもうて・・・・・・」
「そうなんですか」
「ええ、そうなんですぅ。もう少ししたら帰ろうかと・・・・・・あれ?」
竜の言葉に女の子はペコペコと頭を下げながら泣いていた理由を答える。
ちなみに竜が自分よりも年下に見える女の子にわざわざ敬語で話している理由は、少しでも警戒されないようにという思いと、知らない女の子だということで若干の人見知りを発動しているからである。
竜に声をかけられて女の子は普通に返事をしていたが、答えている途中でなにかに気づいたのか竜の顔を驚いた表情で見た。
女の子が驚いた表情で自分を見てきたことに竜は不思議そうに首をかしげる。
「あんた・・・・・・、うちのことが見えるん・・・・・・?」
「え、そりゃあ、まぁ・・・・・・」
竜のことを見ながら女の子は恐る恐る尋ねる。
女の子の行っている意味がよく分からず、竜は首をかしげたまま答えた。
「あんな?驚かせてしまうかもしれんのやけど・・・・・・。うちは人間ではないんや・・・・・・」
「あ、幽霊だったの?」
少しだけ溜めを作って女の子は自分が人間ではないと竜に教える。
恐らくは驚かせたりしないようにするためにゆっくりと竜に教えたのだろうが、イタコ先生の前例があったために竜はそこまで驚くことはなかった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ