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竜の見せた鬼のお面を見たイタコ先生は続いて竜の手にしがみついているついなを見る。
イタコ先生の視線を受け、ついなは竜の手にしがみつく力をさらに強くした。
「あらまぁ、こんなに可愛らしい子がついていたんですのね」
「あれ、ついなのことを見たことはなかったんですか?」
「ええ、ですが九十九神ということとこの鬼のお面で分かりますから」
そっとついなの頭を撫でながらイタコ先生は微笑む。
イタコ先生の言葉に、竜はイタコ先生がついなの姿を見たことがないと知り、少しだけ驚いた表情を浮かべる。
竜の言葉にイタコ先生はうなずいた。
「そういえば・・・・・・、この子の名前を知っているんですのね?」
「はい、お互いに自己紹介をしまして」
竜がついなの名前を呼んでいることに気がついたイタコ先生は不思議そうに竜とついなを見る。
イタコ先生の言葉に竜は何か気になることでもあったのかと思いながら、ついなと顔を見合わせた。
「えっと、霊や妖怪などにとって名前とは特別な意味を持っていると言ったのは憶えています?」
「あ、はい。たしか、名前を知ればある程度自由に操ることができ、る・・・・・・とか・・・・・・。あ゛・・・・・・?!」
イタコ先生に言われ、竜はイタコ先生から聞かされたことを思い出しながら答えた。
霊や妖怪などにとって名前は特別であり、それを利用して悪用されないようにするためにイタコ先生は自身に宿しているキツネの名前を誰にも明かさないようにしている。
そこまで思い出した竜は自分が普通についなの名前を呼んでしまっていることに気がついた。
「もしかして、マズイ・・・・・・ですかね?」
「まぁ、不可抗力としておきましょうか」
「なんやご主人。なんかマズイことでもしてもうたん?」
自分がついなの名前を呼んでいることに気がついた竜は、ギギギ、と錆びた機械のようにぎこちなく首を動かしてイタコ先生を見る。
竜がうっかりでついなの名前を呼んでしまっていたのだろうということを理解したイタコ先生は、小さく息を吐いて仕方がないといった様子で答えた。
竜とイタコ先生の様子に、ついなは首をかしげながら尋ねる。
ついなが竜のことをご主人と呼ぶと、イタコ先生は驚いた表情でついなと竜を見た。
「ちゅわぁ・・・・・・。もしかして公住くんにはそういった趣味がありますの?」
「いや、違いますよ?!」
ついなの竜の呼び方が竜の指定したものではないのかと勘違いしたイタコ先生は、恥ずかしそうに顔を赤らめながら尋ねる。
イタコ先生の勘違いに気づいた竜は慌てて否定する。
竜とイタコ先生が慌てている原因が自分だとは思っていないついなは、2人の様子に首をかしげる。
「ご主人はうちの所有者になってくれるんやからご主人であっとるやろ?」
「え、でもこの鬼のお面は依頼されて来たものですし・・・・・・」
ついなの言葉にイタコ先生は困惑した表情で竜とついなを見る。
ついなの中ではすでに鬼のお面の所有者は竜として認識されており、東北家に持ってきた依頼主に関してはすでに記憶から削除されていた。
困惑した表情のイタコ先生に竜はなんと言ったら良いのか分からず、ポリポリと頬を掻く。
「えっと、その、すみません・・・・・・」
「・・・・・・はぁ、仕方がありませんわね」
おそらく何を言ってもついなの意思を変えることはできないだろうと察してしまった竜はイタコ先生に謝る。
竜の言葉にイタコ先生は息を吐いて依頼者にどう説明しようか考え始めるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ