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授業が進み、昼休みになる。
昼休みになればお腹を空かせた生徒たちが食料を求めて食堂や購買へと押し寄せ、ヨダレでヨダレを洗うような苛烈な争いが起こるだろう。
そんな恐ろしき戦士たちの行軍を横目に竜はマキからお弁当を貰うのだった。
「毎度のことながら食堂とか購買に走っていくやつらは学校に来る前に買おうとか思わないんかね?」
「せやね。あんなに慌てて走ったら危ないんやし」
「でも誰かが怪我をしたっていう話は聞いたことないよね?」
「そういえばそうですね。誰かしら怪我をしてもおかしくはなさそうなんですけど」
「でも食堂でしか食べられないものとか、購買じゃないと買えないものもあるから仕方がないんじゃないかな?」
走っていく生徒たちを眺めながら竜たちは思ったことを口々に言う。
日によって人数に増減が多少はあるものの、それでもかなりの人数の生徒たちが食堂と購買に向かっており、この光景はもはやこの学校の名物のようなものになっていた。
なお、この時に誰がお昼を買えるかの賭け事がおこなわれていたりすることもある。
まぁ、結局は廊下を走っていたりするということと、賭け事をしたということから全員が教師に怒られるのだが。
「うん?」
ふと、竜は廊下を走っていく最後の生徒たちの中に小さな子どもの姿があったように感じる。
見間違いかと思って同じところを見るがすでに生徒たちが走り去ったあとで誰の姿もない。
気にはなったがここは高校なので子どもがいるはずがないと竜は首を横に振った。
「どうかしたんか?」
「ちょっと気になるものが見えたんだが・・・・・・、たぶん気のせいだろ」
竜が首を横に振ったことが気になった茜が竜に尋ねる。
茜の言葉に竜は、おそらくは見間違いだろうしとくに言う必要もないだろうと考え、首を横に振った理由を答えなかった。
そして、マキのお手製弁当を食べ終えた竜は保健室にいるイタコ先生に会うために保健室に向かうのだった。
◇ ◇ ◇
保健室に向かう竜はチラリと中庭に目を向ける。
この学校の中庭には太宰府天満宮から分けて貰ったという梅の木が植えられており、なぜか四季を通して散ることなく梅の花が咲き誇っていた。
「なんであの梅の木は枯れないんだろうな・・・・・・?」
「んー?」
入学してから常々気になっていたことを竜は呟く。
普通であれば春に咲いて秋ごろから枯れ始めるというのにこの学校の梅の木は枯れることなく雪の中ですら咲き誇っていた。
しかもその事を誰も疑問に思っている様子がないのだ。
その割には学校以外で冬に植物が生えていれば珍しいと驚く始末。
竜の言葉についなは竜の制服のポケットから顔を出して梅の木を見た。
「おー、キレイな梅の花やなぁ」
「そうだな」
梅の木を見たついなは嬉しそうに声を上げる。
ついなの反応に竜は笑いかけながら保健室に向かって歩みを進めた。
そんな竜とついなのことを見つめている2人分の視線に気づかぬまま。
「失礼します」
「あら、いらっしゃいませですわ」
竜が保健室に入ると、お茶を飲んでいたイタコ先生が気づいて返事をした。
イタコ先生が振り向いたのを確認した竜はスクールバッグから外しておいた鬼のお面をイタコ先生に見せる。
「あら?こんなに小さかったかしら?」
「えっと、よく分からないんですけど、朝、自分の霊力が流れ込んだと思ったらいきなり小さくなりまして」
竜の見せた鬼のお面の大きさが小さいことにイタコ先生は首をかしげる。
イタコ先生の言葉に竜は簡潔に今朝あったことを説明した。
それと同時に制服のポケットからついなを手に乗せてイタコ先生に見せる。
イタコ先生の前に出されたついなは怯えるように竜の手にしがみつくのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ