変わった生き物を拾いました   作:竜音(ドラオン)

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すでに正体は分かっているでしょうが、女の子もこの小説独自の設定となっております。

その辺りはご了承ください。





第170話

 

 

 

 

 イタコ先生の名前を聞いてから怯えるように震え始めた女の子の姿に竜は困ったように頬を掻く。

 竜からすればどうしてそこまで怖がっているのかが分からないので、不思議でしかなかった。

 

 まぁ、霊としての力の弱い女の子からすれば自分よりも明らかに強い霊力を持っている人間は恐怖の対象でしかないのだろう。

 

 

「ううぅ・・・・・・」

「あー・・・・・・、そんなにイタコ先生のとこに帰りたくないのか・・・・・・?」

「当然や!霊が好んで霊能者のとこに行きたいなんて思うかぁ!」

 

 

 女の子があまりにも帰りたくなさそうにしているので、竜は念のために確認をする。

 竜の言葉に女の子は感情が暴走し始めたのか、大きく声を上げる。

 

 

「何でもかんでも祓ったりするわけではないと思うんだがな・・・・・・。なら、うちに来るか?」

「うちに・・・・・・、って、あんたの家にか?」

 

 

 女の子の様子がなんだか不憫に思えてきた竜はとりあえずの案として女の子に提案をする。

 あまりにも突拍子のない案に女の子は驚き混じりの表情で竜を見る。

 もしもここにイタコ先生やずん子、きりたんの東北家の誰かがいれば即座にその案を却下していただろう。

 それほどまでに霊を家に招くという行為は危険なことが多いのだ。

 

 

「あんたが良いなら行ってもええとは思うんやけど・・・・・・、本当にええんか?もしかしたらうちが、イタコたちを欺くことができるほどに強くて危ない霊かもしれんのよ?」

「本当に悪い霊ならそんなことは言わないだろ。それに、今少し話しただけでも悪い子じゃなさそうに感じたし」

 

 

 無警戒に霊を家に誘う竜に女の子は心配そうに聞き返す。

 この場合、女の子が心配しているのは自分の身のことではなく、無警戒すぎる竜に対してである。

 

 女の子の言葉に竜は笑いかけながら答える。

 竜のあっさりとした言葉に女の子は思わず言葉を失ってしまった。

 

 

「・・・・・・本当に大丈夫なんか?」

「おう、遠慮はしなくて良いよ」

 

 

 女の子の呟きが聞こえた竜は、家に来ることは問題はないともう一度女の子に伝える。

 

 なお、女の子の呟きの意味は、こんなに簡単に幽霊のことを信じてしまう人間がこれからも普通に生活ができるのかという心配からの言葉であり、竜の捉えていた言葉の意味とはぜんぜん違うものとなっていた。

 

 

「そういえば君の名前は何て言うんだ?」

「うん?ああ、そういえばまだうちの名前を言うてなかったな」

「まぁ、それは俺もだけどね」

 

 

 竜の言葉に女の子はお互いに自分の名前を言っていなかったことを思い出す。

 そして2人は改めて向かい合う。

 

 

「えっと、公住(きみすみ) 竜だ。幽霊については少しだけ知ってるってところかな」

「うちは(えんの)ついなや。一応はこの鬼の面の九十九神、なんやけど・・・・・・、まぁ幽霊でも同じようなもんやね」

「いや、幽霊と九十九神は違くないか?」

 

 

 頭に着けている鬼のお面を竜に見せながら女の子────ついなは自分の名前とどういった存在なのかを竜に教えた。

 

 幽霊は死んだ人間の魂。

 それに対して九十九神は物が長い年月を経て妖怪化したもの。

 あきらかに別物なのだが、ついなはとくに気にした様子もなくあっけらかんと笑いながら答えた。

 そんなついなに、竜は自分の知っている知識から幽霊と九十九神の違いにツッコミをいれる。

 

 まぁ、そもそもとしてついなのことを幽霊だと言ったのは竜なのだが。

 

 

「というか九十九神ならもしかして俺よりも年上・・・・・・?」

「んー?そうは言うても、うちはたかだか140年程度の九十九神やし気にせんでもええよ?」

「むしろ人間からすれば一生以上の年月なんだが・・・・・・」

 

 

 どう見ても小学生か中学生程度にしか見えない外見のついなの年齢が100を越えているということに竜は驚く。

 とはいえ、九十九神からすれば100年を越えてようやく九十九神となれるので、その点から考えればついなもまだまだ九十九神としては若輩者ということになるのだろう。

 

 互いに名前を教えた2人は、そのまま竜の家に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰のヤンデレが読みたいですか? その16

  • 佐藤ささら
  • 鈴木つづみ

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