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“cafe MAKI”でのバイトも慣れたもので、なかなかに要領よく竜は店内を動き回っていた。
そんな竜の頭の上には小さくなったついなが乗っており、まるで巨大ロボットでも操作しているかのように竜の進む方向を指差している。
「ご主人、あっちのテーブルの人のコップが空や!」
「お、あっちか。ありがとうな」
竜が見ていない方向のお客さんの様子をついなが教えてくれるため、竜が店内を見渡す時間が短縮され、竜1人で作業するよりも効率は良くなっていた。
“cafe MAKI”でのバイトに慣れてきた竜と、竜の頭の上でお客さんの様子を教えてくれるついな。
この2つの要素が噛み合うことにより、現時点での竜が働く最高効率を出していた。
竜が、見えていないはずのお客の対応をしていることにマキは少しだけ驚きつつも、仕事の手を止めることなく動いていく。
そして、店の扉が開いて新しくお客さんが入ってきた。
「いらっしゃいませ・・・・・・っと、茜たちか」
「やぁやぁ、お邪魔しに来たでー」
扉の開いた音に気がついた竜は扉の方を向いて挨拶をする。
竜の言葉に茜は手をあげて応えた。
茜の後ろには葵、ゆかり、あかりの姿がある。
4人は制服姿ではなく普段着の姿をしており、学校で会っていたときとはまた違った雰囲気をしていた。
「邪魔するなら帰ってくれー」
「りょーかいやー・・・・・・、って、なんでやねん!」
「あはは・・・・・・」
「まぁ、いつものやつですね」
「小腹が空いたので早く席に行きましょう」
手をあげて応えた茜に竜は外を指さしながら軽口を言う。
竜の言葉に茜は扉へと体を向けて外に出ようとする。
そして扉に手をかけたところで勢いよく振り返って竜にツッコミをいれた。
茜のノリツッコミに葵は苦笑し、ゆかりはやや呆れた表情を浮かべ、あかりはマイペースに自分の欲を言っていた。
「んじゃ、席の方にご案内します」
「頼むでー」
「お願いするね」
「丁寧に見せかけてけっこう普通な感じで案内してますよね」
「私的には親しい特別感があるので、ヨシ!ですね」
竜と茜のいつものじゃれあいが終わり、言葉は丁寧なのだが態度的には普通な様子で竜は茜たちを席に案内しはじめた。
案内を始めた竜に茜はヒラヒラと手を振りながら答え、竜の案内のもと席についた。
「それじゃあ、注文が決まったら呼んでくれ」
「りょーかいや」
「今日は何を頼もうかなぁ」
「私はいつものやつにしておきましょうかね」
「私は────」
「全部やろ」
「全部だよね」
「全部でしょう」
そして、竜はメニュー表を差し出して他のテーブルの片付けなどに向かっていった。
竜からメニュー表を受け取った茜はパラパラとメニュー表を開いて何を頼もうか考えはじめる。
茜が開いたメニュー表を葵とゆかりも同じように眺め、何を頼もうか考えはじめた。
茜、葵、ゆかりが何を頼もうか考えはじめたのに続くようにあかりも何を頼もうかを言おうとしたのだが、3人にバッサリと遮られてしまった。
3人の言葉にあかりは反論しようと思うも、全部を頼もうとしていたのも事実なので反論をすることができなかった。
「あ、あかりはたぶん全部だろうから先に頼んでおくなー」
「竜先輩まで?!」
「まぁ、今までの来店するたびに頼んでるもんを考えたら当たり前やね」
「むしろそれ以外を考えられる人はいないんじゃないかな?」
「因果応報、はちょっと違いますかね?」
何を注文しようか考えている茜たちの席の近くを通りかかった竜が、あかりの注文はすでにしてあることを言って通りすぎていった。
茜たちだけでなく竜にまでそんな風に認識されていたことにあかりは驚きの声をあげるのだった。
誰のヤンデレが読みたいですか? その16
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佐藤ささら
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鈴木つづみ