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竜たちはいつものように学校に着き、いつものように校門でマキと出会う。
繰り返される同じような日々だが、全く同じだということは一切なく。
常に何かしらに変化の起こるもの、それが世界というものだ。
「みんな、おはよー!」
「おう、おはよう」
「マキマキもおはようや」
「マキさん、おはよう」
「おはようございます。マキさん」
「おはようございます。マキ先輩」
元気に手を振るマキに竜たちは挨拶を返す。
マキの元気な挨拶についなも挨拶を返すのかと思ったが、どうやらイタコ先生の気配に気がついたのか学校に近づいた時点で隠れるように竜の制服のポケットに潜り込んでしまっていた。
竜はお昼休みにでも話をするために保健室に向かおうと考えているので、こんな調子で大丈夫なのかと心の中で苦笑するのだった。
「ふふふ・・・・・・皆さん、おはようございます」
「あ、生徒会長。おはようございます」
「今日は生徒会が校門に立つ日だったんですね」
竜たちのやり取りが微笑ましかったのか、ずん子が笑みをこぼしながら朝の挨拶をしてきた。
ずん子が声をかけてきたことによって今日は校門に生徒会に所属している生徒たちが並んで挨拶運動をする日だったことを竜たちは思い出した。
ちなみに、今日は生徒会に所属している生徒たちが校門に並んでいるが、昨日は茶道部に所属している生徒たちが校門に並んでいたし、一昨日はまた別の部活に所属している生徒たちが校門に並んでいた。
これはこの学校独自の挨拶週間の活動で、1日1つの部活が校門に並んで登校してくる生徒たちに挨拶をするという内容のものだった。
なお、2つの部活を兼任している生徒や、生徒会に所属している生徒はどちらか片方で活動をすればよく、帰宅部の生徒は一番最後に順番が回ってくるようになっている。
これだけを聞けばサボる生徒がいるのではないかと思うかもしれないが、この学校においてとくに重要視されているものは成績ではなく、授業態度や学校行事や活動に積極的に参加しているかなのでサボる生徒というのは基本的にはいないのだ。
「あら?公住くん、その鬼のお面・・・・・・」
「あ、これに関しては今日のお昼に保健室に行く予定です」
挨拶をしたずん子は竜のスクールバッグに小さな鬼のお面がつけられているのを見つけた。
東北家に持ち込まれたものということで当然ずん子も鬼のお面を確認しており、東北家からなくなった物と竜がスクールバッグにつけているものが大きさ以外全く同じだということに気がついていた。
「いきなりなくなったから気になっていたけど、それなら大丈夫ね」
「は、はい・・・・・・」
竜の言葉にずん子はホッとしたように息を吐きながら竜に笑いかける。
ずん子の笑顔に竜は少しだけ照れくさくなって目線を逸らしながら答えた。
それから少し話した後、ずん子は挨拶運動をするために戻っていった。
「ほなうちらも教室に向かうでー」
「そうだね。竜くんも行こう」
「いつまでもここで話しているわけにもいきませんしね」
「教室で荷物を置いてから話したいしねー」
「私としてはココくらいでしかお昼休みまで話す時間がないんですけど、1年生の教室は少し遠いですし諦めますね」
竜がずん子に照れているのが面白くなかったのか、茜たちは口々にそう言って竜の手を引きながら下駄箱まで移動する。
あかりだけは1年生ということで教室で話すことはできないのだが、2年生と1年生の教室の位置の関係から諦めることにしたらしい。
そして、靴から上履きに履き替えた竜たちはあかりと分かれて教室に向かうのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ