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茜たちの主張を聞いていた竜はじょじょに正座をしているのが辛くなり────というよりも正座をし続けている理由もなかったのだが、足を崩して近くの椅子に座る。
竜が正座をやめたことに茜たちは気づいていたが、茜の言った一緒に暮らすという発言の話し合いをしていてとくになにかを言うことはなかった。
ちなみに、竜が正座をしているときから何回か保健室には他の生徒たちも来ていたのだが、竜と茜たちの様子に気がつくとなにも言わずにそっと保健室の扉を閉めてどこかに行ってしまっていた。
何人かはイタコ先生を目的とした生徒だったのだが、中には本当に体調の悪そうな生徒もおり、彼らがどうなったのかが竜は気になっていた。
「イタコ、どうやったら見えるようになっていられる時間が増えるんやろうか?」
「ちゅわ?」
竜たちのやり取りを見ながらついなは気になっていたことをイタコ先生に尋ねる。
ついなは九十九神としての力が弱いため、そこまで長い時間一般人にも見えるようになってはいられない。
見えるようになっていられる時間が延びても意味がないように思うかもしれないが、この見えるようになっていられる時間の長さが一番分かりやすい力の目安となるので長時間見えるようになっていられるというのはそれだけで力のある存在ということになるのだ。
ちなみに、イタコ先生の中にいるキツネは今の状態でもやろうと思えば1日は余裕で保つことができるので、それだけで本来が相当の強さを持っているということがうかがえた。
ついなの言葉にイタコ先生は不思議そうについなを見る。
「いなさんの場合は無理に時間を伸ばす必要はないんじゃないかしら?」
「どういうことや?」
イタコ先生の言葉についなは首をかしげる。
『無理に時間を伸ばす必要はない』
それはつまり力を強くする必要がないということ。
少しでも力を強くしてご主人である竜の助けになりたいついなはイタコ先生の言っている意味がよく分からなかった。
「いえ、公住くんから霊力をもらってそれを使って見えるようになれば良いのではないかと思いまして」
「なるほど、ご主人の力を借りるって訳やな」
イタコ先生の説明に納得がいき、ついなはうなずく。
竜から霊力を借りることができれば総合的についなの力は倍になるので、普通に力を強くするよりも簡単に短時間で強くなることができるのだ。
不意に、イタコ先生の頭の狐耳がピクピクと動き出す。
「っこーん!」
「ちゅわっ、また勝手に!」
「な、イタコの中のキツネか!」
鳴き声と共にイタコ先生の頭の上に白銀色の体毛のキツネが出現した。
イタコ先生はキツネが勝手に自身の中から出てきたことに少し声を荒げ、ついなは突然現れたキツネの姿に驚いて後ずさる。
そんな2人のことなど気にも止めずにキツネは竜に向かって飛びかかっていった。
「ん?おっと・・・・・・」
「こんっ!」
飛びかかってくるキツネの姿に気づいた竜は腕を広げてキツネを受け止める。
どうやらキツネは見えるようになっていないらしく、竜がいきなり腕を広げたことに茜たちは不思議そうに首をかしげていた。
「まったくもう、また公住くんのところに行って・・・・・・」
竜に飛びついたキツネを見ながらイタコ先生はガックリと肩を落とす。
イタコ先生からすれば、竜のところに行くのは別に構わないけれどもう少し落ち着いて行動してほしいと思っているのだが、まだまだキツネには難しいことのようだ。
「こん?」
「あ、またキツネさんが出てたんだね?」
「こんなに可愛いのに見えないっちゅうのも不便やなぁ」
竜から漏れている霊力を使って見えるようになったのか、茜たちも竜に飛びついているキツネの姿に気がついた。
キツネは茜たちの方をチラリと見、そしてすぐに竜の服の中へと潜り込んでいってしまう。
竜の服の中に潜り込んでいってしまったキツネの姿に茜たちは少しだけ残念そうに声をあげるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ