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授業も終わり、なにごともないまたいつもの帰り道────
「にひひひ、バッチリ特訓はしたんや。今日こそは負けへんで!」
「お姉ちゃん、前も同じようなこと言ってなかった?」
────とは違うようだ。
家への帰り道を歩く竜の隣に2人の女子生徒、茜と葵の姿がある。
どうやら竜の家でゲームをやる予定のようだ。
「くはははは!返り討ちにしてくれるわ!」
「なんやとー、このパチモン・ナンデスがー!」
「2人ともあまり大きな声を出したら近所迷惑だよ・・・・・・」
なんてことのない友人同士の会話をしながら3人は竜の家が見えるところにまで到着した。
「うん?」
「あ、あれって・・・・・・」
「・・・・・・せやな」
ふと、3人は竜の家の前になにかがいることに気づく。
それはまるで紫色をした“ゆっくり”のような見た目で、前足のようなものが2ヶ所から生えている生き物だった。
・・・・・・まぁ、要するに竜が昨日拾った生き物である。
「遊びに来たってとこか?」
生き物の姿を確認した竜は嬉しそうに生き物へと駆け寄っていく。
そんな竜のあとを茜と葵は追いかけていった。
「よ!遊びに来たのか?」
「みゅっ!」
生き物の目の前にしゃがみこんで竜が尋ねると、生き物は肯定するように前足を挙げて答えた。
生き物が答えてくれたのが嬉しかったのか、竜はわしゃわしゃと生き物の頭を撫でる。
竜に撫でられていることによって油断していた生き物は、背後から近づいてくる人影に気づかず、気がついたときには────
「謎の生き物、捕獲やぁああああ!!!!」
「みゅあぁあぁぁぁああああ?!?!?!」
────体を捕まえられてしまっていた。
いきなりのことに生き物は鳴き声をあげ、竜はポカンとしてしまっている。
「へっへっへ、もう逃げられへんでぇ?」
「みゅっ、みゅみゃみゅみゅっ?!?!」
「いやいやいやいや?!いきなりなにしてんの?!」
まるで三下の悪役のようなことを言いながら茜は自身の顔の前に生き物を持っていく。
茜の顔を確認したことによって自身が捕まったことを理解したのか、生き物は暴れて茜の手から逃れようとする。
そんな生き物の鳴き声に呆けていた状態から戻った竜は慌てて茜の手から生き物を取り返した。
生き物は助けて貰ったことに気がつくと、すぐに前足のような部分で竜の首もとへとしがみつき、威嚇するように茜を見る。
「みゅぅううう・・・・・・」
「すまんすまん。まさかとは思っとったんやけど、ほんまに“みゅかりさん”やったんやな」
「みゅかりさん?2人はこいつのことを知ってたのか?」
「うん。本当にみゅかりさんなのか自信がなかったから言わなかったんだ。ボクもお姉ちゃんもビックリしてるよ」
威嚇をする生き物────みゅかりさんに謝る茜の言葉に、竜は生き物の名前を2人が知っていたのだと気づく。
竜の言葉に葵は茜の行動に苦笑しながら答えた。
「みゅかりさんは基本的に人前に現れないし、見つけたとしてもすぐに逃げちゃうからね。だからそんな風になってる姿はボクは初めて見たかな」
「せやね。ゲームをやってるときにたまに現れるくらいやったかな」
「みゅ?」
2人の言葉に竜はみゅかりさんを見る。
竜の視線を感じ、みゅかりさんは不思議そうに竜のことを見つめ返した。
竜からしてみれば自分の家の前で倒れていた謎の生き物といった印象だったので、2人の言葉は少し意外だった。
「・・・・・・まぁ、可愛いからいいか。んじゃ、ゲームやるか」
「せやなー」
「そだねー」
「みゅみゅみゅー」
深く考える事柄でもないと判断し、竜は家の鍵を開けて全員を家の中へと迎え入れるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ